「仕掛人・藤枝梅安」と「鬼平犯科帳」。良質の時代劇を楽しみませんか。

CGを使った奥行きのある江戸の町の描写。池波正太郎の人気作品が蘇ります。

時代劇にとって、今は冬の時代です。

かつてはテレビや映画などで
時代劇は人気コンテンツでしたが、
現在では時代劇を観る機会は
大河ドラマか再放送くらいのもの。

若い層を狙った番組が増える一方、
高齢層に人気の高い時代劇が
姿を消しています。

時代劇制作には
多くの時間と手間がかかり、
制作費も嵩むため、
スポンサーがつきにくい
といった理由もあるようです。

そんな中、
池波正太郎の生誕100年を迎えました。

池波作品を通じて
“時代劇という文化を継承して、
次の世代にバトンをわたす”
という意義のもと、
CSの「時代劇チャンネル」を
運営する日本映画放送が
幹事会社となり、
映像化プロジェクトが
スタートしました。

白羽の矢が当たったのは、
「仕掛人・藤枝梅安」と
「鬼平犯科帳」。

これらはかつて
ドラマや映画などでシリーズ化された
池波正太郎の人気作品です。

映像化プロジェクトで大切にしたのは
池波正太郎が描いた江戸の空気感。

池波が
江戸古地図や
風景画「江戸名所図会」をもとに
物語を紡いだ世界観を、
時代劇に精通した制作スタッフが
忠実に再現しました。

また奥に富士山を望む江戸の町を
CGで再現するなど
奥行きのある映像美が
観客を魅了します。

プロジェクトの口火を切ったのは
「仕掛人・梅安」で、
2作品が劇場公開されました。

江戸庶民に慕われる鍼医者
“藤枝梅安”の裏の顔は、
お金で殺しを請け負う
ダークヒーローという設定です。

今回の映画で豊川悦司が演じた梅安は
クールで艶があり、
仕掛ける際の所作には
哀愁が漂います。

1972年(昭和47年)、
池波原作にアレンジを加えた
テレビ時代劇「必殺仕掛人」が、
緒形拳を梅安役に起用して
開始されました。

ダークヒーローが主役の連続ドラマ、
イタリア映画に影響を受けた撮影技法
マカロニウエスタン風の音楽など、
これまでの時代劇とは
一線を画す新しさが受けて
シリーズ化。

2作目以降は池波原作を離れた
「必殺〇〇」シリーズが続き、
中村主水を演じた藤田まことや
念仏の鉄を演じた山崎努など
数多くの人気キャラクターが
誕生しました。

シリーズは31作まで続く中、
殺しの現場に出向く主人公たちの
光と影を巧く映し出した映像美は
圧巻です。

現在は正月特番のみとなっていますが
途中の休止期間も含めて
約50年にわたって受け継がれた
人気の高い時代劇のひとつに
数えられます。

プロジェクトの3作目で
トリを飾るのは
「鬼平犯科帳 血闘」。

主人公の長谷川平蔵は、
江戸中期に実在した
火付盗賊改方
(ひつけとうぞくあらためかた)で、
悪逆非道な悪人を懲らしめる
時代劇の王道である勧善懲悪もの。

中村吉右衛門の当たり役として知られ
彼の亡き後は甥にあたる
10代目松本幸四郎が
演じることでも話題です。

現在、劇場公開中なので、
その臨場感を
映画館の大きなスクリーンで
楽しみたいものです。

「仕掛人・梅安」2作品は、
サブスクの映画配信サービスで
観ることができます。

普段、
テレビで観る機会が
少ないこともあり
時間をかけて
丁寧につくり込まれた
良質の時代劇は、
これまで以上に
新鮮な感動を与えてくれます。

時代劇には特撰がよく似合います。

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池波正太郎生誕100年。彼が追い求めた徹底したリアリズム。

池波作品の魅力は、緻密なストーリー設定と、江戸の食文化のリアルな描写。

1923年(大正12年)に生まれた
池波正太郎の生誕100年を記念した
2年にもわたる映像化プロジェクトが
佳境を迎えています。

2023年(令和5年)に
劇場公開された
「仕掛人・藤枝梅安」の2作、
そして2024年(令和6年)
5月10日から公開中の映画
「鬼平犯科帳 血闘」。

これらに「剣客商売」を加えて、
池波正太郎の三大シリーズ
と呼ばれています。

「鬼平」は1968年(昭和43年)、
「剣客」「梅安」は
1972年(昭和47年)に連載が始まり、
池波が1990年(平成2年)に
67歳で亡くなる数年前まで
書き継がれました。

