「お酌」は、宴席の緊張感を解きほぐす、“おもてなし”の心です。

正式な「お酌」の作法で大切なのは、飲む相手との“壁”を取り除くこと。

多少の制限はあるものの、
2年ぶりに、穏やかに過ごせる日常が
戻り始めています。

とはいえ、まだ、
会社の飲み会や接待などは、
現在の社会事情への配慮から、
数名で集まるのを除いて、
もう少し先のことになりそうです。

さて、当たり前の日常が
戻ってきたときのために、
会社の飲み会や接待での
マナーのひとつである
「お酌」について、
ちゃんとした作法を
知っておきたいところです。

「お酌」は、
日本の伝統として受け継がれてきた
“おもてなし”の心を表す
作法のひとつで、
宴席を盛り上げるキッカケ
といっても過言ではありません。

というのも、
まったく知らない者同士が
席を並べたときに、
相手にどう会話を切り出していいか
迷う場面が必ずあります。

そんなときに、
“まっ、一杯どうぞ”と
「お酌」をしながら自己紹介、
返杯を受けながら会話が弾み始める
ということもよく耳にするお話です。

正式な「お酌」は一般的に、
年少者から年長者へ、
立場が下の者から上の者へ、
接待をする側から接待をされる側へ、
盃やコップにお酒を注ぐのが基本です。

「お酌」は
主賓や上席から順に注いで回りますが、
その方々の席の周りが
混み合っている場合は、
その時々の状況判断で。

ここで気をつけたいのは、
お銚子やビール瓶を持って
「お酌」をして回ること。

「お酌」をするときは
手ぶらで席まで出向き、
その席にあるお酒を注ぎます。

その際、
“日本酒でよろしいですか”と
ひと言付け加えると好感度もアップ。

菊正宗ブログ お酌女性

「お酌」を受ける側なら、
必ず口をつけることを忘れずに。

一度も口をつけずに、
そのままテーブルに置くのは
マナー違反です。

お酒の注ぎ方にもルールがあります。

日本酒を注ぐときは、
利き手で徳利の真ん中辺りを持ち、
反対の手を徳利の下に添えて、
お猪口の八分目辺りまで注ぐのが目安。

お銚子が熱くて持てないときは、
“失礼します”と声をかけて、
おしぼりを当てて
お銚子を持ちましょう。

ビールの場合は、
相手のグラスのビールが
少なくなった頃を見計らって、
“お注ぎしましょうか”と
ひと声をかけ、ラベルを上にして、
瓶の底に近いところを利き手に持ち、
反対の手を軽く下に添えます。

注ぎ始めは緩やかに瓶を傾けて
泡を立てないように注ぎ、
徐々に勢いよく入れて、
泡の量が3割程度に注ぐのが目安です。

「お酌」の際の、マナー違反。
気をつけたいものです。

さて、「お酌」の際のよく見かける
マナー違反が“逆手注ぎ”。

手のひらを上に向けて注ぐのは
失礼に当たります。

テーブルに置かれたままの
お猪口に注ぐ“置き注ぎ”も
感心できません。

相手がお猪口を手に持ったことを
確認してから注ぐようにしましょう。

宴席の酔いが高まってくると、
心も打ち解けて、
ついついやりがちなのが
“片手注ぎ”です。

こちらは打ち解けた証として、
宴もたけなわとなった頃なら
許されているようですが、
最初は作法通りの両手で注ぐことを
心がけたいものです。

ドラマなどで
酒を飲むシーンでよく見かけるのが、
お銚子に残ったお酒の量を確認する際の
上から覗き込む“のぞき徳利”や
お銚子を振る“振り徳利”、
残ったお酒を一つのお銚子にまとめる
“あわせて徳利”、
空になったお銚子を横に倒して転がす
“たおし徳利”など。

ドラマであれば
シーン演出のひとつですが、
どれも見ていて気持ちのいい所作では
ありません。

「お酌」を強要することは
パワハラに当たります。
しかし、「お酌」を通じて会話が弾み
生涯の友となることも
少なくありません。

お酒が心の壁を和らげ、
打ち解けて良い関係を築く
キッカケとなるのが、
他ならぬ「お酌」といえます。

菊正宗上撰本醸造とお刺身

「桜鯛」と「サクラダイ」。実は、別の魚です

「桜鯛」を楽しむなら、ぜひ挑戦したい“松皮造り”。

年に一度巡ってくる
春を告げる桜の季節は、
桜の蕾がほころぶ頃から散るまで、
わずか10日ほどですが、
名所でなくても、
桜並木の間を車で走り抜ける時など、
“春だな”と、
つい口を衝いて出るほど
王道の春の風物詩です。

