吟醸酒づくりの繊細さは、日本酒の醍醐味。

精米歩合とアル添が、日本酒分類の基準。

以前、テレビのバラエティ番組の
ニューヨーク特集で、
スーツ姿のニューヨーカーたちが、
“ジュンマイダイギンジョウ”と
注文するシーンを
見かけたことがあります。

ビジネス街に程近い立地で、
日本食を中心とした
居酒屋スタイルのお店でした。

店内は、アメリカ映画などで
よく見る“誤った日本観”満載の
アジアンテイストではなく、
日本の懐き良きレトロな雰囲気を
上手く取り入れた、
凝ったつくりの装飾。

昨今の日本食ブームもさることながら
、日本酒も外国人に受け入れられて
いると実感した瞬間でした。

通信や物流の加速度的な発達は
、世界をより身近なものへと
近づけているようです。

昭和の“級別制度”が廃止され、
現行の分類に落ち着いたのは、
1990年(平成2年)のこと。

その体系の基本が、
8種類の「特別名称酒」と、
それ以外の「普通酒」です。

この日本酒の分類体系を
簡単に紹介すると、
分類体系を知る上での
ポイントは大きく2つあります。

「精米歩合で名称がかわる」
「醸造アルコールを
添加(アル添)していないもの
には“純米”と表記される」。

この2つを組み合わせて、
普通酒を加えた9種類が
決まるということです。

精米歩合とは、
米を磨いた残りのパーセンテージ。

たとえば、“精米歩合60%”の場合、
4割が削られることになります。

  • 精米歩合50%以下…
    純米大吟醸酒/大吟醸酒(アル添)
  • 精米歩合60%以下…
    純米吟醸酒/吟醸酒(アル添)
  • 精米歩合60%以下、
    または特別な製造方法…
    特別純米酒/特別本醸造酒(アル添)
  • 精米歩合70%以下…
    本醸造酒(アル添)
  • 精米歩合の規定なし…
    純米酒/普通酒(アル添)

日本酒のラベルに記される原材料と
醗酵を促す醸造工程の基本
はほとんど同じ。
ということを考えると、米や水、
麹菌の種類、なにより、
その特長を巧く引き出す時間や
温度の管理技術など、微妙な“さじ加減”
の大切さを思い知らされます。