もちろん
これらのシリーズ以外にも
数多くの時代小説やエッセイなどを
世に送り出しています。

三大シリーズの時代設定は
1780年代(安永、天明)から
1800年代(享和、文化)
にかけての約25年間、
10代将軍・家治から
11代将軍・家斉の時代です。

物語の舞台は
大川(隅田川)界隈を中心に
繰り広げられます。

池波が執筆にあたって参考にしたのは
「江戸切絵図」と呼ばれる古地図で、
江戸市中を地域別に細かく
描き込んだものです。

この地図を元に、
主人公をはじめ登場人物の家や
近所の料理屋、長屋の路地、
行き交う辻などを
細かく設定しているため、
物語はぶれることなく、
よりリアルな描写が可能となりました。

こうした緻密な背景描写に
重ねるように紡ぎ出される
魅力ある人物描写が
池波作品のキモ。

余計な修飾語を極力省き、
登場人物の会話に導かれるように
物語は進んでいくことで
臨場感は増し、読者は作中に
引き込まれていきます。

また、時折登場する
食にまつわるシーンは、
江戸の食文化への
深い造詣がうかがえます。

池波作品のもうひとつの魅力は、
この食文化の描写です。

彼が食通であることは有名で、
彼が残した食に関する
数多くのエッセイから
それぞれの店を辿った
「池波正太郎が通った〔店〕」
という本が重版を重ねるほど。

作品づくりのため
足繁く通った京都の老舗料亭のように
高級なところだけでなく、
銀座の洋食屋のカツレツや
横浜の町中華など、
庶民的な店も少なくはありません。

たとえば「神田まつや」。

明治初期創業の蕎麦の老舗で、
江戸時代から続く
伝統の下町の味を守り続けている
庶民が集うお店です。

ここで出される日本酒は、
辛口の菊正宗のみ。

江戸時代の味を
頑なに守っているお店に
菊正宗が多いのは、
下り酒の主流であった菊正宗のお酒と
提供する料理との相性も含めた
“伝統の味”の名残りかも知れません。

池波が蕎麦をたぐりながら、
菊正宗の燗酒を嗜みつつ、
作品の構想を練っていたと考えると、
一気に親近感が湧いてきます。

さて、
彼の生誕100年を記念した
映像化プロジェクトで描かれた
「仕掛人・藤枝梅安」と
「鬼平犯科帳」は、
庶民を苦しめる許せぬ悪を
闇で仕留めるダークヒーローと、
江戸時代に実在した“火付盗賊改方
(ひつけとうぞくあらためかた)”
を主人公にした、
まさに対照的な人気作品です。

次は、
「仕掛人・藤枝梅安」と
「鬼平犯科帳」について
紐解きたいと思います。

お楽しみに。

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1年でもっとも過ごしやすい「小満」。穏やかな晴れの日が続きます。

「小満」の恒例行事は夏服への衣替え。生活全般を夏仕様に見直しましょう。

暦の上では、5月20日から
二十四節気の
「小満(しょうまん)」の
期間にあたります。

しかし、メディアなどで取り立てて
伝えられるほど著名な
歳時記ではありません。

しかし、春から夏へと季節が変わる中、
あふれる太陽の光を受けて
草木が急速に成長して緑があふれる季節。

「小満」の頃は、
春先の肌寒さが和らぎ、
ぽかぽかとした暖かい日差しが心地よく、
1年でもっとも過ごしやすい
気候ともいえます。

「小満」の期間を
七十二候に置き換えた場合、
初候は“蚕起食桑
(かいこおきてくわをはむ)”で、
蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃を
表現しています。

次侯は“紅花栄(べにばなさかう)”。

オレンジ色の紅花が咲き誇る頃です。

そして、末侯の
“麦秋至(むぎのときいたる)”。

冬に種を蒔いた麦が収穫期を迎えます。

秋に稲穂が黄金色に
染まる様子になぞらえて、
麦の穂が黄金色に色づくこの時期を
“麦秋(ばくしゅう)”、
小麦色の麦畑に吹く風を
“麦の秋風”と呼びます。

“秋”の漢字を使うのは
やや不思議な感じもしますが、
初夏の季語としてよく使われる
言葉のひとつです。

ちなみに、沖縄では
「小満」から次の
「芒種(ぼうしゅ)」辺りに
梅雨入りしていることが多いため、
ふたつの節気を重ねて
“小満芒種(すーまんぼーすー)”
と呼び、広く
“梅雨”の意味で使っているようです。

「小満」の期間に訪れる恒例行事が、
夏服への衣替えです。

衣替えは平安時代に中国から
伝わったもので宮中行事として
行われていました。

江戸時代になると気候に合わせて
年に4回衣替えをしたという記録が
残されています。

現在のように夏冬年2回が
定着したのは明治以降。

洋服が日本に伝わり、
暦が新暦になったことが
大きく関係しています。

ジメジメとした湿気の多い梅雨前の
晴れた日が多い時期なので、
衣服を入れ替える前に
洗濯やクリーニングに出して
汚れを落とすとともに、
しまう衣類には必ず防虫剤を
入れておくことが大切です。