最近、ソメイヨシノの色が
薄くなったのではという噂があります。

学術的な解明とまでは
いっていませんが、
どうやら昨今の気候不順も
少なからず関係しているようです。

花びらに含まれる
アントシアンという赤い色素は、
寒いと分解されずに
花びらの中にとどまるのですが、
暖かいと分解されて樹木に吸収。

また、寒い時に咲くほど
アントシアンが逃げないとのこと。

地球が少し暖かくなったなど、
気候が以前とは
異なっているようですが、
あの儚げな薄ピンクの花の色、
願わくば春の象徴として
今後も楽しみたいものです。

そんな春の象徴の桜を
名前に冠した「桜鯛」は、
桜が咲く3月から6月にかけて
水揚げされる“真鯛”の、
この時期だけの呼び名です。

これから初夏にかけて産卵期を迎え、
「桜鯛」は、オスメス共に、
色鮮やかな繁殖色になります。

とくにこの時期の「桜鯛」のオスは、
顔のピンク色がさらに鮮やかに発色し、
桜の花びらを散らしたような
白い斑点が現れます。

産卵に備えて身体に栄養を蓄え、
オスの白子やメスの卵巣も大きく育ち、
まさに“旬”ならではの
美味しさを堪能できるのが、
この時期。

スーパーの店頭にも
“旬”の食材として
当たり前のように並びます。

「桜鯛」を美味しく楽しむなら、
やはり“お刺身”が一番。

ポカポカと暖かくなり始めるこの季節、
合わせるのはキリッと冷えた
冷酒がオススメです。

天然の「桜鯛」が
一尾丸ごと手に入ったのなら、
ぜひ挑戦したいのが
“松皮造り(焼き霜造り)”。

鱗や内臓を丁寧に取り除いた後、
三枚におろすのは、
一般的な切り身と同じです。

刺身の場合は皮を剥がしますが、
“松皮造り”は脂ののった
皮目をいただくのがポイントなので、
皮の面を下に焼き網に乗せて、
全体に焼き色がつくまで
遠火で炙りましょう。

後は刺身のように切り分けて
美味しくいただくだけ。

焼いた皮の香ばしさと
身のプリプリ感に、
この上ない贅沢なひと時を
感じさせてくれます。

また、「桜鯛」は
白子や卵巣を持っていることが多く、
白子や卵巣があったら、
余分な部分を取り除いて
丁寧に水洗いし、
数分茹でて全体に熱処理をします。

その後は冷水で洗って、
ポン酢で食べたり、焼いたり、
甘辛く煮たり、
天ぷらなども美味しくいただけます。

必ず熱を加えて
寄生虫対策を取るのをお忘れなく。

「桜鯛」と「サクラダイ」に、「麦わら鯛」も加わって、どれを食べましょうか。

「桜鯛」は、「サクラダイ」と
カタカナ表記される場合も
ありますが、本来は
別の種類の魚の名前です。

「サクラダイ」は
ハタ科の15センチほどの小さな魚で、
産まれた時は全てがメス、
成長するとオスに性転換する
ミステリアスな魚。

その名の通り、鮮やかな赤い身体に
桜の花びらのような模様が
クッキリと現れるのが特徴です。

面白いのが、
「真鯛」と「サクラダイ」は
同じ水深を好み、食性も近いため、
釣りの際に一緒に釣れること。

春の釣りで、
「桜鯛」は釣果を競われ、
「サクラダイ」は外道魚
(狙っている魚ではなく、
釣れてしまう魚)
という悲しい扱いに。

一部に、“繁殖期の「桜鯛」は
全エネルギーを産卵に使うので、
栄養がそちらに取られ
肉は痩せ細る”という「桜鯛」に
厳しいコメントがある一方、
“「サクラダイ」は、白身魚で
皮目に脂がのって煮付けが美味しい”
というグルメコメントもあります。

