アルファ、ベータ、ガンマ…変異株へのギリシャ文字使用には、理由がある。

ギリシャ文字使用には、変異株発見国への配慮が。

新型コロナウイルスが、
世界的に感染拡大している
要因のひとつに、
次々と世界各地で発見される
変異株の存在があります。

コロナ禍当初は発見された国名を
冠して呼んでいましたが、途中、
“N501Y型”
などの学術的な呼称を経て、
今年5月、WHO(世界保健機関)は
ギリシャ文字を使った
新しい命名システムである
「WHOラベル」を発表。

これを境に、
“英国株”は“アルファ株”、
“南アフリカ株”は“ベータ株”、
“ブラジル株”は“ガンマ株”、
“インド株”は“デルタ株”へと、
変異株の呼称は置き換わりました。

この「WHOラベル」の採用は、
特定の国名をウイルス名称に使うこと
による偏見や差別を回避するという
意味があります。

新たな変異株を見つけても、
公表することで自国名がその変異株に
冠されることを懸念して
消極的になる国が出ることを
防ぐための対応策ともいえます。

また、ギリシャ文字はシンプルで、
言いやすく、覚えやすいというのも
採用された理由のひとつ。

この新しい呼び方を選ぶにあたり、
“命名の専門家”や
“命名法の法律家”
“ウイルス分類学の専門家”を始め、
主要国の代表などが招集され、
慎重な議論を重ねて命名されました。

変異株の命名にあたっては、
“α(アルファ)”、
“β(ベータ)”、
“γ(ガンマ)”、
“δ(デルタ)”…と、
順番につけられ、
現時点でもっとも新しい変異株は
“μ(ミュー)”とのこと。

4番目デルタから、
12番目のミューに飛ぶのは何故?
実は、これには理由があります。
WHO(世界保健機関)では、
警戒レベルを2段階にランク設定して
変異株のカテゴライズを
行なっていることに、
そのヒントはあります。

  • 「VOC(Variants of Concern
    /懸念される変異株)」

もっとも警戒度の高い
“国際的な重視が必要なほど、
高い感染力やワクチン効果への
影響がある”変異株。

“アルファ株”
“ベータ株”
“ガンマ株”
“デルタ株”
の4種類。

  • 「VOI(Variants of Interest
    /注目すべき変異株)」

VOCより警戒レベルが一段下の
“感染力が変異した可能性があり、
複数の国で感染が拡大している”
変異株。

“イプシロン株”
“ゼータ株”
“イータ株”
“シータ株”
“イオタ株”
“カッパ株”
“ラムダ株”
“ミュー株”
の8種類。

“デルタ株”以降は、
地域が限定される変異株の発見のため
ワンランク下の警戒レベル
「VOI」に分類。

つまり、
緊急性を伴わないこともあって、
大きく報道されていなかった
ということになります。

ギリシャ文字は全部で24種類。

今のところ、折り返しとなる12番目の
“ミュー株”まで見つかっているので
残すところ、あと12種類までは大丈夫
といえます。

万が一、
ギリシャ文字を使い切った場合、
次は星座名を使用するというのが有力
との報道が一部であったようです。
できることなら、
ギリシャ文字を使い切る前に
収束して欲しいと願うばかり。

 

ずっと以前から、日本に馴染んでいるギリシャ文字。

ギリシャ文字は、何も、
こういう場合に使われるだけで
はありません。

ずっと昔から、私たちの生活の中には
数多くのギリシャ文字が溶け込んで
使われています。

例えば、理数系の分野。

電気抵抗の単位として使われる
オームは“Ω(オメガ)”を記号とし
小さな単位の頭につくマイクロは
“μ(ミュー)”の記号を使います。

円周率に使われる“π(パイ)”は
有名なところ。

角度の表示に用いられるのは
“θ(シータ)”で、
傾斜角を求める計算式に利用。

標準偏差の
“δまたはΔ(デルタ)”は
統計学の分野で活用されています。

エクセルで表計算をする際、
合計を求める際に使用するのが
“Σ(シグマ)”ボタン。

また、一般の方には、
ややチンプンカンプンですが、
関数や演算分野では、
総乗計算の“Π(パイ)”や
“λ(ラムダ)”計算、
“χ(カイ)” 二乗分布、
“γ(ガンマ)”関数
などがあります。

