俳句で覚えている、今が旬の「初鰹」。淡麗辛口の日本酒と相性ばっちり。

“俳句”“川柳”は、日本が誇る短い文学表現。

第一生命のサラリーマン川柳が
公募されたのは
1987年(昭和62年)のこと。

社会風刺を盛り込んだ
自虐ネタを中心とする
世相を反映した作品は秀逸で、
入選作品が発表されると
さまざまなメディアが
その話題を取り上げています。

また、伊藤園が公募する
“伊藤園 お〜いお茶新俳句大賞”
の歴史も古く、
1989年(平成元年)に公募を開始。

その優秀作品は
ペットボトルのラベルで
発表されています。

こうした背景の中、芸能人の
さまざまな才能を査定する
“プレバト!!”の“俳句”コーナーの
人気に背中を押されるように、
“俳句”への認識が高まり、
にわかファンが急増の模様。

“五七五”調の歌を詠むのが
静かなブームのようです。

“俳句”と“川柳”、どちらも、
五七五音節を定型とした
17文字で構成される短詩で、
室町時代には確立していた
連歌(五七五音節と七七音節)から、
遊戯性を高めた
集団文芸の発句や連句などの
“俳諧連歌(はいかいれんが)”
として江戸になって
分岐したものです。

一般的に、“俳句”は季語や
切れ字(や、かな、けり)が必要で、
文語表現が用いられます。

一方、“川柳”には
季語や切れ字がなく、
主に口語表現を用いるのが
大きな違いです。

また、“俳句”に詠まれるのは、
季節や自然を切り取った
描写に対する心象表現
であるのに対して、“川柳”では、
世相や社会風俗などを
面白おかしく風刺を交えて描写する
というそれぞれの特徴があります。

そのため、同じ情景から
生まれた作品であっても、
表現が大きく異なります。

こうした違いは、
成り立ちによるものです。

“俳句”は、俳諧の発句(第一句)が
独立したものなので、発句に必要な
季語や切れ字を用います。

“川柳”は“俳諧連歌”の
付け句が独立したもので、
七七音節の下の句をお題に対して、
気の利いた五七五音節を考える
遊びが元になっています。

ところが、一部の“現代俳句”では、
季語のない“無季俳句”や
切れ字の有無にこだわらない
俳句結社があったり、
“サラリーマン川柳”では、
ふたつの意味を持たせる
大喜利的な言葉を使うなど、
広い範囲に多様化しているようです。

とはいえ、僅か17文字で表現される
“俳句”や“川柳”の世界観は、
日本語の持つ語彙(ごい)の
豊富さによるもの。

他の国の言語では、
なかなかこうはいきません。

初鰹の旬は初夏。あっさりとした味わいに合う淡麗辛口の菊正宗。

“俳句”の定型ルールを理解した上で
…「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」
という有名な俳句は、少し異端です。

俳句の黎明期とされる
江戸時代前期に活躍した
俳人・山口素堂(やまぐちそどう)
の作品で、松尾芭蕉とも友人として
交流のあった人物です。

山口素堂の墓と句碑~文京区・厳浄院~

初句(最初の五文字)の
「目には青葉」は、
“は”を入れて字余りに。

「目に青葉」でも成立するのに、
わざわざ“は”を挿入しているのは、
続く二句、結句が
「“耳には”山ほととぎす
“口には”初鰹」と省略した部位を
連想させる効果があるとのこと。

続く特異な点として、
季語が二つ以上入る“季重なり”、
切れ字を用いず、
すべて体言止めという
俳句の禁じ手による
構成であることです。

普通は詠んだ内容の
主題のまとまりがなくなり、
ぼやける要因となるために
これらの手法は避けられがちですが、
あえて禁じ手を使った
リズム感のある句となり、
初夏という季節感を際立たせる、
さりげない江戸の粋を表現。

現代でも多くの人が知っている
という点において、
それだけ印象深い俳句
といえるでしょう。

「初鰹」の旬が初夏であることを、
この俳句で覚えている方も
多いのでは?