産卵期を迎える多くの魚が
“旬”とされるという意味では
筋違いで、「サクラダイ」は
美味しく食べられる魚ということの
紹介と捉えたいところです。

残念ながら「サクラダイ」は
あまり店頭で見かけることはなく、
ほとんどか釣りの時に出会う魚で、
釣れたら逃す魚。

持ち帰って煮付けに挑戦する
価値はありそうです。

サクラダイ

産卵を終えた「桜鯛」は、
途端に色の鮮やかさを失い、
全体的に地味な茶色系に
落ち着きます。

これを「麦わら鯛」や
「落ち鯛」と呼び、
産卵後の味落ちは否めません。

しかし、お手頃価格で買えるので、
意外と重宝するのが「麦わら鯛」。

風味そのものは、
「桜鯛」と比べると、
やや劣りますが、
塩焼きにすれば身が締まり、
煮付けにしても身が柔らかく
味の染みも文句なしの美味しさを
味わえるはずです。

贅沢に“旬”をいただく「桜鯛」。

霜降りの牛ステーキと比較すれば、
意外と手頃なのかも知れません。

季節を愛でる気持ちで、
冷酒と一緒に「桜鯛」、
さあ、いただきましょう。

菊正宗「盃展示館」が4月6日オープン。充実した約30分の見学ツアー。

菊正宗の文化資料施設の第3弾「盃展示館」。お客様の人気も好調です。

菊正宗「盃展示館」が
4月6日にオープンしました。

菊正宗のこうした
文化施設の取り組みは、
今から約60年前の
1960年(昭和35年)に、
御影の本嘉納家本宅屋敷内に
建てられた酒蔵を現在の地に移築した
「旧酒造記念館」に遡ります。

館内には、
国指定・重要有形民俗文化財の
“灘”の酒造用具や
所蔵する小道具類を展示し、
酒造りの長い歴史を伝える
酒造資料館として、
年間5万人もの来館者を
誇っていました。

しかし、1995年(平成7年)の
阪神・淡路大震災で倒壊。

そこに収蔵されていた
酒造用具や小道具類を、
崩れ落ちた瓦礫の中から
手作業で掘り起こして
ひとつずつ確認したところ、
ほとんどが無事。

一部、被害はあったものの
修復可能な状態で、
4年後の1999年(平成11年)には、
現在の「菊正宗酒造記念館」が
復興オープンしました。

昔ながらの酒蔵をイメージさせる
本瓦葺きの屋根、
焼杉板張りを使った外壁や辻塀、
そして何より「旧酒造記念館」
に使われていた樹齢400年以上の
歴史を刻んできた柱や梁が、
さまざまな箇所に利用されている様は
「旧酒造記念館」の意思を
受け継いでいるかのようです。

菊正宗 TARUSAKE MEISTER FACTORY

「菊正宗酒造記念館」に続き、
道を挟んで近接する嘉宝蔵敷地内の
奥まったところに位置する
「樽酒マイスターファクトリー」が
オープンしたのは2017年(平成29年)

“瓶詰樽酒(通称、樽びん)”を
発売して50周年となった記念として
設立したものです。

ここでは、成り手が少なくなった
樽職人を自社内で育成することで、
その伝統技術を継承するとともに、
樽酒を仕込むための樽づくり
ということも兼ねています。

樽づくりの材料となる
吉野杉の展示説明と
実際に樽づくりの現場を見る
体験ツアーも好評です。

微妙に長さや厚さが異なる杉材を、
釘1本使わずに、
専用の道具を巧みに使いながら
樽状に組み合わせる作業は圧巻で、
その技術の細かい精巧さ、
手際の良さに感動すら覚えます。

「菊正宗酒造記念館」で酒造りの伝統
「樽酒マイスターファクトリー」では
酒を貯蔵する“器”づくりの匠の技、
そして、3つ目の「盃展示館」では、
酒を“飲む道具”である
盃や猪口を紹介することで
酒の嗜み方の歴史を紹介しています。

約30分の見学ツアーの内容は濃いめ。見学後の試飲タイムは嬉しいところです。

「盃展示館」があるのは、
嘉宝蔵敷地内の仕込み蔵の一画です。

歴代の社員が集めた
盃コレクションを始め、
蒐集家からの寄贈、
監修をされた市之倉さかづき美術館の
七代目加藤幸兵衛氏からの寄託による
約1600点の収蔵品の中から
カテゴリーごとに、特徴のある
盃や猪口徳利など約400点が
酒造りの歴史を綴ったパネルと一緒に
展示されています。