建設図面とかに円の直径を表す
記号として使われている
“φ(ファイ)”は、
よくパイと誤読されます。

しかし正確な読みは「マル」。

0と区別をつけるために
“○に/(マルに斜め線)”で、
パソコン入力などの際に、便宜上、
“φ”で代用しているとのこと。

単位はmmで、
“φ5mm”と書くのが正しい流儀
だそうです。

車業界でも、
トヨタの“アルファード”をはじめ、
昔の名車、三菱ギャラン
“Σ(シグマ)”と“Λ(ラムダ)”
海外に目を移すと、
名車中の名車とされる
ランボルギーニ“ι(イオタ)”。

イタリアの名門の車メーカーの
ランチアでは、ギリシャ文字を冠した
車名が10種以上あり、
現在フィアットグループに吸収されて
同傘下のクライスラー
“ε(イプシロン)”として
販売されています。

皆さんご存知のものを上げると、
リラックスした時の脳内波形
“α(アルファ)波”、
瞬間接着剤の
“アロンα(アルファ)”、
パソコンソフトの試用バージョンの
“β(ベータ)版”、
緑黄色野菜に含まれる栄養素
“β(ベータ)カロテン”、
脳腫瘍などの病巣を焼き切る
“γ(ガンマ)ナイフ”、
映画にもなった米陸軍特殊部隊
“Δ(デルタ)フォース”、
JAXA開発のロケット
“ε(イプシロン)”、
人気アニメの
“Ζ(ゼータ)ガンダム”
“ν(ニュー)ガンダム”など、
情報発掘をし始めると、
ゴロゴロ出てくる
ギリシャ文字を冠したネーミング。

アルファベットそのものが
“α(アルファ)”と
“β(ベータ)”を
組み合わせた言葉。

さらにギリシャ文字には、
それぞれが“小さい”、“まとめる”
などの意味を持つため、
深いネーミング要素となるのも
使われる理由のようです。

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10月18日は「冷凍食品の日」。 日本に冷凍食品が登場して約100年が経ちました。

鮭のルイベ

冷凍食品の普及には、さまざまな状況が影響していました。

毎年10月18日は
「冷凍食品の日」です。

この日を制定した
社団法人日本冷凍食品協会によると、
冷凍の“凍”が
“10(とう)”に通じ、
「冷凍食品」の世界共通の
管理温度である−18℃以下の
“18”にちなんで、
1985年(昭和60年)の記念日制定
に至ったとのこと。

