失敗しない「梅酒」づくりのために大切なのは、梅の実を傷つけないこと。

容器と梅の下準備は、細心の注意を払って丁寧に。

数回にわたって
「梅酒」づくりの道具や
漬け込む酒類、
梅の品種、砂糖などについて
掲載してきましたが、
今回は全体を通した
青梅を漬け込む工程や注意点を
おさらいとともにご紹介します。

まずは、漬け込む容器。

まずは以前のコラムのおさらいです。

  • 持ち運びに便利な吊り手がついた、
    洗いやすい“密閉式の広口ガラス瓶”
    がオススメ。
  • 漬ける梅の約4倍の大きさが目安。
    青梅1kgには4ℓ瓶が妥当なサイズ。
    ただし、あまり大きいと
    取り扱いや保存に不便なので、
    青梅を500gずつ
    2ℓ瓶2本に分けるのも
    賢い選択です。
    容器を準備するにあたり、もっとも
    気をつけなければならないことは
    雑菌の繁殖を抑えることです。
    まずしっかりと台所用洗剤で洗い、
    水気を拭き取ってから天日干しに。
    完全に乾いてから、
    除菌アルコール消毒します。
    また、漬け込むホワイトリカーを
    清潔なペーパータオルに染ませて、
    そのアルコール成分で
    消毒する方も多いようです。

続いて、「梅酒」づくりで
失敗しないための、
青梅の選択と下ごしらえです。

  • 「梅酒」づくりシーズンとともに
    スーパーなどに設置される
    「梅酒」コーナーで
    販売されている青梅ならば、
    過去の販売実績によって
    入荷することが多いのでほぼOK。
    心配ならば、販売員に
    相談するのもいいでしょう。
    オススメは、流通量の多く
    市販の「梅酒」にも
    よく使われている「南高梅」。
    希少種「古城梅」も
    「梅酒」づくりに適しているので、
    見つけたら即買いです。
  • 青梅は、キズのない鮮やかな緑色の
    少し硬い梅を選ぶことが大切。
    収穫後についたキズは「梅酒」の味
    に大きく影響するだけでなく、
    そのキズから実が崩れて
    「梅酒」を濁らせる原因に。
    透き通った琥珀色の
    「梅酒」づくりにキズは厳禁です。
    また、収穫後の梅の実は
    足が早いので、
    新鮮でツヤと張りがある
    瑞々しい青梅を選びましょう。
    張りがなくシワのよっているものや
    黄色く熟しはじめているものは
    避けてください。
  • 2Lサイズなど、大きな梅ほど
    果肉部分が多く、
    梅エキスがより多量に
    抽出されます。

青梅の下ごしらえは、
青梅は流水でやさしく手洗いし、
たっぷりの水に2〜3時間漬けて
アク抜きをします。

ザルにあけた後、
一粒ずつ竹串などで
実をキズつけないように
ヘタを取り除きます。

ヘタを残したまま漬け込むと
エグ味の原因となるので
丁寧に取り除いてください。

その後、乾いた布で
一粒ずつ水気を拭き取ってください。

これで青梅を漬け込む
下ごしらえは完了です。

ここでひと手間。

下ごしらえの完了した
青梅をビニール袋などに入れて
冷凍庫でひと晩凍らせると、
梅のエキスが出やすくなり、
早く漬かります。

仕上がった梅の食感が良いのも
魅力なのですが、
香りが少々落ちるのが難点。

早く「梅酒」を飲みたいという方
にオススメの隠し技です。

 

「梅酒」づくりに氷砂糖を使うのには、チャントした理由があります。

次は、一般的に
氷砂糖を使う理由です。

これも、
以前のコラムのおさらいです。

氷砂糖が使われる理由は、
一気に溶けないので、
アルコール濃度を薄める
スピードが遅く、浸透圧で
梅のエキスを十分に
アルコールに溶け出させる役割が
あるという利点です。