さて、「初鰹」の旬は、
新暦で3〜5月。

九州の南海域をスタートし、
北海道南端の餌場に向かって
黒潮にのって北上する途中で
水揚げされるので、
赤身のさっぱりとした味わい
が特徴です。

8月頃に餌場に辿り着いた鰹は、
産卵のためにUターンして南下。

南下の途中の9〜10月に
水揚げされるものを
「戻り鰹」と呼びます。

「戻り鰹」は餌を補食しているので、
脂がのっているのが特徴。

鰹は旬が2回ある
珍しい魚といえます。

ちなみに、鰹という音の響きが
“勝つ男”に通ずるということから、
江戸時代には大人気の鮮魚。

初鰹3本10両で取引された
という記録も残っており、
「1両=約10万円」換算で、
1本約33万円の高級魚です。

いまでは手軽に味わえる
旬の味覚といえますね。

赤身のさっぱりした味わいの
「初鰹」に合うのは
淡麗辛口の日本酒です。

ただいま期間・数量限定蔵出しの
純米大吟醸 無濾過原酒
「20歳の山田錦物語」の
フルーティで芳醇な味わいは、
絶妙なバランスで
「初鰹」を美味しく引き立てます。

是非、お試しあれ。

こんな時期だから…趣向を変えた“花見酒”はいかがでしょうか。

今年の桜前線は、全体的に少し早め。東京は、観測史上最速を記録。

寒さも和らぎ、
春のぽかぽか陽気に誘われて、
桜前線も北上中です…
春先の新聞やテレビの常套句。

この季節、桜の開花予想にはじまり、
開花宣言が行われた後、
満開予想に続くのが、
歳時記のひとつとして
根付いています。

この“桜前線”とは、
日本各所の桜の開花予想日が
同じ地点を結んだ線のことで、
天気図の前線とよく似ていることから
桜の開花に応じて“桜前線”と
呼ばれるようになりました。

桜の開花予想をはじめとする観測は、
気象庁が1955年(昭和30年)から
東京を中心に開始していましたが、
民間の気象関連事業者が
同様の情報提供を
バラエティ豊かにはじめたため、
2009年(平成21年)を最後に終了。

気象庁では、
桜の開花や満開の予想はやめたものの
、日本全国に点在する標本木に
花が5〜6輪咲いた状態を“開花”、
80%以上咲いた状態を“満開”
と定義づけた桜の観測は
引き続き実施しています。

ちなみに“開花宣言”という表現を
気象庁では使っていません。

“桜前線”は、3月半ば過ぎに
九州、四国から北上をはじめ、
5月初めごろには
東北地方を経て北海道に上陸。

そして5月中旬以降に
北海道の最果てに到達する
というのが、一般的な“桜前線”の
進行ルートとタイミングです。

ところが、今年の桜は
北上とは行かず、
2020年(令和2年)最初の
開花宣言は、東京の靖国神社。

観測史上最速の3月14日で、
平年差で12日も早い
宣言となりました。

3月末の週には桜前線が
北上をはじめ、全体的には
例年より少し早い開花宣言が
行われました。

桜の開花を左右するのは、
夏から春にかけての
気温上昇の動きです。

気温の高い夏から秋にかけて
桜の花芽がつくられ、
2〜7℃の真冬の厳しい寒さに
一定期間さらされることで休眠し、
その後の気温上昇とともに
花芽が目覚め、
早春につぼみが膨らんで開花します。

