生活に大きな恩恵をもたらした柿の効能は、ある意味、万能です。

多岐にわたる渋柿の利用用途。
はるか昔から
庶民のくらしを支えていました。

渋柿の“柿渋”が、
平安の昔から現在に至るまで
数多くの用途に利用され、
社会や生活を陰ながら支えてきた
一部を、前のコラムで紹介しました。

そうした産業面での
柿渋の用途について、
少し詳しくひも解いてみましょう。

平安から脈々と利用されてきた柿渋は
、江戸時代に隆盛を極め、
江戸の町には、柿渋を売る
「渋屋」が何軒も軒を並べる、
いわば“柿渋通り”
のようなものが存在。

当時は、一部の寒冷地を除いて
日本全国に柿渋の生産地があり、
岐阜の美濃渋、京都の山城渋、
岡山の備後渋が“日本三大渋”
と呼ばれていました。

それから時代は流れ、
第二次世界大戦後になって、
数多くの石油化学製品の登場
に伴って、柿渋の需要が減り、
その多くが衰退。

現在は、京都の山城地区で
集中して生産されています。

柿渋は、春先の実が青くて
渋が多い時期に搾り、
自然発酵させ、
発酵後約2〜3ヵ月ほどで
熟成渋の成分だけを
抽出するのが基本です。

現在は、柿渋抽出の研究も進み、
酵母菌による発酵や
アルカリ系物質との化学変化、
発酵させない方法などにより、
無臭の柿渋がつくられるように
なりました。

そんな柿渋の主な役割は、
防虫、防腐、防水、薬など、
利用目的は多岐に渡ります。

昔から庶民の服を染める
染料をはじめ、
木材に塗って防水、
腐食の防止に利用。

現在でも建築資材に塗布して
シックハウス症候群対策として
使われています。

また補強材として漆器の下地塗り、
腰のある強度、防水目的で
和紙に塗って番傘や団扇に使用。

昔は多くの家で
柿渋をつくる習慣があり、
建具、木や竹の籠、
和紙を貼った木製籠、
漬物樽やタライ桶、
縄灰と混ぜて家の外壁塗装など、
生活の中にあるさまざまな道具の
防虫、防腐、防水、補強目的に
使われ、江戸の庶民のくらしを
支えてきました。

さらに、強度、防水用として
漁師の魚網や釣り糸に塗布。

海運業でも、木造船の船体に塗り、
防水、防腐、補強の
役割を担っていました。

日本酒の清澄剤(せいちょうざい)
にも柿渋が利用されていることは
以前にお伝えした通り。

最近では、携帯電話やスマホの基盤に
使用されている金を回収する際に、
金に柿渋を吸着させて回収する
研究も進められています。

また、
未来に向けた国際的な取組である
SDGs(持続可能な開発目標)
の観点から、柿渋を利用した
染料や漁船の船底塗料、
身近なところではレジ袋の代わり
となる紙袋の補強材など研究が
推し進められているとのこと。

時を経て、新型コロナウイルスや
ノロウイルスなど細菌に対する
不活性化効果があることが
発表されたこともあって、また再び、
自然由来の柿渋への注目が
集まっています。

 

“柿タンニン”の高い効果に加え、柿そのものの栄養価もかなり高い逸材です。

柿渋が身体にもたらす効果のひとつに
“収れん作用”があります。

これはタンパク質を変形させること
で細胞組織や血管を縮める作用で、
渋みを伴うことから、
アストリンゼント効果
とも呼ばれています。

“収れん作用”は
止血、鎮痛、炎症の抑止、防腐
などの効果があり、
化粧品や医薬品に用いられています。

また、ポリフェノールをはじめ、
タンニンやカテキン、
フラボノイド、カロテンなどの
さまざまな抗酸化物含有量は
柿渋100g中に3500mgと豊富。

緑茶230mg、赤ワイン300mgと
比較すると、10倍以上も
含有されていることになります。

そのためポリフェノールによる
悪玉活性酸素の作用を
抑える働きをはじめ、
タンニンによる
ウイルスや菌の増殖を抑える働き、
カテキンによる脂肪燃焼効果や
血中コレステロールを
低下させる働き、
血圧・血糖値上昇を
抑制する働きなど、
健康面への期待が高まる素材
といえます。

