日本酒の「ヴィンテージ」は 、ワインの「ヴィンテージ」とは別物。

ワインの「ヴィンテージ」は、ブドウの出来不出来の評価が基準。

日本酒とよく比較されるのが、
同じ醸造酒であるワインです。

ワインといえば、
「ヴィンテージ」ものが
数十万円を超えるような高値で
取引されている印象があります。

一般的に「ヴィンテージ」というと、
クラシックカーやジーンズ、
ブリキのおもちゃなど、古い年代物、
年期の入った掘り出し物
という印象が強いのですが、
ことワインに関しては、
原料となるブドウを
収穫した年を指しています。

つまり、
収穫された年の気候の影響を受けた
ブドウの出来不出来が
ワインの味に大きな影響を与える
という考え方です。

“○○年のボルドーが素晴らしかった”
など、長期熟成できる秀逸な
ブドウの収穫年であったことを
如実に表わしています。

こうした「ヴィンテージ」の
評価の目安となるのが、
“ヴィンテージチャート”です。

本場フランスをはじめとする
欧州エリアを中心に、北米や南米、
オーストラリア、アフリカなどの
名だたるワイン名産地区のメーカーが
発行しているもので、
これだけをみると、丁寧な仕込みは
必要であると理解した上で、
仕込んでしまえば、
後は熟成のタイミングを待つのみ
と考えてしまいがちです。

とはいえ、ボルドーではシャトー、
ブルゴーニュではドメーヌ
と呼ばれる生産者は、
これまでの実績等で
厳格に格付けされており、
決して品質維持を怠っている
訳ではありません。

また、ボルドーには複数の品種による
ワインの原酒をブレンドして、
それぞれの良いところを引き出して、
思い描く理想的なワインを組み立てる
という伝統的な技法があります。

このブレンド工程を
“アッサンブラージュ”と呼び、
ブレンドすることで、
毎年異なるブドウ品質を
整える意味合いもあるようです。

 

ブルゴーニュ地方のぶどう畑

 

それに反して、
ブルゴーニュのワインは
ブレンドをせず、
ひとつのブドウ品種による
単一ワインが特徴。

どちらにも
メリットデメリットがあり、
それぞれの生産者は
信念を持ってワイン造りを
行なっていると考えるべきでしょう。

同じ銘柄のワインであっても、
この「ヴィンテージ」により
価格は大きく変わります。

また、
同じ「ヴィンテージ」であっても、
仕込んだ樽によって微妙に異なる
品質や保管環境によっても大きく変化、
ボトルに封入された後も
熟成が進んでいるため、
ボトルごとでも味わいが異なると
いわれています。

ワインとは、
そのさまざまな変化を楽しむ飲み物
なのかも知れません。

 

日本酒の、“いつもと変わらない味”を表現する技術。

日本酒の原料となる
酒米(酒造好適米)の場合はというと、
当然、ブドウと同じ農作物なので、
毎年作柄が異なるのは当たり前のこと。

この両者で大きく異なるのは
果実と穀物という点です。

ブドウの場合は天候や日照時間、
降水量の影響を受けて、
糖度や酸味が大きく変わります。

一方、酒米は、豊作か凶作か
ということはありますが、
味覚や香りに関する良し悪しの影響を
あまり受けません。

これは、
酒米の作柄に左右されることを
醸造技術が補っているからです。

酒米は、その魅力を最大限に
引き出してくれる
水との出会いによって、
旨い酒へと変わっていきます。

日本酒はその年に獲れた新米で、
“いつもと同じ味わいの酒を造る”
ということが基本です。

酒米についても、
ある程度の天候の変化を想定した
品種改良が重ねられた結果、
山田錦という栽培と醸造の両方に
おける最高峰を生み出しています。

つまり、ワインと同じ、
栽培に好適な地形、気候、
日照時間などの
“テロワール(地勢的優位地)”
において生産される
山田錦の魅力を最大限に引き出すのが
日本酒の醸造技術といえるでしょう。

ワイン醸造家が
日本酒の複雑な醸造工程に
舌を巻いたのは有名なお話。

ブドウにはもともと
糖分が含まれているため、
酵母を加えればそのまま醗酵が進む
“単醗酵”。

しかし、酒米には
糖分が含まれていないため、
麹菌によって米に含まれている
デンプンを糖分に変化させ、
その糖分を酵母により
アルコール醗酵させる工程を
同時に行う“並行複醗酵”という
複雑な醗酵工程が
ワイン醸造家を驚かせているようです。