一般家庭で、
「梅酒」を漬ける酒類は、
アルコール度数20%以上の蒸留酒
という“酒税法の例外規定”
があるので注意が必要です。

この規定を遵守したうえで、
梅を漬け込むお酒の選択にあたり、
とくに初心者の方は
アルコール分35%の
“ホワイトリカー(甲類焼酎)”
を使うのが無難です。

「梅酒」づくりに慣れてから、
ウォッカやジン、ブランデーなどの
酒類に幅を広げましょう。

これで「梅酒」づくりの
準備はできました。

あとは瓶に下ごしらえ済みの青梅と
氷砂糖を交互に入れ、
梅と氷砂糖の層を
幾重にも重ねていきます。

一番上の層は氷砂糖に。

そのあと、
上からホワイトリカーを、
一気にではなく、
ゆっくりと回し入れます。

そして、きっちりと蓋を閉めて、
漬け込んだ日付、梅の品種名、
仕込んだレシピを書き込んだ
メモを瓶に貼り付けて、
冷暗所に保管してください。

あとは、3カ月から半年、
「梅酒」ができあがるのを
待つばかり。

「梅酒」づくりは、
それほど難しくありません。

製造工程は
シンプルで簡単そのもの。

大切なのは、より丁寧で
細心の注意を払った下ごしらえに
かかっているようです。

南高梅が主流の家庭用「梅酒」。レアな古城梅を見つけたら、即買いです。

南高梅

初めての「梅酒」づくりは、一般的な材料と定番のレシピが無難。

5月中旬から下旬にかけて
スタートする
「梅酒」シーズンともなると、
「梅酒」用の青梅がスーパー店頭に
チラホラと並びはじめます。

すべてという訳ではありませんが、
比較的大きなスーパーや
ショッピングセンターには、
「梅酒」のPOPを掲げた
専用コーナーが
設けられる場合が多いので、
すぐに青梅売り場を
見つけることができるでしょう。

「梅酒」用の青梅を買う際に
注意したいポイントは、
大きくふたつあります。

店頭に並んでいる
“青梅の状態”と
“青梅の品種”です。

まず、青梅の状態ですが、
基本的にはキズのない
鮮やかな緑色の
少し硬いくらいの梅
を選ぶことが大切です。

とくに収穫時以降についたキズは、
味の仕上がりに
大きく影響するだけでなく、
「梅酒」独特の透き通った
キレイな琥珀色に仕上がりません。

実が崩れて果肉が流れ出して、
「梅酒」が濁ってしまうからです。

青梅を選ぶ際は、果肉と果汁が
ぎっしりと詰まっている
大きなサイズ(2L)を
選ぶのもポイント。

さらにいえば、均等に
梅のエキスを抽出するためには、
粒の大きさが揃っているに
越したことはありません。

収穫後の梅の実は足が早く、
すぐに鮮度が落ちるのですが、
出はじめの青梅には“未熟果”が
含まれている場合があり、
梅のエキスが十分に抽出されない
こともあるのでご注意を。

“未熟果”の見分けは難しく、
時間の経過とともに、
表皮が乾燥するのが特徴で、
店頭ですでに
シワが出てきているものや
購入後に数日で
シワがよってくる実は、
残念ながら“未熟果”なので、
取り除いてください。

通常の青梅は
収穫後もシワがよることなく、
時間とともに黄変していきます。

また、黄色く熟した完熟梅でも
「梅酒」はつくることができ、
酸味が少なく、口当たりの良い
甘い仕上がりになりますが、
漬け込む時や保管時に
細心の注意が必要なほど
デリケートなので、
最初の挑戦としては、
あまりオススメはできません。

次に青梅の種類ですが、
圧倒的な収穫量を誇る
「南高梅」を使うのが、
失敗が少なく無難な選択。

「南高梅」は
種が小さく果肉が多いため、
どちらかというと
梅干しに適した品種ですが、
「梅酒」用としても人気の品種です。

「南高梅」と同じ
和歌山県の南部地区で収穫される
「古城梅(ごじろうめ)」は、
別名“青いダイヤ”と呼ばれる
希少品種です。

古城梅

収穫量が少なく、
なかなか店頭で見かけることは
少ないのですが、実が硬く、
「梅酒」づくりに
好適の品種なので、
店頭で見かけたら迷わず
「梅酒」づくりに使ってみることを
オススメします。

前回のコラムで紹介した菊正宗の
「古城梅酒 原酒(ごじろうめしゅ)」
は、名前にあるように
この「古城梅」を使用しています。

じっくりと三年間貯蔵した
芳醇な「梅酒」を原酒のまま瓶詰め。

まろやかな口当たりと、
やや抑えた甘さ、爽やかな酸味に
ご好評をいただいています。

この二大品種以外にも、
種が小さく果肉が厚い「白加賀」や
実が大きい「豊後」のほか、
「青軸」「竜峡」「光陽」
「七折」「玉英」など、
それぞれ特徴的な品種が
店頭に並んでいることもあるのので、
購入時に店員さんにその特徴を
聞いてみるのも良いでしょう。