柿の果肉そのものにも
ビタミンAとCが豊富で、そのほか
カリウム、βカロテン、リコピンなど
の多くの栄養素を含んでいます。

柿のヘタはしゃっくり止め
などの漢方薬として利用。

さらに、柿の若葉には
ビタミンCをはじめ、
ビタミンKやB群、柿タンニンなどの
ミネラル分フラボノイドなどを
多く含み、血管を強くしたり、
止血作用があるとされ
“柿葉茶”など、民間療法として
古くから用いられてきました。

柿の葉に含まれるビタミンCは、
みかんの約30倍
にものぼるといいます。

また、殺菌効果を利用した
柿の葉寿司は有名です。

秋の味覚程度の認識しかなかった
柿について、調べれば調べるほど
その効果効能の幅広さや
長い歴史を支えてきた役割に
驚くばかりです。

柿の甘さは、渋柿にあり。ブランド品種の多さが、その需要を物語る。

柿の人気ブランドは甘柿の“富有”ですが、それに続くのは渋柿ブランド柿。

柿の年間の国内収穫量は
約22万5000トン
(出荷量約18万6000トン)、
輸入は
ニュージーランドの約7.5トンと
アメリカの約6.9トンだけなので、
ほぼ100%に近い国内自給率を誇る
果物のひとつに挙げられます。

ちなみに、主要生産国トップは中国で
、年間生産量約393万トン、
世界全体に占める年間生産量の割合は
約73%にものぼり、
日本とは桁違いの生産量に
驚きを隠せません。

柿の食べ頃ですが、一般的に、
柿の旬は10月から11月頃がピーク。

早生種なら9月半ば、
晩生品種は12月末頃まで
店頭に並びます。

人気品種ともなると、
収穫後に冷蔵保存され、
翌年2月頃まで
店頭に並ぶこともあるようです。

ただし、これは甘柿の場合で、
渋柿はそれより1ヵ月ほど前の
タイミングとなります。

柿は、甘柿と渋柿に大きく
分かれますが、詳しくは、
“完全甘柿”“完全渋柿”のほか、
種子が多くできると甘くなる
“不完全甘柿”、
種子の周りだけ甘く全体的に渋い
“不完全甘柿”と大きく4つに分類。

その4つの分類がさらに、
種の有無や早生晩生などの
特徴を持つブランド品種へと
細分化されます。

もっとも多くつくられているのが
“富有(ふゆう/甘柿)”で
柿全体の約25%を占めている
有名なブランド柿で
西日本を中心に栽培されています。

2位が“平核無(ひらたねなし/渋柿)”
で約17%。

“庄内柿”“紀の川柿”“おけさ柿”などと
地方によって呼び名が変わり、
炭酸ガスなどによって
柿渋を抜いて出荷されます。

3位は“刀根早生(とねわせ/渋柿)”で
約15%。

4位が甲州百目
(こうしゅうひゃくめ/不完全渋柿)
で生産量はグンと下がって約6%。

“蜂屋柿”“富士柿”“代白柿”“江戸柿”など、

その土地土地で名前が付けられています。

釣り鐘状のカタチをしているのが特徴です。

5位は“松本早生富有
(まつもとわせふゆう/甘柿)”。

名前の通り“富有”よりも
1〜2週間ほど成熟の早い甘柿。

渋みが非常に強いため
ほとんどが干し柿にされる
“市田(いちだ/渋柿)”、
“富有”と甘柿の双璧を成す
“早生系次郎(わせけいじろう/甘柿)”
“次郎(じろう/甘柿)”と続きます。

“富有はあごで食べ、
次郎は歯で食べ、
たねなしは舌で食べる”
といわれることがあります。

これは、“富有柿”は果肉が軟らかく、
“次郎柿”はやや硬めの果肉、
“平核無”はねっとりとした食感
をしている特徴を表した表現。

また、よく耳にする“あんぽ柿”は、
“蜂屋柿”“平核無”などの渋柿を
硫黄で燻蒸して乾燥させる
独特の方法でつくられた
福島県発祥の“干し柿”です。

 