多くの企業博物館での
館内展示物を自由に見て回るという
スタイルが多い中、「盃展示館」は
1日3回、約30分の無料見学会を実施。

「菊正宗酒造記念館」
スタッフの引率により、
お話を聞きながらの見学会です。

といっても、
堅苦しい説明というよりは、
酒文化にまつわる面白い話で
惹きつけられるので、
あっという間に過ぎる30分。

お酒にまつわる
いくつものうんちくが散りばめられ、
どこかで誰かに話したいものも
たくさんあります。

kikumasamune kinennkann

見学会が終わったら、
「菊正宗酒造記念館」に戻って、
寸胴の“蛇の目猪口”と広口の“盃”
に同じお酒を入れての飲みくらべ
というご褒美もついてくるので、
車での来館は避けたいところ。

飲みくらべて分かるのは、
同じお酒なのかと思うほど、
香りの立ち方や味わいが違うこと。

見聞きした情報を、
実体験で認識する面白い試みです。

さて、「盃展示館」見学会への参加は
見学予定日の2日前までに、
菊正宗HPの予約サイトでの
予約が必要です
https://www4.revn.jp/kikumasamune_reserve/

時間が許すのなら、
「樽酒マイスターファクトリー」の
見学会を同時に予約して、
「樽酒マイスターファクトリー」
「盃展示館」の順に、
続けて回るのがオススメ。

ちなみに休館日は年末年始のみです。

  • 「樽酒マイスターファクトリー」
    見学会(所要時間/30分)
    第1回目/10時30分〜、
    第2回目/14時00分〜、
    第3回目/15時00分〜
  • 「盃展示館」
    見学会(所要時間/30分)
    第1回目/11時10分〜、
    第2回目/14時40分〜、
    第3回目/15時40分〜

注意したいのは1回の定員が
20名までの人数制限があること。

20名を超える団体の場合は
「菊正宗酒造記念館」に直接、
電話での申し込みとなっています
(予約専用電話/078-277-3493/受付時間午前9:30〜午後4:30)

予約サイトで予約ができない場合も、
この予約専用電話で
お問い合わせの必要があります。

「盃展示館」は、
まだオープンしたばかり。

今後、さまざまな取り組みにも
期待が寄せられます。

まずは、ぜひ一度、「盃展示館」の
見学ツアーにご参加ください。

下処理がキモの「タケノコ」。食べれば分かる、“旬”ならではの美味しさ

春の「タケノコ」はひと味違う。独特な香りと歯ごたえに“旬”を感じて。

下処理がキモの「タケノコ」。

食べれば分かる、
“旬”ならではの美味しさ。

「タケノコ」の美味しい季節となりました。
「タケノコ」は常備野菜のひとつとして
水煮の真空パックや缶詰などで
1年を通して食べることができますが
独特の香りとほのかな甘み、
歯ごたえのある食感を楽しむのなら
これからが“旬”の生の「タケノコ」に
勝るものはありません。