「冷凍食品」が誕生するよりも
ずっと以前から、
極寒地ならではの食文化として
“ある程度、鮮度を保った食品を
冷凍して食べる”
という習慣がありました。

ロシアやカナダなどの極寒地では、
外気温が−50℃以下にも下がるため
スープを外に出しておけば、
すぐに凍り、食べたい時に火にかけて
温めて食べるというもの。

日本でも北海道の一部地域では
−30℃以下の寒さになり、
サケなどを外気冷凍したルイベは、
その頃からの郷土料理のひとつ。

当時は干物に近い保存食で、
現在の少しシャリシャリ感のある
刺身の一種であるルイベとは
別の食べ物でした。

「冷凍食品」が最初に登場したのは
1900年代のアメリカ。

傷みやすいジャム加工用イチゴを
一般家庭に冷凍輸送したのが始まり
とされています。

しかし、それが広まったのは
アメリカの一般家庭用冷凍冷蔵庫が
普及し始める1920年代に
なってからのことでした。

日本の「冷凍食品」事業は、
1920年(大正9年)に、
葛原商会(現ニチレイ)の葛原猪平が
アメリカ製の冷凍設備を北海道に
建設したことに端を発します。

1日10トンの冷凍ができる冷凍倉庫で、
北海道で獲れる魚を
凍らせたのが最初でした。

日本で初めて市販された
「冷凍食品」は、戸畑冷蔵が
1930年(昭和5年)に発売した
“冷凍いちご”。

アメリカでの最初の「冷凍食品」と
同じイチゴだったことを考えると、
イチゴは「冷凍食品」としての
適性があるといえるでしょう。

とはいえ、まだ各家庭に「冷凍食品」
を保存する冷凍冷蔵庫はなく、主に
業務用としての利用が主流でした。

日本国内で「冷凍食品」が
認知され始めたのは、
1964年(昭和39年)の
東京オリンピックを機に、
一気に外国の文化が入ってきた辺りの
高度成長期真っ只中の時期です。

その頃は、主に外食産業を中心に、
「冷凍食品」の素材や調理法、
解凍などの研究が進んだ時期
ともいえます。

1970年代になって大型の冷凍冷蔵庫や
電子レンジが普及し始めた辺りから、
一般家庭で「冷凍食品」の利用が
増え始めました。

1980年代になって、
電子レンジの低価格化による
一般家庭への爆発的な普及があり、
それに伴って、「冷凍食品」市場が
急激に拡大しました。

食材や料理の冷凍保存技術だけでは
「冷凍食品」を一般普及させることは
無理なお話。

「冷凍食品」の品質を保ちながら運ぶ
“冷凍輸送”と、販売拠点での
“冷凍温度管理設備”、
消費者が購入した後の保存を行う
“冷凍冷蔵庫の普及”、
「冷凍食品」を美味しく食べるための
“電子レンジでの解凍”など、
さまざまな技術環境が整って初めて、
「冷凍食品」普及が整います。

 

長い準備期間を経た「冷凍食品」の目まぐるしい進化。

「冷凍食品」が一般家庭に
届けられるまでに、地道な60年もの
歳月を費やしました。

しかし、「冷凍食品」事業を支える
周辺環境が整って以降は、
年を追うごとに目まぐるしく
進化を遂げており、
その進化は現在も続いています。

なかでも、1994年(平成6年)に
発売された
“電子レンジ対応コロッケ”
は、それまで「冷凍食品」の概念を
大きく覆すことになる
エポックメーキングな商品です。

それまでは冷凍コロッケを
油で揚げていましたが、
この商品は、揚げたコロッケを
風味を損なわず急速冷凍することで、
レンジで“チン”するだけで、
サクサクのコロッケが食べられる
という手間いらずの画期的な
「冷凍食品」でした。

それ以降は、冷凍庫から取り出して
そのままお弁当に入れるだけで、
昼ご飯の時には自然解凍によって
食べ頃になっている
“お弁当”シリーズや、
一流シェフ監修の“超高級”な
「冷凍食品」の登場など、
皆さんもご承知のことだと思います。

料理で「冷凍食品」になっていない
ものはないんじゃないかと思うほど、
バラエティ豊かに
進化を続けているといえるでしょう。

さて、「冷凍食品」についての
ウンチクを少し。

まず、市販の「冷凍食品」は
腐りません。

これは、「冷凍食品」の保存温度が
-18℃以下に決められているため、
微生物が増殖しないからです。

ただし、色が変わったり、
霜がついてる場合は、
長期間の冷凍焼けや酸化などにより
品質が劣化しているので食べるのを
避けたほうがよろしいでしょう。

それから、冷凍野菜は、
凍ったまま調理というのが基本。

というのも冷凍する前にちゃんと
下処理がされているからです。

何れにしても、大切なのは、
「冷凍食品」のパッケージに
書いてある解凍方法を守ることで、
失敗しない解凍を心がけることです。

寒くなるこれからの季節は、
燗酒の美味しさを
実感できる季節でもあります。

お好みの「冷凍食品」を肴に
一杯というのもオツなもの。

美味しい「冷凍食品」を求めて、
スーパー巡りというのも
よろしいんじゃないでしょうか。

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「重陽の節句(ちょうようのせっく)」は、別称“菊の節句”。