渋抜きをした渋柿の糖度は、驚きの50度前後で甘柿の糖度を軽くしのぐ。

生産量トップこそ
甘柿の“富有”ですが、生つまり、
渋柿の需要が高いようです。

多くの渋柿は、
渋柿のエグい渋みを取ってから
の出荷となり、手間がかかりますが、
それを上回る美味さが
渋柿の魅力ということになります。

渋柿の渋みは、
どの柿にも含まれている
柿タンニンによるもので、
含まれる柿タンニンの量は
甘柿とあまり変わりません。

甘柿にも
柿タンニンは含まれますが、
熟成によって柿タンニンが
水に溶けなくなり、
渋みを感じることはありません。

一方、渋柿は熟成をしても
柿タンニンが水に溶け出し、
渋みが残ります。

渋柿は、その品種に適した方法で
渋抜きを行うことによって、
甘くなります。

代表的なものは乾燥させることで
渋を抜く“干し柿”が有名。

このほか、アルコールに漬けたり、
湯に浸けたり、
炭酸ガスで脱渋を行う方法、
なかにはりんごと
一緒の容器に入れて1週間ほど置く
渋抜き方法もあります。

また、意外な話ですが、
渋柿を天日干しにした
“干し柿”の糖度は50度前後
というから驚きです。

甘柿の糖度は16度前後で、
渋柿の渋みに
隠れている糖度は20度前後と、
もともとの糖度は渋柿の方が高く、
これを干すことで
水分と一緒に渋みが抜けて
糖度が50度にもなるのです。

甘柿を干しても
渋柿ほどの糖度は得られない
というから不思議です。

素人考えで、
渋柿より甘柿の方が甘い
と思っていましたが、
事実は異なったようです。

そして何より、
科学的な根拠もないなかで、
渋柿の渋みに果敢に挑んで
その渋さを克服し、
その先にある甘味を発見した
先人たちの努力は
計り知れない偉業といえます。

私たちの文化は、
こうした名もない方々の
努力の積み重ねで成り立っている
ような気がします。

次も柿に関するコラムを紹介します。

新型コロナに有効な検証結果を得た「柿渋」。期待は高まります。

「柿渋タンニン」が、新型コロナウイルス研究への新しい扉を開く。

“柿渋が新型コロナに有効”
というニュースが、
全国に流れたのは
9月半ばのことでした。

発表したのは
奈良県立医科大学の
研究グループで、
“新型コロナウイルスと唾液”と
“新型コロナウイルスと
唾液に柿渋を加えたもの”の
比較実験を行った結果、
柿から抽出した
高純度の柿タンニンによって
新型コロナウイルスを
1万分の1に不活性化(無害化)
できる検証結果が
得られたというものです。

奈良県立医科大学では、
長年にわたって
柿渋の主成分である
ポリフェノール“柿タンニン”の
抗菌作用、抗炎症作用についての
研究を行っており、
インフルエンザやノロウイルス
に対して抗ウイルス効果がある
という実証結果を得ていました。

そして、新型コロナウイルス
に対しても効果が得られる
との仮説をたて、
まさにそれが今回、
ハッキリと実証された
といえるでしょう。

ただし、今回の結果は、
あくまで第一段階の基礎研究で、
人を対象とした臨床研究とは
性質が異なります。

次のステップとして
飴やラムネ等に混ぜるなどして、
適切な柿渋濃度や
口内での摂取時間を考慮した
人対象の臨床研究が必要とのこと。

また、ただ単に
柿渋が入っていれば良い、
柿を食べれば効果が得られるという
新型コロナウイルスに対する
特効薬的なもの
という訳ではありません。

まだ研究段階とはいえ、柿タンニンが
新型コロナウイルスに対抗する
新しい手がかりとなるのは、
まぎれもない事実。

感染予防という観点で、
柿渋と他の技術との
複合的な組み合わせなどによる、
新たな発見に期待したいものです。

 

「柿渋」は、昔から日本酒醸造に欠かせない素材。

柿は、秋から冬にかけて
旬を迎えます。

新鮮な果物として、
もしくは干し柿にして食べる
というのが、一般的な認識です。

それゆえ、
“新型コロナウイルスに効果がある”
といわれても、
いまいちピンと来ないのは
不思議なことではありません。

“果物として食べるのなら
甘い柿の品種だけで良い。
わざわざ渋柿を収穫する
意味はないのでは?”というのも、
私たちが抱く疑問のひとつ。

そんな考えを一気に払拭したのが、
今回の
“新型コロナウイルスに柿渋が効く”
という発表で、
柿に対する印象を大きく変えた
キッカケといえます。

実は、柿渋の利用は古く、
縄文や弥生時代の遺跡として
発掘されているほど、
時代をさかのぼります。

また平安時代には
即身仏の腐敗を防ぐために塗布したり
、漆器の下塗りに使ったり、
下級武士の衣装の染色などに
使われていたなどという記録が
当時の文献に残存。

それ以降も鎌倉、室町、安土桃山、
江戸と、時を重ねるごとに
柿渋の用途は大きく広がり、
とくに江戸時代には
柿渋を取り扱う店が軒を並べ、
りっぱな流通商品として、
その存在を確立していました。