一般的にスーパーや八百屋店頭に並ぶ品種は
孟宗竹の「タケノコ」で、
2月下旬頃に九州での収穫から始まり、
サクラのように“タケノコ前線”が
東北エリアまで北上。

5月頃まで「タケノコ」の“旬”が続きます。

美味しい「タケノコ」を選ぶ際の注意点は、
いくつかあります。

まず、穂先が黄色っぽいものを選ぶこと。

穂先が土から出ていると
光合成によって緑色に変色し、
「タケノコ」特有のエグ味が増します。

黄色い穂先は、土から出ていない印です。

同じように、表皮が黒かったり、
緑色がかったりしたものも
日に晒された時間が長いため、
エグ味が強くなります。

そして、根元の切り口は白っぽく
瑞々しいものを選びましょう。

収穫してから時間が経過したものは
水気が抜け、アクにより茶色に変色します。

「タケノコ」は、“湯を沸かしてから掘れ”
といわれるほど、鮮度が重要視されます。

だからこそ、お店で買った後は、
なるべく早く下処理を済ますことが大切です。

「タケノコ」の表面についた土を流水で洗い流し、
外皮を2枚ほど剥がした後、
アクの多い穂先を数センチ切り落とします。

「タケノコ」がヒタヒタになるくらい
水を張った鍋に、「タケノコ」の重さの
1割くらいの量の米ぬかを入れ、
落し蓋をして、中火で約30分茹でます。

米ぬかがない場合は、
お米の最初のとぎ汁で代用してもOK。
竹串がスッと刺さるくらいになったら
茹で上がり。

そのまま常温で5時間ほど冷まします。

その後、米ぬかを洗い流して
残った表皮を剥けば、下処理完了です。

下処理の終わった「タケノコ」は、
タッパに水を張って、蓋をして浸けておきます。

水は毎日取り替え、保存期間は約1週間。

水に浸けたら、「タケノコ」の
風味が水に溶け出すため、
できるだけ早くお召し上がりください。

 

「タケノコ」を掘る機会があれば、是非試したい「タケノコのお刺身」。

もし、この“旬”の時期に、
「タケノコ」を掘る機会があるようなら、
是非お試しいただきたいのが、
「タケノコのお刺身」です。

掘ったばかりの「タケノコ」を
さっとゆがいて薄く切り、ワサビ醤油で。

小振りの「タケノコ」は、
アルミホイルで包んで、
焚き火でそのまま焼きます。

こちらはダシ醤油でいただくと、
新鮮な風味を楽しめます。

ここで注意したいのは、
「タケノコのお刺身」を大量に食べないこと。

生の「タケノコ」には、シュウ酸、
タキシフィリンが含まれています。

シュウ酸はアクの成分のひとつで、
摂取しすぎると尿路結石を
引き起す恐れがあります。

また、タキシフィリンは分解されると
シアン化水素という有害物質になるため、
中毒症状を起こす原因となります。

アク抜きによりシュウ酸の量が減り、
調理時の加熱によりタキシフィリンを減らすので、
調理した「タケノコ」については、
より安全に味わえるということになります。

さて、お店で買って下処理を済ませた
「タケノコ」の料理として、
まず思い浮かぶのは、“タケノコご飯”でしょうか。

油揚げを入れて、酒と醤油、みりん、和風ダシを
入れた炊き込みご飯は、
“旬”を味わうにはうってつけ。

また、“タケノコと油揚げのうま煮”も
オススメです。

他の煮物をつくる要領で、
こちらにも「タケノコ」と
相性の良い油揚げを入れて煮込みます。

鰹節を入れるとより風味が増し、
深い味わいとコクが楽しめる料理です。

火を止めて1回冷ますことで味を
「タケノコ」に浸透させることが
美味しさの秘訣といえます。

シャキシャキ感のある歯ざわりと一緒に、
「タケノコ」の独特な風味が味わえるのは、
“旬”のこの時期だけ。

「タケノコ」料理と旨い冷酒で、
春の陽気をお楽しみください。

春が“旬”の「鰆(サワラ)」。さっぱりとした淡白な味わいが魅力です。

「鰆(サワラ)」の“旬”に敏感なのは、釣り人たち。

テレビのクイズ番組や
漢字検定の影響もあって、
ここ数年続いている
難読漢字への興味は、
まだまだ続きそうな気配です。

難読漢字といえば、
“魚へん”の漢字が書かれた湯飲みを
寿司屋や自宅の食器棚、
田舎のおばあちゃんの家…
どこかで見たような
昔の記憶が蘇ります。

「鯛(タイ)」
「鮭(サケ)」
「鰻(ウナギ)」
「鰯(イワシ)」など、
よく目にする漢字なら
即答できるものの、
「魳(カマス)」
「鰈(カレイ)」
「鰒(フグ)」などは、
途端に記憶が怪しくなります。

魚につきものの“旬”を意識して、
“魚へん”に春夏秋冬の
それぞれの漢字を当てた時の読みは、
意外と難読です。

「鰆」はサワラ、
「鰍」はカジカ、
「鮗」はコノシロ。

残念ながら、“魚へん”に
夏を組み合わせた漢字はなく、
「魚夏」という熟語でワカシと呼び、
出世魚ブリの40センチ以下のサイズの
呼び名です。

これは関東圏だけの呼び名らしく、
それ以外で地域では
“魬(ハマチ)”のことを指します。

“魚へん”に四季が
組み合わせられているということは、
当然、その魚の旬は当てはめられた
季節と予測できますが、
スーパーの店頭で、賑やかに季節を
告げるほどのメジャーな魚
という訳でもないようです。