日本酒の「ヴィンテージ」というと、
一般的な認識と同じように
長年熟成させた古酒を指します。

このためには、最初から
「ヴィンテージ」を意識した
低温熟成による管理が必要です。

菊正宗でも2001年に醸したお酒を
冷却貯蔵により約20年熟成を重ねた
「オデュッセイア」を
限定発売致しました。

ワインも日本酒も、
長い歴史に培われた技術があり、
簡単に語り尽せるような
代物ではありません。

ただ、そうした知識を持って
グラスや盃を傾ければ、
より一層旨く感じる、
酒の肴なのかも知れません。

“ひな祭り”の食卓。
ハマグリをお吸い物にする理由。

“桃の節句”、“ひな祭り”、ともに「上巳の節句」の別称。
ご存知でしたか?

3月3日は、
いわずと知れた女の子の節句。

正式には「上巳(じょうし)の節句」
という五節句のひとつです。

他の節句と同様に、植物の名を冠した
和名が“桃の節句”で、
その行事として行われるのが
“ひな祭り”です。

今では、「上巳の節句」と
呼ばれることはあまりなく、
テレビなどでも、季節の風物詩として
“桃の節句”や“ひな祭り”と
ニュース紹介されることが
ほとんどといっていいでしょう。

また、この節句という単語は、
本来“節供”と書き、
季節の節目に、神様への供え物を
したことを表した言葉。

正月に食べる料理を、
お節料理と呼ぶのも、
節句料理からきた名称です。

「上巳の節句」に限らず、
日本の行事の多くは、古代中国で
確立した“陰陽五行思想
(いんようごぎょうしそう)”が
日本に伝わったもの。

そして、農業大国日本の生活様式に
寄り添うように独自の
進化を遂げて行きました。

農業の行事はもちろん、
宮中行事や神道の祭祀など、
伝わった大陸との気候の違い、
季節の感覚、日本のしきたりなどに
順応した暦ということです。

日本の暦の大きな分岐となったのは、
1872年(明治5年)12月2日の翌日が、
1873年(明治6年)1月1日となった、
旧暦から新暦への切り替わりです。

その際、多くの歳時や年中行事は、
もとの季節感に沿うように、ひと月
遅らせてその行事を行う“月遅れ”を
採用しました。

しかし、節句には、
奇数が重なる月と日はおめでたい
という考え方があり、
日付そのものに
意義があるということで、
新暦となった現在も、
旧暦の日付によって
節句行事が行われています。

日本での「上巳の節句」の始まりは、
平安時代に、京都の貴族子女が、
天皇の住まいである御所を模した
御殿に飾り付けをして
健康と厄除を願って遊んだことで、
それがやがて行事として広まり、
宮廷で節会(せちえ)という宴が
催されていた記録を当時の文献に
見つけることができます。

それから時代は移り、
武家社会へと広がり、
江戸時代になって以降、
庶民の人形遊びと節句が
結びつくことによって、
現在の行事の原型が
形つくられて行きました。

“ひな祭り”行事の中心は、やはり、
ひな人形の段飾り。

そこにひなあられや菱餅を供え、
白酒やちらし寿司、ハマグリの
お吸い物を節句料理として食べて
祝うのが、一般的な
“ひな祭り”の祝い方です。

また、“ひな飾りは3月3日を過ぎると
すぐに片付けないと婚期が遅れる”と
耳にすることがありますが、
これは根拠のない都市伝説。

片付けの目安として二十四節気の啓蟄
(3月6日前後)あたりというのが
慣習として伝わっていますが、
これも行動目標に過ぎません。

とくに日にちを気にすることなく、
人形にカビがこないように、湿気の
ない晴れた日に、防虫剤を入れて
片付けるのがベストのようです。

 