ところが、近代日本の幕開け
となった明治を迎え、
欧米からの科学的な学術研究と一緒に
化学合成品などが一気に流入。

日本でも独自の研究が
盛んに行われるようになり、
新しい技術や素材の開発によって、
柿渋の需要が減っています。

残念ながら現在、
柿渋を取り扱う業者は
数えるほどしか残っていません。

さて、歴史の中で、社会文化や生活を
陰ながら支えてきた柿渋は、
日本酒醸造においても、
かなり重要な役割を担っていました。

江戸時代の日本酒の醸造工程で、
柿渋で染めた木綿や麻の袋が
醪(もろみ)を搾る際に
使用されていました。

また、毎年、杜氏の仕事始めは
酒袋を柿渋で染めることから
スタートし、この作業を
繰り返し行っていたため、
酒袋は茶褐色の風合いが
増して行ったといいます。

この濃い茶褐色になった酒袋は、
現在、菊正宗酒造記念館の
各コーナー展示のタイトル表示として
使われているので、
ご来館の機会があれば、
一度ご覧ください。

現在の酒造りは機械化が進み、
酒袋を使う機会はありませんが、
自然由来の清澄剤(せいちょうざい)
として日本酒の澱(おり)を
取り除く際に使われています。

計り知れない柿や柿渋の効能は、
私たちの文化発展に
多大な貢献を与えてくれたようです。

次回コラムでは、
引き続き万能果実である柿について、
詳しくひも解いていきます。

どこでも見かける街路樹「イチョウ」の、希有な秘密。

もっとも多い街路樹「イチョウ」が、絶滅危惧種という不思議。

秋の足音とともに、
ケヤキ、イチョウ、ポプラなどの
街路樹が黄や赤に
色づきはじめました。

必ずではありませんが、
街路樹として植栽されている
その多くが、落葉樹なのです。

秋から冬にかけての
落ち葉掃除の手間などを考えると、
常緑樹の方が好ましいと思いますが、
落葉樹を植栽するのには、
それなりの理由があるようです。

夏は、青々と生い茂った葉が
木陰をつくり、
夏の直射日光を遮るとともに、
樹木が持つ余分な水分を
葉の裏側の気孔から
蒸散する働きにより、
涼感を肌に感じることができるのは、
街路樹全般にいえることです。

冬になると、落葉樹の葉は枯れ落ち、
冬のやわらかい陽射しを遮ることなく
届けてくれます。

そして何より季節感を感じる
景観演出が、
落葉樹の大きな魅力です。

春を感じさせる新緑は
夏の暑さでより濃い緑へと変わり、
秋の訪れとともに黄赤に色づき落葉、
そして冬の寒空へと伸びる枝は、
春の訪れを告げるかのように
芽吹きはじめる…
繰り返し四季折々の景色を
風情豊かに感じさせてくれます。

街路樹や公園に植栽されている
樹木の植栽数ランキングは、
イチョウが断トツ1位。

続いて桜が2位、
ケヤキが3位、
ハナミズキが4位、
トウカエデが5位
と続きます。

日本の風景にもっとも
融け込んでいるイチョウですが、
意外なことに
IUCN(国際自然保護連合)の
レッドリストに
“野生絶滅危惧種”として
登録されています。

これは、
世界中のすべてのイチョウが、
人の手を介した栽培種で、
野生種は中国の山脈で確認された
わずかな数のみということです。

恐竜が闊歩した
約1億5000万年前のジュラ紀は、
地球上に多種の植物が
繁茂した時期で、
その時代の植物でイチョウだけが
氷河期を生き延びて現存し、
それ以外はすべて化石で発見。