さて、今回はこの中から、
ちょうど今の時期、
春が旬の「鰆(サワラ)」を
取り上げます。

「鰆(サワラ)」はサバ科の回遊魚で
北海道南部から沖縄にかけての
広い範囲で、
“旬”の時期以外でも
水揚げされているようです。

とくに最近は温暖化の影響による
海水温の上昇に伴って、
日本海側で多く水揚げされており、
2019年(平成31年/令和元年)の
漁獲量1位は福井県で、
京都府、石川県、福岡県、長崎県と
続きます。

「鰆(サワラ)」が
スーパーなどの店頭に並ぶのは、
もっぱら切り身。

というのも、
体長約60センチ以上が
「鰆(サワラ)」の標準サイズで、
大きいものでは
1メートルを超えるものもいるため、
捕獲されたままの姿で
店頭に並ぶ機会は稀のようです。

ちなみに、60センチ以下のものは
“サゴシ”と呼ばれる出世魚。

そんな「鰆(サワラ)」に
一喜一憂するのは全国の釣り人たち。

「鰆(サワラ)」の
釣りシーズンともなると
餌となるカタクチイワシの
群れを追って、
日本の沿岸近くまで回遊してくる魚を
狙います。

突堤や防波堤から釣れるのは
60センチ未満の
「鰆(サワラ)」に成長する前の
“サゴシ”サイズが多く、
「鰆(サワラ)」を釣るのなら、
船からのルアー釣りが基本のようです。

肉食大型魚で性格は獰猛そのもので、
ルアーにかかってからの
魚の引きの強さは
釣り人たちにとって醍醐味のようで、
シーズンともなると、
より大きな「鰆(サワラ)」を狙って
数多くの釣り人たちは
海のスポットへと向かいます。

釣り上げた「鰆(サワラ)」の
歯は鋭く、
その名前の由来となった
“狭腹(さはら)”にもあるように、
細く平たい体型が特徴的な魚です。

 

「鰆(サワラ)」の“旬”は、年2回。味わいも異なります。

いきなり前言撤回となりますが、
実際に「鰆(サワラ)」の“旬”は、
春と秋の年2回。

まずは、春の“旬”。

関西を中心とした海域では、
5月〜6月頃、
産卵を控えた「鰆(サワラ)」が
瀬戸内海へと回遊して来ます。

この時期の「鰆(サワラ)」は、
さっぱりとした味わいで淡白、
身は柔らかく、
煮付けよりは味噌を使った西京焼きや
竜田揚げで食べられています。

関西では、
真子(卵巣)や白子(精巣)も、
一緒に食べられるのも特徴です。

そして、11月〜翌年2月の
秋冬の“旬”は関東の海域。

この時期に
産卵を控えた「鰆(サワラ)」は、
雑食気味でイワシやサンマを食べて、
産卵のための栄養を蓄えます。

そのため脂がのった
濃厚なこってりとした味わいが
“寒鰆(カンサワラ)”の特徴です。

これは、
太平洋から瀬戸内にかけて
回遊するものと
東シナ海から日本海を回遊するものの
生息域が異なるため。

同じ種類の
「鰆(サワラ)」なのですが、
関東圏以外は春、
関東圏は秋から冬が“旬”
とされています。

また、「鰆(サワラ)」の身は白く、
白身魚のようですが、
成分的には赤身魚に分類されています。

「鰆(サワラ)」は、日常的に
食卓に上がる魚ではありませんが、
この時期の店頭には必ず並ぶ
季節を告げる魚のひとつです。

まずは春が“旬”のさっぱりとした
味わいを楽しんでみましょう。

そして、その味わいを
記憶の端にとどめておいて、
秋から冬に出回る濃厚な味の
“寒鰆(カンサワラ)”を食べて、
その違いを試してみませんか。

春の「鰆(サワラ)」には、
すっきりとした冷酒、
秋冬の“寒鰆(カンサワラ)”には
燗酒がおすすめです。