ハマグリは、なぜ味噌汁仕立てではないのか。

さて、“ひな祭り”の料理のひとつに
上げられる「ハマグリのお吸い物」。

ハマグリを具材に使ったのには、
ちゃんとした理由があります。

ハマグリの貝殻は、
上下で対となる貝殻以外、
同じハマグリであっても他の貝と
ぴったり合うことはありません。

このため、生涯ひとりの人と
添い遂げるという願いが込められる
など夫婦円満の象徴とされたことから、
当時、ハマグリを縁起物の良い
食材として重宝していました。

そのひとつが
「ハマグリのお吸い物」なのです。

ここで、アサリやシジミは
味噌汁なのに、ハマグリは
お吸い物仕立てなのかという疑問が
改めて湧きます。

これは、ハマグリの味が繊細で、
味噌の濃い味にハマグリの味が
負けてしまうということから、
あまり味噌仕立てにはしないという、
料理へのこだわりのようです。

日本の汁料理は
大きく2つに分類されます。

会席料理の先付の次に酒の肴として
出されるのが“お吸い物”で、
昆布や鰹節の出汁に塩や醤油、味噌で
味をつけ具材に魚や野菜、鶏肉を
入れたものです。

粕汁やみぞれ汁、海老しんじょなども
この分類に当てはまります。

もうひとつが、
料理の最後、甘味ものの前に、
ご飯と一緒に出される汁物で、
味噌を入れるのが“味噌汁”、
醤油で味をつけたものが“すまし汁”、
塩味の味つけが“潮汁”です。

なので「ハマグリのお吸い物」は、
実際にはハマグリの潮汁です。

しかし、ここは伝統的に伝わる
料理名称として
「ハマグリのお吸い物」と
呼ぶこととしましょう
砂抜きをして水洗いの下処理をした
ハマグリを出汁昆布、酒少々と一緒に
水に入れ、弱火よりやや強く
時間をかけて煮ます。

沸騰したら昆布を取り出し、
貝の口が開いたら出来上がり。

味を整えるのは塩加減だけ。

ポイントは水から煮出して
ハマグリのエキスをより多く
取り入れることと
灰汁を取り除くことで
雑味を取ること。

木の芽を手の平で叩いて
汁に浮かべるのも、
アクセントとなる香りづけに
おすすめです。

意外と簡単な「ハマグリのお吸い物」
レシピなので、
今年の“ひな祭り”には、
ぜひ挑戦してみてください。

“灘の酒”の旨さは 、“六甲おろし”を利用した「寒造り」の賜物。

菊正宗 生もと 蒸米

一年を通した“四季醸造”から、冬場限定醸造の“寒酒”へ。

旨い日本酒造りの
大切な要素のひとつに
「寒造り」があります。

江戸時代初期頃まで、
日本酒造りは、
真夏の暑い盛りを除く一年を通じた
“四季醸造”が一般的でした。

現在の9月頃(旧暦8月)に
前年収穫の古米で醸す“新酒”、
9月下旬頃の残暑が残る初秋には
“間酒(あいしゅ)”、
寒くなりかけた晩秋には
“寒前酒(かんまえさけ)”、
冬場に造る“寒酒(かんしゅ)”、
そして春先の“春酒(はるざけ)”と
夏場以外はそれぞれの季節に応じた
酒が造られていました。

ところが、幕府は、
飢饉や政争など、
その時々の社会情勢に応じて
“寒酒”以外の酒造りの
“規制”“解禁”を
繰り返していたため、
蔵元は、
生産許可が不安定な酒類の醸造を
避けるようになったといいます。

また、“寒酒”の酒質は
他の酒類とは比較にならないほど
上質なものに仕上がることも、
“寒酒”造りに専念する要因と
なったようです。

つまり、“寒酒”だけが
唯一規制対象外であったのも、
もともとの酒質が秀でたからに
他なりません。

江戸時代の酒造りを
頭に思い描いてみてください。

繊細な醗酵工程を
的確に行うために大切な、
正確に時間を刻む“時計”、
正確な温度を測る“温度計”など
ない時代。

そんな中で、刻々と変化していく
それぞれの醗酵状態を把握するために
肌感覚で温度を読み、
目や耳で醗酵状態を知り、
香りを嗅ぎ分け、
舌で味を確認する…
経験によって培った五感を頼りに、
蔵人たちはその技術を確立し、
後世へと受け継いでいったものが、
現在の「寒造り」への礎となったと
いわれています。

また、
“寒酒”が定着したことによって、
農家の冬場の閑散期に出稼ぎにくる
“杜氏”という酒造りのプロ集団が
生まれたことも、
優れた日本酒造りを支えることに
なりました。

“寒酒”造りが、
“四季醸造”の中で、
もっとも過酷な極寒環境での作業を
強いられたことは、
暗に想像がつきます。

休憩場で火を焚いて
暖を取っていたとは思いますが、
作業現場への安易な火の持ち込みは
厳禁。

冬場の凍てつくような空気や水は
澄みわたって雑菌が少なく、
寒さによる蒸し米を短時間で冷まし、
醗酵段階の一定時間の低温状態の
維持が容易という
酒造りにもっとも適した季節で、
醸されたお酒は、
香りが高く、
深いコクがあり、
長く貯蔵できるという
多くの利点がありました。