この差を実感したい方には、
種類の違う日本酒の飲みくらべを、
ぜひお勧めしたいところ。

飲みくらべて分かる、その違い。

日本酒の深さを知る、
いい機会といえます。

手間ひまかかる吟醸酒づくり。

なかでも、手間ひまのかかる「吟醸酒」。

読んで字のごと
く“吟味して醸造する”日本酒です。

精米歩合60%以下、
大吟醸酒ともなると
50%以下まで酒米を磨くのが、
吟醸を名乗るための条件。

まず、精米。

米の磨かれ具合にばらつきがあったり
、砕けた米が混入していると、
酒の質を落とし兼ねないため、
細心の注意が必要です。

精米時間に二昼夜を費やす
ことも多くあります。

精米後、摩擦熱を持った米を
倉庫で冷ます“枯らし”工程。

そして3〜4週間後、
残っている糠を取り除くために
“洗い”の工程となります。

ご飯の米は“とぐ”といいますが、
酒造りにおいては、
米と米を擦り合せると米粒が
砕けてしまうこともあるため、
文字通り “洗う”工程といえます。

洗い終えた米は水に浸けて、
米の芯まで適度に吸水させますが、
水を吸わせすぎると蒸米が
柔らかくなりすぎて、その後の
麹づくりが上手くいかないことも。

その日の気温、
米の品種、新米か古米か、
収穫時が豊作か凶作か、
さまざまな条件を加味した
調整は必須です。

とくに吟醸酒の場合、
精米歩合が低くなるので、
洗米、浸漬は基本、
手作業が中心です。

そして“蒸し”工程。

ご飯は炊くといいますが、
酒造りでは“蒸す”です。

蒸した米は硬めに仕上がるので、
米粒同士があまりくっつかず、
麹づくりの際、
麹菌が繁殖できる表面積を
大きくすることが目的です。

また、炊いた米は消化しやすいため、
糖化と醗酵のバランスが崩れて、
日本酒独特の並行複醗酵が上手く
できないことも挙げられます。

ちなみに炊いた米の水分が約65%
なのに対して、蒸した場合は
約35%とい大きな差があります。

吟醸酒では、低温でじっくりと
醗酵を行う必要があるため、
糖化とアルコール醗酵の
バランスがとても大切。

蒸米が柔らかすぎると
米が溶解しやすく、
醪(もろみ)の糖分が増加。

それに伴って
酵母の醗酵も弱まります。

醪を仕込んでしまうと、
あとは温度管理により
バランスをコントロール
しなければならなくなります。

酒造り全般にいえることですが、
“良いお酒を造ろうと思えば、
原料処理に行き着く”
といわれるほど、
これまでの工程はとても大切です。

そして次に続く“麹づくり”は、
さらにデリケートです。

米の芯まで繁殖する麹菌が育つ
“突き破精麹(つきはぜこうじ)”
をつくりだすとともに、
低温長期醗酵の醪の中でも
でんぷんを分解し、
酵母のエサとなるブドウ糖を
十分に供給させるため、
二晩がかりの温度管理は大切です。

麹菌が繁殖しはじめると、
自らの発する熱のため、次第に
麹の周囲の温度は上昇し、やがて
麹の繁殖が止まってしまうためです。

そして醪の工程。

醪は10℃以下の低温で、
30〜40日もの長期にわたる
低温管理が必要です。

低温の場合、
醪の酵素の働きや酵母の醗酵が
抑制されるため、
時間がかかるということです。

とくにこだわった吟醸酒をつくる際は
、次の“しぼり”の工程で、
醪を入れた酒袋を吊るして、
ゆっくり時間をかけ、
自然にしたたるお酒を採る「袋搾り」
や「しずく搾り」という
手法を採る場合もあります。

とくに、アルコール添加のできない
「純米大吟醸酒」では、
お酒のアルコール分はすべて酵母
からつくらないといけないため、
酵母の醗酵力を最後まで
維持しなければなりません。

酒米を半分以下まで磨き、
酵母の働きをコントロールするために
低温での醗酵管理が重要なポイントです。

普通酒とくらべると、
膨大な手間とひまがかかる吟醸酒づくり。

旨さの探求のためには、
それも大切なことです。

こうした苦労の末に誕生する吟醸酒の
お話を思い浮かべながら飲むと、
その味わいや印象も深まり、
より一層堪能できるに違いありません。

七夕は、別名“棚幡”。邪気払いの日本酒はいかがですか?