日本の国の象徴とされる“国鳥”“国花”をご存知ですか。

日本の国を象徴するものとして、
よく話題になるのが
“国鳥”と“国花”。

“日本の国鳥は?”と聞かれて多くの
方が“トキ”と解答されますが、
正解は“キジ”です。

これは“トキ”が特別天然記念物で
学名が“Nipponia nippon
(ニッポニア・ニッポン)”
であることや、絶滅危惧種で、
佐渡島に残っていた野生のトキ5羽を
全羽保護したことで野生絶滅に
なったというニュース報道などの
イメージの影響で、日本の国の象徴
としての誤認に繋がっているのかも
しれません。

では、“日本の国花は?”と
聞かれた場合、“桜”もしくは“菊”
のいずれかで悩まれる方が多い
のではないでしょうか。

正解は、法定で定めた“国花”は
存在せず、国民に広く親しまれている
“桜”や皇室の家紋のモチーフである
“菊”が、事実上の“国花”として
扱われていることが多いようです。

ちなみに、“国魚”は錦鯉、“国蝶”
はオオムラサキ、“国石”はヒスイ、
そして“国菌”は、なんと
日本酒醸造や味噌、醤油の製造に
使われる麹菌(こうじきん)です。

さて、しばしば“国花”的な
役割を担う“菊”が日本の歴史に
登場するのは、平安時代の歴史書
“類聚国史(るいじゅこくし)”。

桓武天皇が詠んだ
“このごろの しぐれの雨に 菊の花
散りぞしぬべき あたらその香を”
が、菊を詠んだ最古の歌と
考えられています。

日本にはタンポポや野菊などの
小ぶりな花をつけるキク科の植物は
自生していましたが、
奈良時代末から平安時代初期に
中国から渡ってきた“菊”はやがて
宮中でブームとなり、“古今和歌集”
で盛んに詠まれるようになりました。

春の“桜”に対して、“菊”は秋を
象徴する花として愛でられ、
鎌倉初期の後鳥羽上皇が菊の花の
意匠を好んで、菊紋を皇室の
家紋として採用したことから、
その人気は一気に高まります。

そして、江戸元禄時代にさまざまな
品種が誕生する、いわゆる
菊ブームが到来。

貴族から武士、庶民へと広がる中で
菊の品種改良は進んでいきました。

とくにこの頃、幕府が五節句を
正式に制定し、9月9日を
「重陽の節句」としたことが影響して
“菊”の人気はピークに。

花壇に菊を寄せて植えた“花壇菊”、
集めた菊で風景などをつくり込んだ
“形づくり”が盛んに行われ、
こうした“菊細工”の技法は、後の
“菊人形”などへと発展を遂げます。

明治時代には大輪の花が好まれ、
花の直径が30cmに達する品種も
登場しました。

 

本来の「重陽の節句」は、10月9日前後。

“菊”といえば、9月9日は五節句
のひとつ「重陽の節句」、別名
“菊の節句”。

もともとは旧暦9月9日の歳時
なので、新暦の季節に当てはめると
“月遅れ”の10月9日あたりが、
ちょうど「重陽の節句」の本来の
季節感覚です。

話は少し逸れますが、以前にここで
紹介した旧暦から新暦に切り替わった
際、具体的には1872年(明治5年)
12月3日の翌日が1873年(明治6年)
1月1日となりました。