また、全国各地の梅の産地
近くにお住まいなら、
梅の観光農園で“梅狩り”というのも
よろしいかと思います。

自分の手で収穫した梅を
漬け込んだ「梅酒」も、
なかなかオツなものです。

 

「梅酒」づくりに氷砂糖を使うのには、ちゃんとした理由があります。

砂糖については、
純度が高い氷砂糖を使うのが
「梅酒」の定番のレシピ。

クセがない分、
上品な甘味に仕上がります。

氷砂糖が定番的に使われる理由は、
一気に溶けないので、
アルコール濃度を
薄めるスピードが遅く、
浸透圧で梅のエキスを十分に
アルコールに溶け出させる役割がある
という利点です。

その効果で、漬け込んだ
梅の実の表皮がシワっぽくならず、
キレイな形を保つ役割を
成しているのです。

同じ系統のグラニュー糖も、
クセがなく
梅の味を邪魔しない砂糖ですが、
溶ける速度が早く
アルコール度数を
一気に下げる恐れがあり、
薄まったことで
梅の実が浮いてしまい、
しっかりと漬かりません。

何らかの理由で
グラニュー糖を使う場合は、
仕込み終えた後、
すぐにかき混ぜないこと。

そっとしておいてアルコール度数を
できるだけ保つようにしてください。

精製されていない
黒砂糖や赤ザラメを使うと、
一般的な「梅酒」と異なる
風味やコクが楽しめるのですが、
アクがあり、
やや渋みを感じる味になります。

砂糖の代わりに
ハチミツを使うことも可能です。

ハチミツは溶けにくいので、
漬け込んでから2週間ほどは、
毎日、瓶を揺らして、
底に沈澱したハチミツを
少しずつ溶かす手間がかかります。

しかし、2カ月程度で飲めるのと、
酸味が抑えられた
マイルドな優しい味に仕上がり、
ほんのりとハチミツの風味も
楽しめます。

最初の「梅酒」づくりに
挑戦するのなら、
まずは定番のレシピで挑戦を。

何年か試す中で、
梅の品種を変えたり、
砂糖の分量を調整するなど、
自分の好みを見つけてみては
いかがでしょうか。

「梅酒」づくりで気をつけなければならない、酒税法のルール。

「梅酒」づくりに欠かせない密閉式広口瓶。

「梅酒」をつくる際に必要なものは、
梅とお酒、砂糖以外にも、あらかじめ
準備しておくものがあります。

まずは、「梅酒」を漬け込むための
密閉式の広口瓶。

漬ける梅の約4倍の大きさを目安にすると良いでしょう。

1kgの青梅だと4ℓ瓶が妥当な大きさです。

また、2kgの青梅だと
8ℓ瓶と考えがちですが、
青梅を1kgずつ分け、
2つの4ℓ瓶を用意するのが
好ましいところ。

というのも、持ち運びや
飲む際のことを考慮すると
4ℓ瓶がもっとも取り扱いが
容易なサイズということです。

「梅酒」の瓶は、
“吊り手のついた
ガラス製の密閉式の広口瓶”
を選ぶこと。

つまり、持ち運びに便利な
“吊り手つき
(金具つきの場合は
錆びにくいステンレス製)”
で、空気を通さない
“密閉式のガラス製”で、
“洗いやすく、消毒がしやすい”
広口瓶が理想的ということです。

「梅酒」シーズンともなると、
大型スーパーや
ホームセンター等の店頭に、
「梅酒コーナー」が設けられ、
吊り手がついた“果実酒瓶”が
大量に並んでいることが多いので、
容易に入手できると思います。

また、おしゃれな薄い緑色や青色、
無色のソーダガラス密閉瓶などで、
見て楽しむ「梅酒」づくりも
意外と人気なのですが、
直射日光は必ず避けてください。

プラスチック製の果実酒瓶
もありますが、空気を通すため
長期保存には不向き。

ただ、ガラス製の瓶にくらべると
軽量で持ち運びが容易
というメリットもあります。

「梅酒」づくりの瓶が決まったら、
必ず直前に行わなければ
ならないのが、瓶の消毒。

これを怠ると
雑菌が繁殖する恐れが高まり、
梅の風味を損なう要因
にもなりかねません。

できれば煮沸消毒が
好ましいのですが、
一般的な家庭には
大きなガラス瓶を入れ込む
大きな鍋はないので、
梅を漬け込む数日前に、
台所用洗剤でしっかりと洗い、
水気を拭きとってから天日干しを。