もし、
過酷な極寒の作業環境に心が折れ、
そこそこの日本酒の出来栄えに
納得していたら、
現在の酒文化は
なかったかも知れません。

 

「寒造り」を極めた旨さが、江戸庶民に受けた“下り酒”の真骨頂。

“寒酒”だけが
造られるようになって以降、
時代は巡り、
第5代将軍、徳川綱吉の元禄年間には、
灘酒の“下り酒”が
江戸の庶民に持てはやされます。

とくに、当時の関東で仕込まれた
“地廻り酒”と比べると
“灘の酒”の酒質は高く、
江戸時代後期には、
江戸で飲まれる約8割が
“灘の酒”であったとの記録が
残されています。

江戸時代に“下り酒”として
人気を博した“灘の酒”の
優れた酒質を決定づけたのは
“六甲おろし”を利用した
「寒造り」技術といえます。

阪神タイガースの球団歌として
その名が一気に広まった
“六甲おろし”は、
寒い冬に六甲山の頂上から吹き降りる
冷たい北風のことです。

六甲山地は最高峰で931mと
それほど高い山ではありませんが、
神戸市街を見下ろすように
東西にそびえ立ち、
西高東低の冬型の気圧配置になると、
神戸の西に位置する明石からの
季節風が
西に位置する六甲山に向かって
吹き抜けます。

その季節風が六甲山頂にぶつかって
一気に吹き降りる気象現象が
“六甲おろし”で、
山と海の距離が短い
急勾配である地形が、
その速度を強めています。

江戸の庶民に親しまれた
“下り酒”ですが、
“灘の酒”を特徴づけることになる
“宮水”“山田錦”の登場は、
まだ先のこと。

それでもなお
“灘の酒”が極上の酒として
江戸庶民に受け入れられたのは、
「寒造り」技術が
より高い水準で確立していた
ということに他なりません。

灘五郷の酒蔵では、
この“六甲おろし”を
効率よく利用するために、
多くの蔵元が“重ね蔵”という
建築配置を取り入れた構造でした。

つまり、北側に、仕込み蔵や貯蔵庫、
南側に前蔵が隣接して
東西に長く連なる建物配置。

冬は“六甲おろし”の冷たい風が
北側の仕込み蔵を適した低温に保ち、
夏場は、南に位置する前蔵が、
貯蔵庫への強い直射日光を遮ります。

現在は空調設備が完備され、
建物も増築されるなどして、
大きく配置が変わったところも
ありますが、
それでも多くの酒蔵では
“六甲おろし”を上手く取り入れる
構造を意識しているようです。

酒造りへのこだわりは、
数百年経った現在でも
変わることはありません。

菊正宗では、
手間がかかり、冬場の過酷な作業が
強いられる生酛造りを
いまだ実直に続けています。

それは旨い酒を造るという、
江戸の蔵人たちの思いと
重なっています。

六甲山 夕焼け

自然の佇まいが心を癒してくれる「渓流釣り」。野趣に溢れる“骨酒”も。

新型コロナ禍で、密を避けた“釣り”ブーム再燃の兆し。

ただ今、アウトドアが
ちょっとしたブーム。

新型コロナ禍で、人の集まる
有名アミューズメント施設からの
一時的な回避と考える人も
多いようで、密を避けた
郊外のアウトドアレジャーに
人気が集まっています。

とはいえ、
情報番組や雑誌の特集などの
メディアでいち早く新しい
レジャーブームが紹介されると、
そこに人が集まって
密状態になる懸念も。

これも、世の常なのでしょうか。

このアウトドアブーム、
実は、新型コロナ騒動の前から
始まっていました。

ソロキャンプやグランピング
(宿泊施設のある
リゾート感のあるキャンプ)、
屋外バーベキューを始め、
アクティブな女性たちが
楽しさを見つけ出した
山ガール(女性の山歩き)、
海ガール(女性のマリンスポーツ)、
そして釣りガール。

これらのアウトドアブームの
後押しをしているのは、
少なからずSNS映えを意識した
ファッションやアイテムによる
オシャレさのアピールが
あってのことともいえます。

そんな一過性の理由で
あったとしても、
新しい世代に受け入れられ、
その趣味人口の裾野を
大きく広げるという意味では
喜ばしいこと。

こうした趣味嗜好の
分散によってメジャーな
アミューズメントスポットに
人が集中するのを避け、
人で賑わう繁華街への
外出を控える自粛期間でも、
少ない人数で数少ない自由な機会を
楽しめているのかも知れません。