そのため、ダーウィンは、
イチョウを“生きた化石”
と呼んでいました。

一般的に私たちが知っている
植物の概念は、ひとつの株に
雄と雌の機能を併せ持つ
“雌雄同株”で、
植物全体の約70%を
占めています。

一方、イチョウは、
雄の木、雌の木が明確に別れた
“雌雄異株”という
珍しい特徴があり、
同じ“性”の特徴を持つものに
アオキ、キウイ、ヤマモモ
などがあります。

驚くことに、植物の研究では
原始種のイチョウの特徴である
“雌雄異株”が、
これから植物が進む
“進化の方向”
とされているということ。

植物の進化は複雑で、
なんとも不思議なお話です。

 

秋の味覚「銀杏」を拾いに、街に繰り出そう。

冬間近の晩秋になると
イチョウの木の下には
白い粉を吹いたオレンジ色の実が、
落ち葉と一緒に道に散乱します。

この実の中にある種が「銀杏」です。

ただ、この「銀杏」を包みこむ果肉、
ご存知の方も多いと思いますが、
強烈な異臭を放つため、
住民から苦情も多いようで、
植栽管理者による
植え替えも少なくないとのこと。

ならば、実がなる雌株を植えなければ
いいのではと思いがちですが、
これまではある程度成長しないと
雄雌の区別がつかないという
難点がありました
(現在、遺伝子解析によって、
早期の雌雄判定は可能です)。

せっかくの秋の食材「銀杏」が
気軽に手に入るこの時期、
秋の行楽のひとつとして
“銀杏拾い”はいかがですか。

「銀杏」のまわりの
果肉の悪臭もさることながら、
素手で触れるとかぶれや炎症を
起こすこともあるので、
注意が必要。

“銀杏拾い”に、
ゴム手袋は必須アイテムです。

さて、拾ってきた実は、臭いがキツく
家の中での作業には不向きなので、
屋外で水に浸します。

軟らかい実は簡単にほぐれますが、
硬い実はしばらく水に浸けた後、
袋などにまとめて
軽く踏み潰すのが簡単です。

この作業のポイントは、
「銀杏」の周りに着いた果肉を
丁寧に取り除き、
何度も水洗いをして、
臭いを流すこと。

キレイになった「銀杏」は
数日天日干しをして、
カビがこないように
風通しの良いところで
保存してください。

大量に拾った時は、秋のお便りとして
ご近所に配られてはいかがでしょうか。

「銀杏」を手軽に食べるなら、
紙袋に入れて塩を振り掛け、
シャカシャカ振って、
電子レンジで2〜3分加熱するだけで、
美味しくいただけます。

「銀杏」は、ビタミンCをはじめ、
カリウム、マグネシウム、鉄、
ミネラルなどを多く含む
栄養価の高い食材ですが、
メチルビリドキシンという
中毒物質が含まれているため、
食べ過ぎには注意を。