そのため、新暦では約1カ月季節が
早く訪れ、何より農業関連の行事
すべてにズレが生じるように
なりました。

そこで、“月遅れ”で行事を行う
対策を採用。

その代表的なものが“お盆”で、
もともとの7月15日ではなく
“月遅れ”の8月15日が現在の主流です。

二十四節気

ところが、日付に意味を持つ五節句は、
“月遅れ”を採用せず、旧暦の日付の
ままがほとんど。

桃の節句に桃が咲かず、七夕は梅雨の
最中(仙台七夕は“月遅れ”を採用)、
端午の節句に揚げるこいのぼりは、
本来、雨中に鯉が天に昇って竜になる
“登竜門”という中国の故事に
あやかって、出世を願う江戸の武家が
揚げていたものが、今では5月の
晴天を泳ぐ姿が印象的です。

「重陽の節句」も9月9日という日付に
準じて行われることが主流と
なっています。

旧暦9月9日に「重陽の節句」の
お祭りが行われたことから、
「九日(くんち)」という呼び名が
定着したとの説があります。

とくに、
“長崎くんち(長崎県長崎市)”
“唐津くんち(佐賀県唐津市)”
“博多おくんち(福岡県福岡市)”
が「日本三大くんち」とされ、
九州北部地域に集中しています。

これとは別に、収穫した作物を神に
供える日、「供日(くにち)」から
転じて「くんち」になったとする説、
お宮に対して祭を行うため
「宮日(くにち)」が転じた説
などがあります。

もともとの「重陽の節句」の季節を
考えると、このコラムが掲載される
頃がちょうど、昔の季節感を
肌で感じるタイミングです。

夏の暑さが癒え、少し肌寒くなった
今日この頃。

9月9日「重陽の節句」解禁の
「ひやおろし」はもちろんのこと、
月を見上げながら、そろそろ熱燗は
いかがでしょうか。

日本酒が美味しい季節が
やってきました。

先人たちの伝統を未来へと繋ぐ「日本酒の日」。“ひやおろし”が目玉です。

なぜ、「日本酒の日」は、10月1日なのでしょうか。

10月1日が「日本酒の日」
と制定されたのは、
1978年(昭和53年)のことで、
今年、2021年(令和3年)で43年目。

この記念日を制定した
日本酒造組合中央会の
ホームページには、
“日本の國酒である日本酒を
後世に伝えるという思いを
新たにするとともに、
一層の愛情とご理解を
という願いを込めて、
1978年に日本酒造組合中央会が
「10月1日は日本酒の日」
と定めました”という
制定にあたっての意義が
掲載されています。

現在、日本酒の酒造年度は、
7月1日を開始日から
翌年6月30日なのですが、
なぜ、「日本酒の日」が10月1日に
制定されたのでしょうか。

1964年度(昭和39年)以前は、
その年に収穫された新米で
酒造りを始める10月を
1年のスタートとして、
翌年9月30日までが酒造年度でした。

日本酒の蔵元では、
昔から年度初日の10月1日を
「酒造元旦」として祝い、
神社に参拝して1年の醸造安全を
祈願したといいます。

そうした先人達が
大切に守り続けてきた伝統の日である
“10月1日”を、「日本酒の日」
という特別な記念日に制定して、
後世へと語り継ぐことの決意が
込められているともいえます。

また、別の理由として、
干支の“酉(とり)”が、
この「日本酒の日」制定に
深く関わっているとのこと。

“酉年”は12年に一度巡ってくる
十二支のひとつであるだけでなく、
1年の各月に割り当てた場合、
10月を指します。

ちょうどこの時期、
秋の五穀豊穣に感謝して
秋祭りなどを開催して、
神と酒を酌み交わす習慣が
ありました。

また、10月は旧暦の“神無月”で、
新酒を醸す月という意味で
“醸成月(かみなしづき)”
とも呼ばれ、古くから
“10月は日本酒の月”
と考えられていたようです。

余談ですが、
“酒”という漢字の部首は、
“氵(さんずい)”へんではなく、
つくりの“酉(ひよみのとり)”。

この“酉”は、酒壺を表した
象形文字から生まれたもので、
“醸”“酔”“醪”“酎”“酌”
など、酒に関連した漢字には、
この“酉”が使われています。

こうしたさまざまな理由によって、
10月1日が「日本酒の日」
と制定されました。

 