とくに休眠状態にある
冬芽や種子、球根などが、
気温上昇などの特定の刺激を
受けることで活動状態に戻ることを
“休眠打破”といいます。

全国的には少し早い
開花となりましたが、
九州南部では
暖冬の影響を受けたことで、
つぼみの“休眠打破”が遅れ、
開花も少し遅れ気味となりました。

桜の開花から満開まで約1週間。

4〜6日頃あたりが5〜7分咲き、
8分咲きを越えると満開。

桜が散りはじめる桜吹雪の時期など、
満開から約1週間は花見が楽しめる
といってもいいでしょう。

ネット通販を利用。桜のミニ盆栽と菊正宗で“小さなお花見”を。

新型コロナの影響で、
不要不急の外出や集団で集まること
への自粛要請もあり、今年の
花見事情は例年とは異なります。

とはいえ、通りがかりに花を見ること
への制限はなく、
逆に桜の花に集中できる分、
いつもの年より桜そのものを
純粋に楽しめているように感じます。

また買い物に不自由さを感じる
外出自粛の今、ネット通販が
日々のくらしに浸透していることで、
不便さは幾分緩和されている
といえるでしょう。

ということで、
昨今の盆栽ブームということもあり、
桜のミニ盆栽のネット購入
というのもありかもしれません。

こちらなら開花シーズンを
過ぎた今でも、
盆栽向きの桜の品種
ということで、届いたときに
桜が開花しているという
期待も持てます。

サクランボが実る品種などもあり、
とくに無趣味の方には、
趣味をはじめるいいキッカケ
となること請け合い。

鉄道模型の小さな人形を配置して
シーンを演出した“マン盆栽”
というのも静かなブームと
なっているようです。

併せて、菊正宗のネット通販を
ご利用いただき、
家族だけで楽しむ
“小さなお花見”の開催
はいかがですか。

180㎖5種を組み合わせた
ネオカップセットや、
今だけの数量・期間限定蔵出し
「純米大吟醸 無濾過原酒
20歳の山田錦物語」など、
春先ならではの華やかでフレッシュな
お酒も取り揃えています。

日々、新型コロナ対策の
さまざまな意見が交わされる中、
眉間にしわを寄せた繰り言だけでは
心が保てません。

今しなければならないことを前提に、
できることや
楽しみを見つけることが、
輝ける明日へと
繋がっているように感じます。

「酵母」は、文字通りアルコール醗酵の母親。

微生物の一部は、人のくらしに役立つ自然界の恵み。

突然、新型コロナウイルスの猛威に
見舞われた世界。

即効性のあるワクチンや薬の
一刻も早い投入が望まれますが、
未知のウイルスであるがゆえ、
その開発は困難を極めています。

しかし現在、全世界の英知を結集して
、研究が急ピッチで進んでいる
とのことで、大変頼もしく思います。

さて、ウイルスの大きさは
1μm(マイクロメートル)
より小さいものが多く、
微生物と勘違いされる
ことも多いのですが、
ウイルスは生物ではありません。

生物は自身で
増殖する能力を持っていますが、
ウイルスは自身で増殖できないため、
生物とは明確に区別されています。

一方、大腸菌や乳酸菌などの細菌、
真菌(酵母、カビなど)を総称して
“微生物”と呼びます。

この微生物は病気の原因
となる細菌も多いことから、
“罪”の部分が悪目立ちしますが、
人類は“微生物”の恩恵に
与っていることも多いのです。

感染症の治療に使われる抗生物質は、
一部の微生物がつくり出すものですし
、日本酒をはじめとする醗酵食品も、
さまざまな微生物の働き
によるものです。

私たちの体内にも
約100兆個もの常在細菌が存在し、
善玉菌と悪玉菌が
絶妙なバランスを保ちながら、
病原体の侵入を防いでくれています。

麹菌_Aspergillus oryzae

日本酒造りにおいて
欠かせない微生物が、
麹菌、酵母、乳酸菌です。

麹菌がつくる酵素の作用により、
米のデンプンを分解して
ブドウ糖を生成します。

そのブドウ糖をアルコールに
変えるのは酵母の役割。

この“糖化”と“アルコール醗酵”
という2つの化学反応を
同じタンク内で行う、
世界でも類を見ない
高度で複雑な醸造方法
“並行複醗酵”が、
日本酒製造の真骨頂なのです。

そして、酵母と乳酸を大量に得る
“もと(酒母)”を造り上げる
工程で活躍するのが乳酸菌。

菊正宗では、江戸時代からの製法を
受け継いだ“生酛造り”により、
手間と時間をかけて
自然の中で生きている乳酸菌を
取り込みます。

この手間と時間が、
旨い辛口をつくる上で、
欠かせない工程といえます。

その乳酸菌がブドウ糖をエサに
乳酸をつくり、雑菌を駆逐します。

酵母は乳酸に強く、
増殖をはじめる中で
アルコールをつくり、
やがてそのアルコールによって
乳酸菌が死滅するというのが、
生酛造りの基本的なメカニズムです。

この複雑な製造方法が、
微生物すら見つかっていない
江戸時代に確立していたのには、
大変驚かされます。

 