完全に乾いてから、
除菌アルコールで消毒すれば、
準備は完了です。

 

アルコール分20%未満のお酒で仕込むと、酒税法違反になるのでご注意を。

ここで大切なポイントがひとつ。

アルコール度数が20%未満のお酒で
「梅酒」を仕込むと、
酒税法に違反することになるので
注意が必要です。

これは漬け込む過程で醗酵によって
アルコール度数が1%以上
あがる可能性があるため、
密造酒の醸造行為
とみなされるからです。

1962年(昭和37年)に
酒税法が改正されるまで、
一般家庭で「梅酒」をつくること
そのものが酒税法違反行為
だったにも関わらず、
当たり前のように各家庭で
「梅酒」がつくられていました。

そのため、現実にそぐわない
法律の改正という意味合いで
“酒税法の例外規定”
が盛り込まれた
酒税法改正が行われ、
現在に至っています。

この“酒税法の例外規定”
を要約すると、

“すでに酒税が納付された
アルコール度数が20%以上の
酒類(蒸留酒)を使用。
醸造酒を使用する場合は
国税庁の許可が必要”

“糖類、梅などの混和を許可
(米や麦、あわなどの穀物、
麹、ぶどうは不認可)”

“新たにアルコール分
1%以上の醗酵がないもの”

という条件のもとで、
自分もしくは同居する家族が
飲む場合にだけに許可が
与えられているということ。

もちろん、仕込み終わった
「梅酒」を人に譲渡するのも
違法行為です。

以前、テレビ番組で
日本酒やみりんを用いた
「梅酒」づくりが紹介され、
のちに酒税違反行為を謝罪した
事例がいくつもありました。

また、ワインに果実を漬け込んだ
“サングリア”を自宅でつくることも
酒税法違反行為となります。

こうした酒税法の
例外規定を受けた上で、
梅を漬け込むお酒のセレクトですが、
最初のチャレンジの方は、
アルコール分35%の
“ホワイトリカー(甲類焼酎)”
が無難。

というのも、

“無味無臭に近く、
コクや風味がない分、
果実の風味が生かされる”

“アルコール度数が高く、
殺菌効果が見込めるため、
果実の腐敗を防いで
長期保存が見込める”

という二つの長所があるからです。

また多くの人が
「梅酒」づくりに利用する、
もっともポピュラーなお酒なので、
製造工程でつまずいた際に、
ネット検索すれば、その解決策に
たどり着きやすいというのも、
大きな利点のひとつといえます。

このほかの酒類としては、
強いアルコール感をお望みなら
“ウォッカ”や“ジン”、“ラム”は
スイーツのような甘い香り、
まろやかな梅の甘味を堪能するなら
“ブランデー”と、
もともとのお酒が持つ香りや
コクを纏った「梅酒」の
味わいの変化を
楽しむ方も多いようです。

梅を漬け込んでから
早くて約3カ月、
深いコクがある
飲み頃になるまで約6カ月。

美味しい「梅酒」を
飲めるまでには、
あとしばらくかかりそうです。

ここは、菊正宗の
「古城梅酒 原酒
(ごじろうめしゅ)」で、
ひと足お先に「梅酒」を堪能。

優しい甘みと甘酸っぱい
梅のエキスが醸し出す
まろやかな味わいを
お楽しみください。

今年は、「梅酒」づくりにチャレンジして見ませんか。

三重県いなべ市農業公園

“○○梅”と名前のつく梅の品種が、年中多彩。

今年の桜は平年よりもかなり早く、
1953年(昭和28年)の
桜の開花観測の統計開始以来、
観測史上もっとも早い
開花を記録した地域も続出。

3月11日に広島での開花を皮切りに、
翌日以降、福岡、長崎、松江、東京
と続きました。

この早い開花ペースは、
年末から1月前半にかけて
度々訪れた強い寒気の影響で、
桜の開花を促す花芽の休眠打破が
しっかり行われたことと、
1月後半あたりからの
高温傾向により、
つぼみの生長が促された
と考えられます。