「日本酒の日」を大きく広めたのは、各地方自治の「乾杯条例」。

「日本酒の日」制定以降、
10月1日には、
鏡開き、振舞酒などの行事が、
関係団体を中心に行われてきました。

とはいうものの、
式典を中心としたもので、
大きなイベントというよりは、
厳かで神聖な行事が
主目的だったことが伺い知れます。

その静かな行事を
一歩先に進めたのが、
2004年(平成16年)の
「日本酒で乾杯推進会議」
の発足です。

日本酒造組合中央会の
ホームページには、
“古来、日本酒は神様にお供えする
神聖なものとされてきました。

「乾杯」には、神様の前で
人々が心をひとつにする願いが
込められています”
との記述があります。

”日本酒で乾杯”を
キャッチフレーズに、
日本酒を通して
日本文化を広く啓発することを
目的とした積極的な活動は、
やがて地方自治体が公布する
「乾杯条例」の制定へと
繋がっていきました。

2013年(平成25年)に
京都市で「京都市清酒の
普及の促進に関する条例」が
施行されたのを皮切りに、
このニュースが注目を集め、瞬く間に
このユニークな条例は全国へと拡大。

それぞれの地方特産の
酒の消費拡大を目的としたもので、
条例という名がついているものの、
拘束力や罰則はなく、
あくまで普及促進を促すものです。

その多くは日本酒ですが、
ワインやビールなどでの
乾杯も含める地域もあり、
現在、140を超える地方自治体で
「乾杯条例」が施行されています。

また、全国各地で、
「日本酒の日」とその前後
9月25日(土)~10月3日(日)の9日間を
“日本酒で乾杯 WEEK”とし、
“全国一斉日本酒で乾杯!”と
銘打った今年で7回目となる
一大イベントを開催。

現在、新型コロナ禍により、
その規模は縮小していますが、
オンラインで乾杯などの
企画が行われることで、
海外の日本酒ファンも参加する
イベントスタイルなど
新しい取り組みも広がっています。

「日本酒の日」の目玉は、
なんといっても、
9月9日に解禁されたばかりの
“ひやおろし”。

寒い時期に醸造して、
ひと夏熟成させ、
秋口に入って、
ほど良い円熟味をおびた
“ひやおろし”は、
格別の味わいです。

旬を味わうなら、“夏秋茄子”。ぜひ、「秋茄子」をお嫁さんに食べさせて。

常備野菜としての安定供給は“冬春茄子”、旬の美味しさは“夏秋茄子”。

農作物の種苗交配の研究や
栽培技術が進化し、
本来の旬とされる季節に関係なく、
品種改良やハウス栽培などによって
一年中収穫され、
外国からの輸入によるなど、
常備野菜の種類も増えています。

そんな常備野菜のひとつともいえる
「茄子」は、
12月〜翌年6月に収穫出荷される
“冬春茄子”と、
7月~11月に収穫出荷される
“夏秋茄子”の2種類に
大きく区分されます。

“冬春茄子”の出荷が
圧倒的に多いのは高知県、
それに出荷量で続くのは
熊本県、福岡県などで、
すべて温暖気候地域での
ハウス栽培です。

付け加えるならば、
これらの“冬春茄子”生産地は、
1年を通して
「茄子」全体の出荷量でも
上位に位置するということ。

つまり、「茄子」は、
もともとの旬以外の季節にも
料理に使われ、
常備野菜としての地位を
確立しているといえます。

一方、“夏秋茄子”は、首都圏近郊の
群馬県、茨城県、栃木県などでの
生産量が多く、
全国に点在する“ブランド茄子”の
ほとんどは“夏秋茄子”です。

露地栽培で生産される、
いわゆる旬の時期に美味しい
「茄子」は“夏秋茄子”です。

“夏秋茄子”の旬は、6月から9月。
なかには、
奈良広陵の“サラダ茄子”のような
4月下旬から出回り始める
早生種もあります。

夏を過ぎた旬の時期には、
京都の“賀茂茄子”や
大阪泉州の“水茄子”、
愛知の“奥三河天狗茄子”、
鹿児島桜島の“白茄子”など、
ご当地“ブランド茄子”が
収穫地域近くの店頭に並びます。