清酒酵母_Saccharomyces cerevisiae

日本酒造りに適した清酒酵母は、風味を醸すのに最適な酵母。

さて、日本酒造りに
重要な役割を担っている酵母ですが、
ドイツ語でヘーフェ、
滓(おり)を意味します。

英語ではイースト、泡立つもの
という意味があります。

明治中期にドイツ人やイギリス人から
ビール醸造技術を学んだ際に、
“醗酵の母”という意味に
訳したことから酵母と呼ばれる
ようになりました。

酵母は真菌類の一種で、
その大きさは直径約5〜10μm
(マイクロメートル)。

日本酒造りに適した清酒酵母は、
生育条件が整えば約2時間で倍に増え
、ひと晩寝かせると
1㎤(1㎖)あたり約2億個
まで増殖します。

たった1㎤(1㎖)の
清酒醪(せいしゅもろみ)の中に、
日本の全人口以上の数の酵母が
存在していることになります。

パン生地の醗酵に適したパン酵母、
ビール醸造に適したビール酵母、
味噌や醤油の醸造にも
味噌酵母や醤油酵母があるように、
日本酒造りにも酒質に適した
風味を醸すのに特化した
酵母が存在しています。

長年にわたる酒造りの現場で、
より選られた優秀な清酒酵母の株が
大切に純粋培養されたものです。

日本酒造りに適した清酒酵母は、
醸造酒では他に例のない
高濃度(約20%)の
アルコールをつくる能力を
備えているのが特長です。

酵母の働きをほど良く抑え、
アルコール醗酵がじっくりと進む
低温醗酵に適しています。

ある研究者が味噌酵母を使って
日本酒を醸造したのですが、
白米を原料にしたにもかかわらず、
味噌汁の香りがした
という笑い話が残っています。

太古の昔より続く微生物との共存。

ひとつひとつ科学的に解明され、
私たちのくらしはその都度、
より豊かに進化しました。

この関係は、はるか未来へと
続いていくものと思われます。

京都の老舗に認められた”黒七味ナッツ”の『COCOLO KYOTO』。共通話題はオーガニック。

老舗と創業6年の若い店がコラボ。オーガニックな“黒七味×ナッツ”の競演。

300有余年続く京都の老舗
『祇園 原了郭』との
コラボ商品を発売した
オーガニックナッツ・グラノーラ
専門店『COCOLO KYOTO』は、
京都市営地下鉄 烏丸御池駅
から徒歩2分(東洞院通三条下ル)
にあります。

お話を伺ったのは、社長の井上泰輔さん。

店内に漂う香ばしい香りに
井上さんの優しい
言葉遣いが寄り添って、
不思議と安心感を与えてくれます。


『COCOLO KYOTO』の創業は、
2014年(平成26年)と、
かなり最近のこと。

起業のキッカケは、お子さんが
お菓子を食べているのを見た時に
“健康にいい食べ物って何だろう”
と、ふと頭をよぎった疑問。

井上さんの母親が
オーガニック野菜を
栽培していたのを思い出し、
“こだわった食品に
関わる仕事がしたい”と、
それまでの
経営コンサルタントの仕事を
すっぱりと辞めたそうです。


美容・健康食品として
女性に人気のあった
グラノーラの専門店が
京都になかったことを知り、
長年の経営コンサルタントの
勘が働いたこともあって、
取り扱うオーガニックに
こだわった商材は確定。

“よく最初は苦労続きで…
というお話になるのですが、ウチは
順調に業績を伸ばしています”と、
屈託のない笑顔で話される井上さん
は、まさに頼れる兄貴のようです。

井上さんの周りに人が集まるのが、
判るような気がします。


事業計画を立てて、
経営の持続化を図るという
前職の経営コンサルの経験が
生かされているのかと思えば、
現在は数字をあまり見ない
ようにしているとのこと。

“昔の自分なら、
もっと原材料費を落として、
利益を上げなさいと
いっていたかも知れない”と。

健康にいい食にこだわりたい
とはじめたことなので、
そのこだわりをなくしたら、
いまの事業をやっている意味がない
ということです。

 