まだ4月初旬時点で開花していない
東北北部地域から北海道にかけても、
例年にない早めの桜が
楽しめそうです。

桜満開のこの時期ですが、
梅の話題をひとつ。

梅の花の見頃は、品種によって
咲く時期に差がありますが、
2月中旬から3月上旬には
多くの品種が咲き誇ります。

その後、木に実った青梅の収穫と
販売時期はほぼ同じ。

収穫後すぐに選定の後、
市場へと出荷されます。

早いものは5月中旬頃から
市場に出回りはじめ、
6月に最盛期を迎え、
7月を過ぎたあたりで
そのシーズンを終えます。

ちょうどこの時期の雨によって
梅の実が熟しはじめることから、
“梅”の字をあてて
“梅雨”と呼ぶようになりました。

この時期の青梅を使って
「梅酒」をつくられるご家庭も
多いと思いますが、
「梅酒」を漬け込む時期も、
やはり収穫、販売と同じタイミング。

というのも、青梅を常温で
数日置いているだけで
黄色く熟しはじめるからです。

そして飲み頃はというと、
さっぱりとした梅酒ならば
約3カ月後、
コクのある深い味わいを
楽しみたいのであれば、
熟成しはじめる半年から1年ものが
オススメといえます。

俳句の季語を見てみると、
梅の花見は初春の2月中頃、
青梅は仲夏の6月、
梅酒は晩夏の7月の季語です。

これ以外にも、1年を通して
梅の品種や梅を使った味覚など、
盛りだくさん。

  • 1月
    • 臘梅
      (ろうばい/中国原産の落葉樹で、
      12月から翌2月にかけて
      半透明でにぶいツヤのある
      黄色く香り高い花を咲かせる)
    • 早梅(そうばい/早咲きの梅)
  • 5月
    • 利休梅(りきゅうばい/
      千利休の命日に咲くとされる
      中国原産の落葉樹)
  • 6月
    • 小梅(こうめ/
      実が小振りな梅の品種)、
      5・6・7月は梅干し
  • 9月
    • 八朔梅(はっさくばい/
      旧暦の八朔(8月1日・新暦9月)
      の頃に咲きはじめる)
  • 12月
    • 冬至梅(とうじばい/
      白い一重咲きの早咲き品種。
      お正月用の梅として重宝される)

奈良時代の花見は梅が主流で、
江戸時代も通が行う花見は、
もっぱら梅見だったようです。

日本人の心を癒す花として
桜は欠かすことはできませんが、
梅もまた私たちの生活の中に
溶け込んでいます。

失敗しない「梅酒」づくり。材料の分量配分がポイント。

桜と比べて、普段、
注目を浴びる機会の少ない梅は
魅力溢れる
日本が誇る植物のひとつです。

それを再認識していただくためにも、
6月からはじまる「梅酒」づくりに
失敗しないためのポイントを、
コラムで数回取り上げたいと
思います。

今回は、用意する材料についての
紹介から。

材料の分量配分は、
各ご家庭や地域によってさまざま。

一般的に多く見られるのが、
“梅1kg:ホワイトリカー
(焼酎/35%)1.8ℓ:砂糖1kg”
という分量配分で、
これが一番失敗しない比率
だといわれています。

ただし、この比率だと、
結構甘い仕上がりになるので、
甘いのが苦手な方は、
砂糖の分量を減らす
調整が必要です。

最低でも500gは入れないと
梅のエキスが十分に抽出されず、
酸っぱさばかりが際立つことに
なるのでご注意を。

また、家庭で漬け込んだ「梅酒」を
長期保存する場合に、
直射日光を絶対に避けるということ
に気をつけてください。

というのも、
外気温以上の温度変化を
「梅酒」に与えてしまうこと
になるからです。

保存にあたっては、一般的に
冷暗所での保管管理というのが
定説となっていますが、
外気温と同じ常温で、
自然の移り変わりとともに
熟成させるという考え方もあり、
それも理に適った保存管理の方法
といわれています。

年数を重ねるごとに、
熟成が進むとともに
保存管理が難しくなるため、
遅くとも2から3年で飲み切ること
が賢明のようです。

「梅酒」づくりのシーズンが
訪れるまで、あと2カ月ほど。

来週から「梅酒」用のお酒や
青梅の種類や選び方、
道具の準備などを紹介する予定です。
お見逃しなく。

漬け込んだ「梅酒」の飲み頃は、どのタイミング?