さて今回、
スポットを当てるのは“釣り”。

この新型コロナ禍では、
ファミリー層に人気の
“サビキ釣り”が好評とのこと。

波止場や突堤で、仕掛けの下に、
重りのついたコマセカゴに
オキアミなどの寄せエサを詰めて
沈めるだけの簡単な、
子供でも楽しめる“海釣り”です。

魚群の回遊に当たれば、
一度に数匹の釣果が期待できる、
いわゆる入れ食い状態に。

一方、若い層に受けているのは
“バスフィッシング”。

ルアー(疑似餌)を、
まるで生きているかのような
動きをさせることで、
バスを釣る、やや高度な
“淡水池釣り”です。

この他にも、
“釣り堀”や“海釣り公園”など、
意外と身近な所にも
フィッシングスポットはあります。

“釣り”というと
高い道具を揃えて、
専門知識がないとできない
と思ってる方もいますが、
意外と間口の広い趣味です。

安いセットを買って、
この道数十年の玄人はだしの人と
並んで釣り糸を垂れている時に、
ビギナーの方に釣果がある
というのもよく聞くお話。

安い道具からスタートして、
徐々に道具を揃えていくのも
楽しみのひとつで、
やがて“釣り”の魅力に
はまっていくというのが、
この趣味の醍醐味
ともいえるのではないでしょうか。

意外と、初心者でも楽しめる「渓流釣り」。

さて、“釣り”の中でも、
難しいと敬遠されがちなのが
河川上流域での「渓流釣り」です。

イワナやヤマメ、アマゴなど、
人の気配を察知する
警戒心が強いとされ、また専用の
釣竿と毛針(疑似餌)を使った
高度な“フライフィッシング”を
イメージしがちですが、
“餌釣り”ならば、
初心者にも比較的容易に
楽しめるようです。

河川の下流域でフナやコイなどの
個体生息数が多い魚については、
一部地域を除いて“釣り”の
期間は設けられていません。

しかし、
上流域での「渓流釣り」は、
産卵期を保護するための
禁漁期間が設けられており、
全国的に3月から9月までが解禁期間。

早いところでは12月頃には
解禁されています。

また、人工池や川の一部を
囲いや石などで堰き止めた
“管理釣り場”では禁漁期間がなく、
一定数の魚を放流しているため
初心者でも釣果が望める
手軽さが人気です。

近接してキャンプや
バーベキュー施設があるところもあり、
ファミリー層の利用も多いとか。

まずは手軽な“管理釣り場”で
「渓流釣り」の楽しさを知り、
自然の河川上流域で“餌釣り”、
疑似餌の“ルアーフィッシング”
を経て、ちょっと高度な
“フライフィッシング”へと
趣味の幅を広げてみては
いかがでしょうか。

釣ったイワナやヤマメ、
アマゴなどは、多くの
“管理釣り場”に併設されている
バーベキュースペースで
豪快に塩焼きで。

少し小ぶりなイワナは、
野趣に溢れた
“骨酒(こつざけ)”が
オススメです。

下処理をしたイワナを
水分が飛んで
カラカラになるまで焼きます。

塩は振らずに
コゲ過ぎないように時間をかけて
遠火で焼くのがポイントです。

焼きあがった魚は、
全体が浸るくらいの
熱々の燗酒に入れて、
あとは塩焼きを肴に
ぐいっと一杯やるだけ。

また、身を食べきった骨を
もう一度焼いて燗酒に入れて飲むと、
より一層芳ばしさが広がり、
普段飲む燗酒とはひときわ違った
美味しさを楽しめます。

「渓流釣り」の醍醐味は、
“海釣り”の開放感とは少し異なる
非日常的な体験にあります。

木立ちにこだまする
鳥の鳴き声や草木の香り、
喧騒のない自然など、疲れた心を
癒してくれるに違いありません。

“食米”と“酒米(酒造好適米)”の違いは?

