のし紙/その一 のし紙には、心尽くしの礼儀を込めて。

そもそも、「のし紙」って、何。

梅雨が明けるのを待つかのように、
今年もお中元時期の到来です。

お中元などの贈答品を贈る際に、
のし紙をつけますが、
そもそも、のし紙って、
なぜつけるのかをご存知でしょうか?

贈る方の名前を先様に伝える役割がある薄い紙一枚ですが、こののし紙については、結構厚みのある理由や礼儀が秘められています。
のし紙は贈答品などの進物につける紙で、「熨斗(のし)」と「水引」が印刷されています。

古来よりの日本のしきたりとして、贈る品には表書きを書き入れた「奉書紙」をかけ、「水引」でくくり、奉書紙の右肩に「熨斗(のし)」を添えて贈っていました。

いまはこの慣習が簡略化され、すべて印刷されたのし紙が使われるようになりました。

ここでひとつ。
慶弔時に使われるのし紙の正しい名称は「掛け紙」。
慶事には“おめでたい”という意味があるのし紙が正しい呼び方で良いのですが、弔事やお見舞いの場合は、“二度と繰り返さない”という意味で、めでたさを表す熨斗(のし)はつけません。
のし紙の正式名称は「掛け紙」です。

ただし、慶弔時の両方で、通名ののし紙という単語が日常的に使われているのも事実。

逆に、若い店員さんなどの場合、掛け紙は通じないかもしれません。

ここは、知識として知っておくにとどめ、“お供え用ののし紙をつけて”という風に、柔軟に使ってください。

 

のしは内、のしは外?

近頃は、受け取った相手様に負担をかけたくないという配慮からのし紙をかけないという方も増えているようです。
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、堅苦しい形式的なものではなく、先人たちの心尽くしの礼儀として、伝えていきたい大切な“おもてなし文化”といえるでしょう。

とくに目上の方やご年配の方への進物には礼儀を尽くした配慮が大切です。

さて、進物を贈る際に、「内のし」「外のし」で迷うことはありませんか?

内のしは、品物に直接、のし紙をかけて、それを包装紙で包むことをいいます。
それに対して外のしは、品物を包装紙で包んでからのし紙をかけることです。

かつて贈り物は直接、水引をかけて風呂敷に包んで持参するのが習わしでした。
いまのように宅配便などの配達システムが発達するより、ずっと前のお話です。
時代の流れに沿って、風呂敷にかわって包装紙が使われるようになっていきました。

現在、一般的には内のしがよく利用されています。それはのし紙が汚れてしまうのを防ぐ意味があるようです。

外のしは、持参して手渡す場合や、贈り物がたくさん先様に届きすぐに開けられないような状況を想定できる時に利用しましょう。

梅雨と梅の実、ときどき梅酒。

 

梅雨って、なぜ「梅の雨」。

シトシトと雨がそぼ降る梅雨の季節となりました。この季節に雨が降ることにより、梅の実が大きく膨らむ、梅にとってはまさに恵みの雨といえます。

それでは、この梅雨という単語に、なぜ「梅」が使われているがご存知ですか?

その語源には諸説あります。
『梅の実が熟す頃に降る雨という意味で「梅雨(ばいう)」と呼んだ説』『黴(カビ)が生えやすい時期の雨という意味で、「黴雨(ばいう)」と呼んでいたものが転じて、同じ読みで季節に合った「梅」の字を使った説』などが有力な語源の由来です。

この中国で使われていた言葉が江戸時代に日本へと伝播。日本ではそれまで、「五月雨(さみだれ)」という言葉が使われていました。

ちなみに、「五月雨(さみだれ)」の
“さ”は陰暦の5月(現6月)、
“みだれ”は「水垂れ」を意味しています。

 

和歌山県は、梅王国。

梅雨の時期は、梅酒の原料となる青梅の収穫がピークを迎える時期です。

なかでも、和歌山県は、言わずと知れた梅の一大生産地。ここで収穫された梅は「紀州梅」と呼ばれ、その生産量は全国シェア約65%の第1位を誇ります。生産量第2位の群馬県が約5%、第3位の奈良県が約2%と、和歌山県の桁外れな生産量には驚かされるばかりです。

 

全国に名を馳せる紀州梅の代表格といわれる「南高梅」と「古城梅(ごじろうめ)」。紀州ブランドを品質で支える双璧といっても過言ではありません。

収穫が比較的安定している南高梅は、一般的に梅干しづくりに使われることが多い品種。
一方、古城梅は実が硬く引き締まっているため、梅酒づくりに適した品種とされています。
古城梅の収穫量は、南高梅の約6分の1。“青いダイヤ”とも呼ばれる希少種です。
古城梅の硬い実は、漬け込んだときに実が崩れにくく、梅のエキスがたっぷりと抽出されるという特徴があり、これが梅酒に向いているといわれる由縁です。
また甘さ控えめで、ほどよい酸味があり、コクの深い梅酒になるので、根強いファンが多いといわれています。

梅雨の雲間から時折のぞく陽光を見上げながら、梅酒で涼しいひとときを。
間近に迫る夏の暑さまでの、ちょっとした贅沢なのかもしれません。