逆境が育む、つのる恋心。7月7日が晴れる確率は約3割。

イギリスの劇作家シェイクスピアの
代表戯曲「ロミオとジュリエット」。

言わずと知れた、かなわぬ恋の悲哀を
描いた作品で、たびたび
舞台上演や映画化されている、
時代を越えた傑作です。

いがみ合う2つの名家の対立は
激しさを増すばかり。

それぞれの家の純朴な若い二人に
恋心が芽生え、結ばれるために
一計を案じますが、
すれ違いにより若い二人は
帰らぬ人に…ざっくりと、
そんなお話です。

この時代に携帯電話さえあれば
二人の計画は上手く運んだものの、
とついつい思ってしまいます。

織姫と彦星(牽牛)が登場する
「七夕伝説」も、
同じようなお話かと思いきや、
少々、その内容は異なるようです。

元となったのは、中国発祥の
「牛郎織女(ぎゅろうしゅくじょ)」
という物語。

昔むかし、天帝は、娘の織姫が、
身なりに構うことなく、
はた織りに励む毎日を
送っていることを不憫に思い、
娘に見合った婿探しをはじめました。

そして、勤勉に牛の世話に励む若者、
彦星と出会います。

彼が働く姿を見た天帝は、
“この若者こそ、娘を幸せに
してくれるに違いない”と、
彼を娘の結婚相手に決めました。

そして結婚した二人は毎日
仲睦まじい生活を送りますが、
それまでとは一転、
二人は仕事をまったくせず、
遊んで暮らす毎日。

それに怒った天帝は
織姫と彦星を天の川で
隔てて引き離すことに。

突然引き離され、
悲しみに暮れる二人は、
働く意欲さえなくなりました。

その姿を見かねた天帝は、
真面目に働くのなら、
7月7日だけ逢わしてやると約束。

織姫と彦星は、1年に1度だけ、
逢うことを楽しみに、真面目に
働くようになった…というお話。

織姫と彦星の関係を恋人同士
だとばかり思っていたのですが、
夫婦だったとは驚きです。

ここではじめて知った
方も多いのでは。

7月7日に降る雨のことを
「催涙雨(さいるいう)」
といいます。

これは、年に一度の機会なのに、
逢うことができず、
二人が流す涙のこと。

過去58年間で
“晴れた7月7日”は約31%。

野球の打者なら、
アベレージヒッターとして
合格点なのですが、
こと七夕となると
3年に一度しか逢えないことに。

ちょうど梅雨の時期と重なるため、
“梅雨の晴れ間”を期待する
しかないようです。

それならば、昔からの習慣という
ことで、8月7日(旧暦の七夕)
とした場合、晴れる確率は約51%。

これなら、二人は2年に一度、
逢えることになります。

日本最大の七夕祭りといわれる
宮城県「仙台七夕祭り」は
8月6〜8日、
秋田県「能代七夕/天空の不夜城」と
埼玉県「狭山市入間川七夕まつり」
は8月3〜4日、
愛知県「安城七夕まつり」は
8月2〜4日、
京都府「京の七夕」は
8月10〜12日など、
旧暦で開催される地域が多くある
のもうなずけます。

七夕の夜空に輝くベガとアルタイル。天の川は見えますか。

さて、実際に、
七夕の時期に夜空を見上げると、
“こと座のベガ(織姫星)”、
“わし座のアルタイル(彦星)”、
ここに“はくちょう座のデネブ”が
加わって、ひと際明るい3つの星、
「夏の大三角」を見つける
ことができます。

ベガ(織姫星)とアルタイル(彦星)
の距離は、約14〜15光年。

光の速度で移動して
約14〜15年かかるということ。

こうなると、ロマンチックなどとは、
ほど遠い距離といえます。

家庭では、短冊に願い事を書いて
笹の葉に飾るのが
一般的な七夕の風景です。

七夕は、
別名“棚幡(たなばた)”と書きます。

旧暦のお盆は7月15日で、
7月7日は、お盆の準備のために、
ご先祖様を迎える
「精霊棚(しょうりょうたな)」
を設けて、幡を立てる風習が
一般的でした。

また、七夕は五節句のひとつ
でもあり、それぞれの節句に、
邪気を払うために飲むお酒が
決まっていました。

7月7日は「一夜酒」、
つまりアルコールの入っていない
甘酒を飲んだとされます。

夏場の酒は、いまと違って
保存状態が良くなかったこともあり、
甘酒で夏バテした身体への滋養強壮を
補う役割を果たしていたようです。

冷蔵技術が進んだ現在は、夏場でも
美味しい日本酒が数多くあります。

「スパークリング純米大吟醸酒
天使の吐息」や「にごり梅冷酒」
などサッパリ系をはじめ、
「純米原酒」や「樽酒」、
「シェリー樽貯蔵 大吟醸酒」など、
冷やして旨いお酒も盛りだくさん。

 