3月のセット商品に「黒七味ナッツ」が登場。

そうした健康志向への想いが講じて
生まれたのがグラノーラに続く
「京都ナッツ」です。

京都のオーガニックにこだわりのある
薬味や調味料を使った
バリエーション展開で、
新しい京都の味を生み出す
ということが、
「京都ナッツ」の商品展開のテーマ。

そして、ご縁があってお会いしたのが
『祇園 原了郭』さんで、
長い歴史のある老舗が、
その話に乗ってくれるか
心配だったそうです。

しかし、オーガニックにこだわった
自然素材による美味しさという
同じ方向を向いていることに
共感いただき、「黒七味ナッツ」が
日の目を見ることになりました。

味はまったく苦労なく決まった
のですが、指でつまんだ時の
べたつきを解消するのに試行錯誤。

こちらは苦労の末、
思い通りに仕上がり、
看板商品へと育っていきました。


現在、
「白味噌ナッツ」や「抹茶ナッツ」
など、京都の素材を使った
全6種類をラインナップ。

ほかにもいくつかの種類が
待機していますが、
当面は「黒七味ナッツ」を中心に
現在のラインナップで
勝負されるようです。

商品開発にあたっての考え方は
実にシンプル。

自分が食べたいものを
安心安全に届けるということ。

今後の『COCOLO KYOTO』の展開に
期待が持てます。

 

3月に販売を開始する
純米大吟醸酒しぼりたて無濾過原酒
「二十歳の山田錦物語」は、
360有余年の歴史を刻む菊正宗と
今年度に20歳を迎える大学生という、
“老舗と若い力”のコラボレーション
により生まれたお酒。

同じ趣向でつくられた
「二十歳の山田錦物語」と
「黒七味ナッツ」を
セット販売します。

とくに「二十歳の山田錦物語」
の販売は期間・数量限定なので、
売切れる前に、お買い求めください。

京都の老舗『祇園 原了郭』(ぎおん はらりょうかく)の“黒七味”に秘めた一子相伝の“技”。

ご存知「忠臣蔵」と関係深い300有余年の歴史を刻む老舗。

「忠臣蔵」で有名な
赤穂四十七士のひとりを“祖”にする、
香煎・薬味の老舗が
京都・祇園にあります。

その名も『祇園 原了郭』、
300有余年続く人気の名店です。

“祖”とされるのは、
足軽頭として表門隊に配備された
原惣右衛門元辰
(はらそうえもん もととき)。

吉良邸討ち入りの際、
大石良雄を助ける参謀格として、
主君浅野内匠頭の仇討ち
を果たした後、切腹。

56年の生涯を閉じました。

この原惣右衛門元辰を父に持つ
原儀左衛門道喜が出家して“了郭”
と号し、1703年(元禄16年)に、
祇園社(八坂神社)の門前に
香煎を供する茶店を開いたのが
『祇園 原了郭』の原点です。

貞信都名所之図 祇園社西門
貞信都名所之図 祇園社西門

当時の様子は、江戸時代の木版画
「貞信都名所之図 祇園社西門」
に描かれ、その中に
“御香煎司 原了郭”という文字を
読み取ることができます。

『祇園 原了郭』の
創業以来の看板商品は、
徹底してその品質にこだわる
一子相伝の独自の製法による
「御香煎」(おこうせん)です。

香煎は、
漢方薬の原料にもなっている
陳皮(ちんぴ)やウイキョウ、山椒
などを独自の製法で配合し、
香ばしく煎って粉末状にしたもの。

白湯(さゆ)に浮かべて、
その香りを楽しみます。

香煎そのものの歴史は古く、
江戸時代に街道の
宿場や茶屋に置かれ、
旅人を癒したとされています。

現在、『祇園 原了郭』では
“御香煎”をはじめ全5種が販売され、
茶事や料亭で最初に出される飲み物
など、幅広く重宝されています。

「御香煎」と並ぶ、
もうひとつの看板商品が約100年続く
「黒七味」(くろしちみ)です。

これは11代目が
香煎の原料に含まれる山椒に着目した
ことが最初で、いまでは「御香煎」
をしのぐ人気商品となっています。

12代目の時には“七味とうがらし”
という名で販売され、
現13代目になり
「黒七味」ブランドを確立しました。

商標登録にあたっては、
一子相伝ということで
その細かい原材料を
あかしていないこともあり、
商標登録出願から
約12年もかかったといいます。

それだけ大切に取り扱っている
商品への慈愛を感じさせてくれます。

 