そして、年間の「茄子」生産の
約8割近くを占めるのが
“長卵形なす”という品種で、
“長なす”が18.3%、
“米なす”が2.4%、
“小なす”が0.5%
などの品種が続きます。

初夏から初秋にかけてが
“夏秋茄子”の旬といえども、
同じ株から収穫し続けるのは
困難なこと。

そこで、初夏に収穫した
“夏秋茄子”の株を、
気温が高い盛夏の時期に
剪定や根切りなどにより
一度休ませて、
「茄子」の負担を軽減する農法が
多く用いられています。

そして、
暑い夏を経て実がなる「秋茄子」は、
皮がやや厚めで、
小振りのしまった形に生育。

その実や皮は柔らかく、
味や旨みをさらに増して、
旬ならではの美味しさが魅力の
「秋茄子」として
人気を博しています。

とはいえ、夏野菜カレーなどに
「茄子」は欠かせない野菜のひとつ。

夏獲れの「茄子」は、
水分を多く含んでみずみずしく、
「秋茄子」は果肉が締まって
滑らかに食感が格別。

どちらも旬の味わいとして、
甲乙付け難い魅力に満ちています。

 

「茄子」に関わる、なるほどとうなづく含蓄のあることわざ。

“秋茄子は嫁に食わすな”
という有名なことわざがあります。

このことわざには、
“秋茄子は、もったいないから
嫁には食べさせるな”という
ちょっと意地悪な姑の嫁いびりの
意味もありますが、
それとは正反対に
“秋茄子は身体を冷やす、
または種が少ない野菜なので
子宝に恵まれないといけないから、
お嫁さんに食べさしてはダメ”
というお嫁さんを大切に思い、
身体を労わる意味もあります。

つまり、
旬の「秋茄子」はそれほど美味しく、
利尿効果のあるカリウムを
多く含むため、
尿の排出時に身体の熱と過剰な塩分を
排出し過ぎるのを諌めたことわざ
とも取れるということです。

実際に、
両方の意味を持つことわざで、
このことわざを使う人次第
のようです。

同じような使われ方をすることわざに
“秋かますは嫁に食わすな”
“秋鯖嫁に食わすな”
“秋蕗(あきふき)嫁に食わすな”
“五月蕨(ごがつわらび)は
嫁に食わすな”などがあります。

また、「茄子」が生育する環境と
米が生育する気候環境が
似ていることから、
「茄子」の生育状況をもとに、
米の作柄を予想することわざが
いくつかあります。

“茄子の豊作は稲の豊作”
ということわざは、
「茄子」はインド原産で
暑いと生育が良く、
逆に寒いと生育が悪くなります。

同じように稲も熱帯が原産地で
「茄子」がよく育って豊作になる
気候の時は、稲も豊作になる
という訳です。

“初茄子の皮が厚ければ米の不作”
“茄子の実がかたくておいしい時は
凶作”というこれらのことわざは、
「茄子」は米と同じように、
成長期に多くの水分を必要とし、
そのタイミングで水が不足すると、
皮が厚くなったり、
身が固くなったりする
ということを言い表しています。

定番中の定番である
“焼き茄子”“茄子の煮浸し”
の簡単料理こそが、
本来の「茄子」の美味しさを
堪能できるのですが、
ネットで調べてみると、
“秋茄子の蒸し転がし”“無限茄子”
など食指が動く魅力的な料理に
ヒットします。

そろそろ涼しくなるこの季節、
「茄子」料理と一緒に今年の初𤏐酒、
お試しください。