夜空を見上げながら、
ロマンチックな思いに更ける
七夕の夜。

今年は、晴れるといいですね。

聞き慣れない「半夏生」は、農作業の大切な節目。

馴染みの薄い雑節「半夏生」。

「半夏生」という言葉を
ご存知ですか。

“はんげしょう”と読みます。

「半夏生」は、節分や彼岸、
土用などと並ぶ雑節のひとつで、
移り行く季節をより的確につかむ
ための特別な暦日です。

その元になったのは、二十四節気の
夏至の終侯“半夏生ズ”。

中国の季節に基づいた“節気”では、
日本の季節の変化を
読み取れないこともあり、
とくに大切な特別の暦日として、
日本の風習と結びつきの深い
“雑節”が設けられました。

ちなみに、2019年の「半夏生」は、
7月2日(期間とする場合は、
7月2日から7月6日の5日間)です。

この「半夏生」、
ほかの雑節とくらべると、
少し印象が薄く感じますが、
農家にとっては、とても大切な
節目とされてきた歴史があります。

農業が中心だった
昔からの言い伝えとして、
“チュウ(夏至)ははずせ、
ハンゲ(半夏生)は待つな”
ということわざや“半夏半作”
という言葉が残されています。

これは、「半夏生」以降に田植えを
したものは、収穫がかなり減る
ということを伝えたもので、
夏至を過ぎて「半夏生」に入るまで
に田植えを済ませておくための
戒めのようなもの。

実際に、農家にとっての節目となる
大事な日で、“畑仕事を終える”
“水稲の田植えを終える”
目安となる日とされ、その習慣は、
代々受け継がれてきました。

「半夏生」という言葉が、
夏至の終侯の“半夏生ズ”に由来すると
述べましたが、それが意味するのは
“半夏が生える”ということ。

七十二候に多くみられるのですが、
季節の植物の生育を取り上げて、
その季節を表現します。

“半夏生ズ”で取り上げられた
植物は何でしょうか。

“半夏”は烏柄杓(からすびしゃく)
という薬草の漢名で、この花が咲く頃
が初夏のこの時期ということです。

余談ですが、片白草(かたしろくさ)
も“半夏生”という似通った漢名を持ち、
花が咲くのが同じ季節。

葉の一部で表側だけが
白くなることから、
半分化粧をしているように見える
“半化粧”が転じて“半夏生”に。

一般的には
“半夏(烏柄杓)”が通説です。

“半夏”と“半夏生”、見た目は
まったく異なる植物ですが、
その開花が季節の変わり目を
教えてくれるという点では、
どちらも正解といえる
のではないでしょうか。

「半夏生」は、農業が主だった時代の生活の知恵?

昔から、「半夏生」の日は、
“物忌み(ものいみ)”の日と
解釈された側面があります。

“物忌み”とは、
神聖なものを祀るために、
ある期間中、食事や行動を慎み、
不浄を避け、家内にこもることで、
神聖な存在に穢れ(けがれ)を
移さないことを意味します。

その土地ごとに伝聞は異なります。

天から毒気が降るので
井戸に蓋をして井戸水を飲まない、
酒肉を食べない、
この日に採った野菜を食べない、
地荒神(ちこうじん/畑の神)
を祀り、お神酒・麦団子を供える、
なかには、この日から5日間、
農作業を休むなど、多種多様です。

ただ、その背景には、田植えで
疲れ切った身体を癒すために、
ある意味、強制的に休む日を設ける
という、昔の生活の知恵だと
考える向きもあるようです。

「半夏生」にまつわる言い伝え
や風習は、全国各地で
それぞれのカタチを残しています。

まずは「半夏生」にまつわる言い伝え。

三重県熊野・志摩地方では
“ハンゲという妖怪が徘徊する”、
青森県では
“半夏生の日の後に田植えをすると、
1日に1粒ずつ収穫が減る”、
群馬県では
“ネギ畑に入ることは禁忌”、
埼玉県では
“竹の花が咲いたり消えたりする時期。
それを見ると死ぬので、
竹林に入ることは禁忌”など。