 

老舗のこだわりが磨き上げた「御香煎」と「黒七味」。

長い歴史を持つ京都の老舗、
厳格な敷居の高さを覚悟して伺った
『祇園 原了郭』本店は、
創業当時と同じ
八坂神社へと続く四条通沿いの
祇園エリアの中心に位置しています。

この祇園本店に続いて、
2012年(平成24年)、
縄手通に『Ryokaku』をオープン。

その店頭は、1847年(弘化4年)版
「二千年袖鑒
(にせんねんそでかがみ)」
に掲載されている
江戸時代の『祇園 原了郭』の茶店の
佇まいを再現したものです。

その新しいお店で、
現在13代目を数える当主“原悟”氏の
奥様の原美香さんが、満面の笑顔で
お出迎えくださいました。

「黒七味」「御香煎」ともに、
親から子へと一子相伝で、
その原材料の配合や製造技法を
継承されたものです。

漢方由来の自然素材であるが故、
気候や土壌環境によって
その生育状態は異なります。

丹念に揉み込むなかで、
生きた素材の状態を瞬時に見極め、
匂いや手触り、音などの五感を
研ぎ澄ましてして、
仕上がりをイメージして
素材に寄っていく…
まさに、職人の成せる“技”。

それまで代々行ってきたように、
すべての調合を
13代目自ら手作業で行い、
その現場に入ることを許されている
のは次の当主として予定されている
現在高校生の14代目のみという
厳格なしきたりがあるといいます。

繊細な五感を持つ血筋
であろうことは、
300有余年の歴史から想像できますが
、子どもの頃から当主の“技”を
垣間見て育ち、作業場に漂う
独特な空気感や立ち込める香り、
舌にヒリヒリと感じる味わいなど、
環境そのものが
次の当主を育てるのでしょう。

開封した際に“さすが”と感銘いただく
商品でありつづけるため、
賞味期限は3ヵ月が目安。

水分を含んでいないので、長期保存は
冷凍庫がおすすめとのことです。

近年、「黒七味」を名乗る類似品が
市場に出回っていることに
苦慮しつつも、

“そう簡単に真似できるようなもの
ではありません。お客様が、
そちらの味を好まれるのであれば、
それはしかたがないこと。”

と、老舗ならではの懐の深さ。

類似品を購入されたお客様のクレーム
にも丁寧に応対されているそうで、
これが長年愛される製品を
送り出している老舗の矜持
と納得しました。

販売を一手に引き受けているのは、
奥様の美香さん。

ソーセージや餃子、味噌汁、また
チョコレート、あられなどにつけて
食べると、驚くほど味の変化を
楽しむことができるといいます。

こうしたアレンジレシピを、
広めるのが目下の目標。

とくに料理の幅が
大きく広がっている現在、
欧風や中華など、
アレンジは無限大です。

これまで、さまざまな企業からの
依頼を受けて
『祇園 原了郭』黒七味を原材料
として提供された実績のひとつに、
オーガニックに強いこだわりを持つ
2014年に創業したグラノーラ専門店
『COCOLO KYOTO』があります。

『祇園 原了郭』店内に、
『COCOLO KYOTO』が製造する
「黒七味ナッツ」のコーナーを
設けておられることを見ると、
同じ京都に存在する
若いお店を応援される
老舗の包み込むような優しさを
垣間見たような気がしました。

2020年2月の取材時は、
いつもとくらべると
閑かな京都市街でしたが、
昔の佇まいを思い起こさせる
ような気がしました。

冬の寒さ厳しい京都にあって、
歴史を重ねた熱い想いに
感銘を受けたひとときでした。

次回、グラノーラ専門店
『COCOLO KYOTO』の話題
へと続きます。