“食米”のトレンドは、甘くて粘り気のあるモチモチ食感。

1936年(昭和11年)に
「山田錦」が市場に登場して以降、
86年経った今なお
“酒米(酒造好適米)”の王者として
トップシェアを誇っていることは、
以前にこのコラムで紹介しました。

生産量2位の“五百万石”、
3位の“美山錦”を大きく引き離し、
毎年全国規模で開催されている
日本酒の“全国新酒鑑評会”では、
酒米に「山田錦」を使用した日本酒が
上位を占めるように
なっていったため、鑑評会では
2000年(平成12年)度から10年ほど、
「山田錦」を別枠扱いしたほどです。

今のところ、「山田錦」ほど、
高い可能性を秘めた
“酒米(酒造好適米)”は、
他にないのかもしれません。

そうしたことを踏まえて、
旨い酒を醸すこの「山田錦」を
実際に炊いて食べると美味しいのか
どうかという疑問が湧いてきます。

その前に、私たちが主食として
食べているご飯である“食米”
について、少し知っておきましょう。

“食米”の銘柄は
“単一銘柄米
(産地、品種、産年が同一)”と
“複数銘柄米
(ブレンド米)”に
大きく分類され、
流通の際に産地表記が必要という
規定があります。

とりわけ“単一銘柄米”は必然的に
産地表記がないと
販売することができません。

“単一銘柄米”といえば、昔は
“コシヒカリ”“ササニシキ”
という二大銘柄が突出して有名で、
その規定を上手く利用したのが
産地品種ブランドとして人気を博した
“魚沼産コシヒカリ”です。

それから時代は移り、
“あきたこまち”
“ひとめぼれ”
“ヒノヒカリ”など、
特徴的な銘柄米も増え、日本全国の
数十種もの銘柄米を炊き分ける
電気炊飯器も登場するなど、
美味しいご飯への情熱が
高まっています。

ブランド化された
全国の銘柄米の名前のカタカナ表記は
国の指定試験場で、ひらがな、
漢字表記は県の試験場でつくられた
お米というルールがありました。

しかし、1991年(平成3年)に
国の指定試験場でつくられた
本来カタカナ表記である品種に
“ひとめぼれ”と命名したことが
キッカケとなって、
その品種の特徴や親しみやすさ、
覚えやすさなどを表現するために、
一般公募などによって命名するなど、
銘柄米の名前をつけることは
自由となりました。

“単一銘柄米”が増えている中、
品種別作付け比率では、
“コシヒカリ”が、
現在も全体の約34%を占め、
1979年(昭和54年)以降、
連続で1位という
安定した生産量を誇っています。

とくに今の米生産の主流は、
甘くて粘り気のある
もちもち感という食味が
好まれる傾向です。

“コシヒカリ”と双璧を成していた
“ササニシキ”は、時代に沿わない
あっさりした味わいで、
冷害によって収穫が減り、
冷害に強い“ひとめぼれ”などに
作付けが移行したことで、
現在は希少な銘柄米とされています。

しかし、
さっぱりとして主張しすぎない
“ササニシキ”の食味は、
お寿司のシャリや、
出汁を生かした和食との相性は
抜群で、意外にも、その存在感は
以前にも増しているようです。

お酒を醸しやすい“酒米(酒造好適米)”の特徴。

“食米”と比較した場合、
“酒米(酒造好適米)”は、
粒が大きく、中心に白い
“心白(しんぱく)”があるのが
特徴です。

また、その粒は、外硬内軟性
(がいこうないなんせい)で、
外側は硬く、内側が柔らかいという
特徴があります。

外側の硬いところは、
食べた時の旨味に繋がるタンパク質や
脂肪の部分ですが、醸造においては
雑味の原因となるため、
精米過程で磨かれるところ。

硬いため砕けずに磨かれます。

また内側の“心白”は
柔らかくて粘度が高く、
吸水性に富みます。

この部分は
タンパク質の含有が少なく、
細かい孔が空いていて、
米粒の中心に麹菌の菌糸が
入り込みやすい構造です。

つまり、硬い外側が磨かれ、
水分を含んだ内側の
“心白”に菌糸が入り込んで
お米を溶かす酒造りに適した構造
となっているのが
“酒米(酒造好適米)”
ということになります。

さて、冒頭の“「山田錦」を
実際に炊いて食べると美味しいのか”
という疑問についてですが、
タンパク質や脂肪が少ないので、
“食米”のもっちりとした粘りが
少ないのでホロホロと、口の中で
崩れやすく、柔らかいけど芯に
歯ごたえを感じるアルデンテ状態に。

どちらかというと、さっぱりとした
“ササニシキ”の食味に
近いのかも知れません。

寿司や和食、また、仕上がりの
アルデンテという点では、
パエリアやリゾットなどの料理にも、
“酒米(酒造好適米)”は
適しているようです。

ただ“食米”と比べると、やはり
適材適所というところに
落ち着きそうです。