一方、風習として有名なものは、
香川県の「うどんの日」。

古来よりその年に収穫された麦で
うどんを打ち、農作業を手伝って
くれた方々に振る舞う風習が
受け継がれてきたものを、
1980年に“7月2日は、
うどんの日”として制定したもの。

福井県大野市では、江戸時代に
大野藩藩主が、「半夏生」の時期、
農民に焼き鯖を振る舞ったという
逸話を元に、現在も“「半夏生」に
焼き鯖を食べる”という風習が。

兵庫県明石市では“蛸を食べる”習慣。

奈良県香芝市では
“田植えを無事に終えたことを
田の神様に感謝するお供え物として
小麦を混ぜた餅をつくり、
きな粉をつけて食べる”など、
地方ごとにそれぞれ農産物などと
結びついた言い伝えや
風習のカタチを残しています。

欧米諸国では宗教上の観点から
“労働は苦役”と捉えられがちですが、
日本では“働くことは美徳”
とされてきた歴史があります。

ついつい働きがちな日本で、
「半夏生」という疲れた身体を癒す
生活の知恵は、昔の“働き方改革”の
走りだったのかも知れません。

世界的な夏至。北半球全体が明るい一日です。

夏至にまつわる誤解。

今年の「夏至」は、6月22日
(期間とする場合は、
6月22日から7月6日の
15日間)です。

北半球で、
“一年のうちでもっとも昼の時間
(日の出から日没まで)
が長い日”として
認識された日といえます。

また、太陽の位置や動きにおいて、
“太陽が上がった時の角度が
もっとも高い”
“一年のうち、
もっとも北寄りから昇り、
もっとも北側に沈む”
日ともいえます。

これは“黄道”と呼ばれる太陽の軌道
と地球の回転の軌道である“赤道”の
角度がずれていることに起因します。

ちなみにこの日、北極圏では
一日中太陽が沈まない“白夜”、
逆に南極圏では
一日太陽が昇ることのない“極夜”
になります。

昼の時間が一番長いということから、
“夏至は、日の出がもっとも早く、
日の入がもっとも遅くなる日”
と勘違いされがちです。

国立天文台によると、日本で
“日の出がもっとも早い日は、
夏至より1週間ほど早く”
“日の入がもっとも遅い日は
夏至より1週間ほど後”。

この誤差は、
太陽が地球を通過する時の
高さと動く速度の違いで
発生するとのことです。

当然のことですが、
日の出や日の入の時刻は、
見る場所によって異なります。

一般的に立ち入ることができる場所で
標高を考えないとした場合、
もっとも早く日の出を拝めるのは、
最東端となる北海道の納沙布岬で、
日の出が3時36分、
日の入が19時01分
(昼の時間15時間25分間)。

逆にもっとも日の入が遅いのが、
最西端となる沖縄の与那国島で、
日の出が6時01分、
日の入が19時40分
(昼の時間13時間39分間)です。

最東端と最西端で、日の出時刻が
2時間25分もの差があることに
驚くとともに、
日の入の時刻差がわずか39分
しかないのにも驚かされます。

一番長い昼は、日本だけでなく世界各地で賑わっています。

二十四節気で
「夏至」は10番目にあたり、
9番目の「芒種(ぼうしゅ)」と
11番目の「小暑(しょうしょ)」
に挟まれた節気です。

「芒種」は麦を収穫し、
田植えをはじめる時期で、
「小暑」は梅雨が明けはじめ、
本格的な夏の暑さがはじまる時期。

また、各節気をさらに細かく分けた
七十二候の場合、「夏至」は
“初候…乃東枯
(なつかれくさかるる
/夏枯草が枯れる)”
“次候…菖蒲華
(あやめはなさく
/あやめの花が咲く)”
“末候…半夏生
(はんげしょうず)
/半夏が生える)”
の3つに分かれます。