「梅酒」の飲み頃と梅の実を取り出すタイミング。
6月のシーズンに漬け込んだ「梅酒」が飲めるのは、早くて約3カ月後。ちょうどいい飲み頃になりはじめるのは約6カ月頃からです。2〜3年間は熟成が進んでまろやかな味わいを楽しめますが、それを過ぎたあたりから管理が難しくなるので、3年くらいで飲み切るのが無難。とはいえ、たまたま保管場所が「梅酒」の熟成にマッチした環境の場合もあり、10年物の「梅酒」を飲んでいる方も多く、なかには30年代物というヴィンテージレベルの逸品もちらほら。基本的に「梅酒」はアルコール類なので、賞味期限はなく、基本的に腐りません。しかし、仕込みに失敗していたり、保存状態が悪かったり、雑菌が紛れ込んだりすることで、時間経過とともにツンと酸っぱい臭いがしたり、液面にカビが浮いてくる場合があります。残念ながら、これは腐敗しているので、必ず廃棄してください。
何れにせよ、漬け込んだ梅の実は、種の苦味が出たり、実が崩れて濁らせる原因になったりするため、1年ほどで取り出すのが基本です。取り出した梅の実は、種を取り除いて細かく刻み、鍋で加熱しながら甘みを調整すれば“梅ジャム”、寒天で固めて“梅の寒天ゼリー”、魚と一緒に煮て“煮魚の臭みとり”など、いろいろな使い方があります。もちろん、そのまま食べても熟成した美味しさを楽しめること間違いなしです。

「梅酒」レシピを応用して…お楽しみは、幅広く。
「梅酒」づくりの応用で、アルコールを含まない「梅シロップ」が簡単につくれるのをご存知ですか。「梅酒」をつくった時と同じ分量で同じ工程で作業を進め、最後の“ホワイトリカー”を入れずに準備は完了。人によっては、梅と氷砂糖を瓶に入れる際、梅にフォークで数カ所穴を開けて梅のエキスが出やすくする方もおられるようです。冷暗所に保管しつつ、1日に2〜3回ずつ瓶を傾けながら、梅全体に溶けはじめた砂糖の蜜が行きわたるように回しがけするのがポイント。2週間ほど経って梅シロップが抽出されてきたら混ぜる作業は終わり。あとは冷暗所で味を馴染ませ、ほのかに色が着きはじめた1カ月半から2カ月後に梅の実を取り出します。小分けにして冷蔵庫に入れておくと1年ほどは保存可能。常温保存の場合は、2〜3カ月で使い切るようにしてください。できあがった「梅シロップ」は、“梅ゼリー”や“梅のシャーベット”など、美味しいスイーツづくりに楽しめます。
さらに、「梅酒」づくりのレシピで、果実酒づくりに挑戦する方も多いようです。基本となるレシピは“ホワイトリカー”1.8ℓと密閉式の広口ガラス瓶4ℓ瓶の組み合わせに、季節の果物とそれに応じた氷砂糖の分量を加えてつくります。果物の下ごしらえは「梅酒」と同じように丁寧に水で洗い、ヘタを取り除いた後、乾かしてから漬け込んでください。果物は熟し過ぎていない新鮮なものを選んで、漬け込む果物の糖度に応じて氷砂糖の分量で調整。
●いちご酒/いちご1kg(4パックほど)+氷砂糖約300g
●キウイ酒/キウイ1kg(7〜8個)+氷砂糖約300g
●さくらんぼ酒/さくらんぼ1kg+氷砂糖約300g
氷砂糖の分量は目安です。お好みでレモンの輪切りを数個分入れると、変色を防いでくれます。
このほか、レモンやリンゴ、ゆず、カリンなど、さまざまな果物でつくれるので、お好みのものを選んでください。

ここまで、数回にわたって「梅酒」についてご紹介してきましたが、“漬けた梅の実は取り出さない方が、梅酒のコクや香り、風味ともに増す”“甘いのは苦手なので、氷砂糖の分量は600g”“熟して黄色くなりかけた梅の実を漬ける”など、ご意見はさまざま。つまり、イメージする「梅酒」の味が人それぞれで、一部でいわれる“梅酒づくりにレシピなし”ということなのかも知れません。