中毒症状は、体調や体質による
個体差が大きいので
一概にはいえませんが、
大人が食べる目安は、
1日約30個前後。

とくに子どもに与える場合の目安は
年の数より少なめに。


栗と日本酒の共通点…ご存知ですか。

秋を代表する、旬の味覚「栗」。

今年の8月、
は1946年(昭和21年)の
統計開始以降、
歴史的な猛暑を記録したばかりか、
降水量ももっとも少雨を記録。

さらに9月を迎えても
厳しい残暑が続き、
10月になってようやく
暑さが癒えて涼しくなり、
秋らしい気配を
感じるようになってきました。

スーパーの店頭には、
旬を迎えた山の幸、海の幸が
所狭しと並び、ついつい
“食欲の秋”を意識せざるを得ません。

そんな秋の味覚の
代表格のひとつに栗があります。

店頭では、ほかの野菜と同じように
“○○産”などと産地表示されて
いますが、大きな分類としては、
原産国によって4つに区分できます。

一般的に店頭に並んでいるものの
多くは“日本栗”で、
“和栗”とも呼ばれます。

日本原産の野生の芝栗を
品種改良したもので、
実が大きく風味が良好。

上品な甘さで、和食の味付けに
合った味わいといえます。

また“日本栗”の表層の鬼皮は硬く、
さらに中の実は剥きにくい
渋皮に包まれています。

次に天津甘栗で有名な“中国栗”。

甘くて渋皮も剥きやすいのですが、
実が小さく、栗の害虫クリタマバチの
被害を受けやすく、
日本では栽培されていません。

続いて、マロングラッセなどに
使われている“ヨーロッパ栗”。

小振りで渋皮が剥きやすいのが特徴。

この品種も害虫被害に
見舞われやすいため
日本での栽培はありません。

そして最後に “アメリカ栗”。

この品種は20世紀初頭に発生した
栗胴枯れ病の被害でほぼ壊滅。

現在、アメリカの一部の地域で
栽培されていますが、病害に弱く、
日本での栽培はできません。

また、スーパーの店頭で見かける
韓国産の多くは、
栗剥き作業の拠点を韓国に移す際に
“日本栗”の苗木が韓国に移植され、
それが広まったもの。

現在、韓国産 “日本栗”の出荷量は、
日本の約3倍ともいわれています。

“日本栗”の歴史はかなり古く、
約5000年前の縄文時代の遺跡
“三内丸山遺跡(青森)”から出土。

平安初期には
京都丹波地方で栽培されはじめ、
やがて栽培地域は全国へと
拡大していきました。

安定栽培されていた“日本栗”ですが、
1941年(昭和16年)前後に
中国から持ち込まれた
栗の害虫クリタマバチによる被害で
大きな打撃を受けることに。

それを元に、クリタマバチに対する
抵抗性の高い品種改良が進み、
いくつかの交配品種が生まれました。

有名な品種は“銀寄(ぎんよせ)”で、
有名ブランド「丹波栗」がその代表格。

兵庫県・大阪府を中心に
栽培されており、
ちょうど10月が旬です。

このほか、もっとも広範囲で
栽培されている“筑波”、
夏の終わり頃から
出回りはじめる早生種“丹沢”、
逆にこれから
出回りはじめる晩生種“石鎚”、
“日本栗”と“中国栗”の
良い特長を併せ持つ
一代交配種“利平”…
そして最近は、
渋皮が簡単に剥けると話題の
“ぽろたん”など、
数多くの交配品種が生まれています。

さて、タイトルの
“栗と日本酒の共通点”ですが、
それは“香り”です。

“日本酒って、栗の香りがしたっけ?”
とお思いでしょうが、
“栗の香”は日本酒造りに
欠かせない香りなのです。

 

日本酒の醸造工程に欠かせない「栗香」。

一般的に、
日本酒のラベルの原材料名には、
純米酒には“米”“米麹”と表記され、
吟醸酒や普通酒は、
これに“醸造用アルコール”が
追記されているのみ。

つまり、山田錦などに代表される
酒米(酒造好適米)、
厳格に管理されている米麹、
さらには表記規定のない
酒造りに適した“水”によって、
旨い日本酒は造られています。

一般的な食品に使われる
着色料、甘味料、香料、保存料などは、
一切使用されていません。

だからこそ、
厳格な温度管理や醗酵時間管理が
とても重要です。

もともと、日本酒の原材料となる米には
糖分が含まれていないため、
麹の酵素によって
“糖化
(米のでんぷん質をブドウ糖に変える)”し、
酵母によって
“アルコール発酵
(ブドウ糖をアルコールに変える)”を
行っています。

この2つの反応を微生物の力を借りて、
同時に同じタンク内で行う
“並行複醗酵”という
世界でも類を見ない
高度で複雑な醸造技術こそが
日本酒の真骨頂といえます。

こうした複雑な工程の中で、
蒸米後に、種麹を蒸米に振りかけ
麹菌を繁殖させる米麹をつくる
“製麹(せいぎく)”の際の工程の
進み具合を判断する基準が、
温度であり、“香り”です。

まず、製麹の最初の“蒸米香”が消え、
種麹の“もやし香”に包まれます。

そして、温度管理を行いながら、
1日半ほどかけて揉み込んだり、
ほぐす中、やがて香りはじめるのが
良い麹の証ともいえる「栗香」です。

焼き栗のような香りで、
この香りと麹の状態を判断基準に、
蒸米、米麹、水を加えて
酵母を培養する
次の“酒母づくり”の工程へと
進みます。

「栗香」は日本酒造りに
欠かすことのできない
大切な香りなんです。

急激に訪れた肌寒い秋。

グッと冷え込んだ夜は、
“栗ごぼうの味噌煮”
“鶏肉と栗の煮込み”
“栗の豚肉巻き”など、
旬の味覚を肴に熱燗を一杯。

締めに“キノコたっぷり栗ご飯”で、
秋を味わってみるのは
いかがでしょうか。