とくに、末候の
“半夏生”の頃ともなると、
農作業がひと段落した
“畑仕事や田植えを終える”
目安となる時期とされています。

「夏至」が、
“1年で一番昼が長い日”
ということは、江戸時代にすでに
知られていたようで、太玄斎
(常陸宍戸藩第5代藩主 松平頼救)
が編纂した暦の解説書である
「暦便覧」に“陽熱至極し、又、
日の長きのいたりたるをもってなり”
という記述が見られます。

暦便覧が出版されたのは
1787年(天明7年)、
徳川11代将軍家斉の時代でした。

また、「夏至」は世界的な現象という
こともあり、世界各地でさまざまな
「夏至祭」が行われています。

スウェーデンでは、「夏至」に
もっとも近い土曜日と
その前日が祝日となり、
街の広場に“夏至柱”を立て、
その周りを民族衣装や
花冠をまとった女性たちが
歌ったり、踊ったりします。

「夏至」はスウェーデンで
もっとも大切な日にあたり、
この時期に合わせて
夏休みを取る人もいるほどです。

フィンランドは、
ユハンヌスと呼ばれる「夏至祭」
を6月20日から26日の間の
土曜日に開催。

白樺やポプラ、草花で
街中が飾られ、乳製品、
ジャガイモ、ソーセージが
振る舞われるなか、ひと晩中、
野外での踊りが続くとのこと。

ロシア、ウクライナなどでは、
イワン・クパーラという「夏至祭」
が開かれ、焚き火を飛び越える
などのイベントに興じます。

このほかの北欧諸国やオーストリア、
カナダ、米国アラスカ州などで、
その地に伝わる「夏至祭」が
開催されています。

また、祭りではありませんが、
世界の七不思議のひとつに数えられる
イギリスの謎の巨石遺跡
ストーンヘンジにも、「夏至」の日に
多くの人が集まります。

中心の祭壇とされる石と他の石を
直線に結んだ先に太陽が昇る
のを見るためだそうです。

メキシコのマヤ文明をいまに伝える
テオティワカンの
“太陽のピラミッド”も
「夏至」と関係が深い場所。

星の位置から暦を解明していた
とされるマヤ文明ですが、
“太陽のピラミッド”は
太陽の動きを計算して
設計された古代建造物。

「夏至」の日、太陽は
このピラミッドの真上を通過し、
正面に沈みます。

こうしたことから、
パワースポットして
人気の観光地となっています。

日本には「夏至祭」のような風習
はあまりなく、数少ない
「夏至祭」として有名なのは、
三重県の二見興玉神社の「夏至祭」。

観光名所ともなっている
夫婦岩を有する神社です。

ふたつの岩の間を朝日が昇る
勇壮なシーンに出会えるのは、
「夏至」の前後数日だけ。

この太陽のエネルギーを
浴びながら海に入り、
身を清めるという行事が
行われています。

「夏至」は、日本古来からの歳時の
ひとつぐらいの認識しかなかった
のですが、宇宙の現象であること
を考えると、その影響を地球全体が
受けていることにもうなずけます。

その地域独自の文化を育んだ
夏至は、まもなく訪れます。

日本酒の旨さを支えているのは、国に守られた“カビの仲間”。

醗酵食品と醗酵飲料の相性が生み出すマリアージュ。

最近、チーズがブームのようです。

2018年は、若い女性層が
チーズタッカルビや
スイス原産ラクレットチーズを使った
料理を出すお店に足しげく通い、
コンビニのチーズスイーツに
人気が集まるなど、チーズの話題が
メディアでよく取り上げられました。

2019年も、シカゴピザやパネチキン、
チーズティーなど、“映える”
新しいチーズ料理が続々登場し、
女性を中心としたチーズ人気は、
しばらく続きそうな気配です。