また、この時期特有の数日天気が
ぐずつくことがあります。

本格的な梅雨入り前の“走り梅雨”と
呼ばれる気象現象で、梅雨のような
長雨にならないのが特徴です。

できれば衣替えと同時に、
夏を涼しく過ごすために部屋を
夏仕様にしつらえたいもの。

昔は夏になると襖(ふすま)を外して、
細い竹をはめ込んだ“簾戸(すど)”や
葦(あし)をはめ込んだ“葦戸”と
交換して日の光を遮断して
風の通りをよくしていました。
先人の知恵のひとつです。

現在はマンション暮らしが増える中、
網戸が常設され、エアコン普及率も
高いため、昔ながらの“簾戸”に
取り換えるなどの風情のある
夏の風物詩はあまり
見る機会が少なくなりました。

猛暑や酷暑に見舞われる8月に
エアコンは必須ですが、
7月半ば辺りまでは、ソファーや
調度品の置き位置を変えて
風の通り道を良くしたり、
ベランダに簾(すだれ)を吊るして
外からの照り返しを防ぐなど、
涼しさを感じる部屋に
模様替えをするのも、
梅雨が訪れる前の
このタイミングでしょう。

まずは過ごしやすい穏やかな気候の
「小満」を
楽しむことから始めましょうか。

春から夏にかけて美味しい旬を迎えるカレイもあります。

魚図鑑のイラストは、ほぼ左向きに描かれています。

魚図鑑に掲載されている魚の絵が、
一部を除いて
すべて左向きに描かれていることを
ご存知でしょうか。

また、魚類分類学などの論文に
添えられる標本写真やイラストも、
つねに左向きの構図のようです。

「なぜ左向きなのか」
という疑問を解明するべく、
学習図鑑編集長が
さまざまな仮説を立てて
魚類学専門家に確認したものの
「はっきりとした理由は分からない」
との見解が示されました。

ちなみに、編集長が立てた仮説は
“日本の伝統的な
左側上位という考え方”
“尾頭つきの魚料理は左向きに置く”
“日本語の横書きは左から右へと書く”
などいくつかあり、
その中のひとつ、
“右利きの人は、
自然と左から右に絵を描く”
という考え方が一番、
理にかなった理由ではないかと
締めくくっています。

それに加えて、
過去の魚図鑑を確認したところ、
1956年(昭和31年)に
出版されたものは、
かなり右向きの魚が混在。

その16年後の
1972年(昭和47年)出版されたものは、
すべて左向きに統一され、
かなり見やすくなっています。

結果的に、デザイン装丁上、
見やすいベージ構成が行われたようで、
子供にも分かりやすい編集が
検討されたことは一目瞭然です。

それでは、
一部の右向きに描かれている
魚の種類は?
…お気づきかと思いますが、
眼が右側についている
カレイの仲間です。

さて、奇しくも魚図鑑で
他の魚と異なる掲載となった
カレイですが、
実際にも他の魚とは異なる生態を
持っています。

カレイに分類される種類は多く、
その数は世界で100種類以上、
日本近海だけでも40種以上生息
とのこと。

北海道から九州にかけて幅広く生息し、
同じ種類でも
地方によって呼び名が変わったり、
生息場所によって
同じ種類なのに
旬の時期や
味そのものが変わったりすることも
珍しくない魚なのです。

初夏から秋にかけて旬を迎える
アサバカレイをはじめ、
9月から10月が旬のカラスガレイ、
6月と9月から10月に旬を迎える
マガレイなどが
多く流通していることから、
“カレイの旬は秋から冬”と
思われがちです。

しかし、春から夏にかけて
メイタガレイやクロガシラカレイ、
漁獲量は少ないものの
格別の美味しさと名高い
大分のブランドカレイ
“城下カレイ”が旬を迎えるなど、
この時期ならではの
脂がのった美味しさを味わえる
カレイも数多くあります。

カレイの定番料理といえば、
やはり煮付け。

旬の厚い身のカレイを
甘辛い出汁で煮立てれば、
ホクホクの美味しさに出会えます。

薄く切った生姜を入れて
濃い出汁で煮るのがポイントです。

アルミホイルで蓋をすれば、
ほどよく蒸されて、
さらに美味しく仕上がります。

ここに豆板醤を入れれば、
いつもと違ったピリ辛味に。

さらにおすすめなのが
“カレイの磯辺揚げ”。

カレイをぶつ切りにして、
青海苔を混ぜた衣を纏わせて
カラッと揚げるだけ。

マヨネーズとダシ醤油を混ぜた
タレにつけていただきます。

これから、
夏に向けて汗ばむ季節になるので、
キリッと冷やした
辛口の冷酒にぴったりの酒の肴です。

ぜひ、お試しください。

冷やすほどにうまみとキレが調和。
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