日本のチーズ消費が
爆発的に高まったのは、
1975年(昭和50年)頃の
ピザが出はじめたあたりから。

グラタンやチーズフォンデュ、
チーズケーキなどの洋食文化の広がり
とともに、チーズは欠かせない食材
として、私たちのくらしの中に
定着していきました。

以前は独特な臭いや味で
敬遠されがちだったブルーチーズも、
美味しいパスタ料理や
相性のいいお手頃なワインが
数多く流通するようになったことで、
市民権を得たといえます。

ワインと料理の相性をマリアージュ
といいますが、ともに同じ醗酵させた
飲料や食品なので、もともと好相性。

また、チーズのタンパク質が
ワインのタンニンと結びついて
ワインの渋みをまろやかにしたり、
チーズ独特の刺激臭を
ワインの甘みが緩和したり、
チーズの乳成分が舌に膜をつくり、
ワインの渋みや酸味を
マイルドにするともいわれています。

ワインと同じ醸造酒である日本酒
ですが、実はチーズとの相性は抜群。

日本酒のアミノ酸による旨み成分が、
クセの強いチーズとうまくマッチして
美味しさの相乗効果を高めます。

海外のチーズ愛好家にも、日本酒との
相性を高く評価する向きがあります。

日本酒とチーズのマリアージュの一例
ですが、クセの強いブルーチーズに
合うのは「超特撰 生酛大吟醸酒」。

クセをうまく調和させてバランスの
良い旨みを醸してくれます。

マイルドな味わいの
モッツァレラチーズには、発泡系の
「スパークリング純米大吟醸酒
天使の吐息」。

菊正宗 天使の吐息

スッキリとした爽やかな味わいが
口に広がります。

「嘉宝蔵 灘の生一本 生酛純米酒」
には、ハードタイプのチーズ。

旨みとコクの絶妙なバランスが
楽しめます。

チーズは、乳酸菌や酵素、カビなどの
微生物の働きによる熟成工程で
乳タンパクや脂肪を分解し、それぞれ
のチーズの個性を引き出します。

また、個性的な特徴を生み出すため
に、カビを使ったチーズがあります。

青カビを使った独特な臭いとピリピリ
とした刺激的な食感のブルーチーズ、
白カビを使ったクリーミーで
まろやかなカマンベールチーズや
ブリーチーズがその代表格。

“カビ=有毒”と思われがちですが、
ほとんどの青カビ
(白カビも青カビの一種)は無毒。

むしろ抗生物質のペニシリン製造に
有用な微生物なのですが、
一部のカビ毒「マイコトキシン」を
持つものが重篤な食中毒の原因
となるため、そこばかりが目立って
いる残念な微生物といえます。

日本酒に欠かせない“黄麹菌”は、国菌に認定。

日本酒に使われる麹菌も
カビの仲間です。

ヒマラヤ地域と東南アジアを含む
東アジア圏には、特有の
醗酵文化が根付いています。

なかでも、微生物の繁殖に適した
高温多湿な日本は、日本酒などの
醗酵食品の長い歴史を育む土地柄。

日本酒だけでなく、
味噌、醤油、みりん、酢などの
醗酵に欠かせない黄麹をはじめ、
泡盛に使われる黒麹、
焼酎に使われる白麹は
国菌に認定され、
大切に守られています。

醗酵食品に馴染みの薄い
一部の欧米地域では、
カビなどの微生物による醗酵食品
への拒絶反応があるようです。

実は、人にとって有益なものであれば
“醗酵”、有害なものになれば“腐敗”、
両者のメカニズムは
同じものなのです。

1960年のイギリスで、
カビの生えた輸入エサが原因で
七面鳥が大量に死ぬ
という事件が発生。

麹菌の仲間によるカビ毒
「アフラトキシン」が原因でしたが、
その形態が黄麹菌と類似しており、
誤解を招くこととなりました。

もちろん、
黄麹菌はカビ毒を発生させません。

こうした麹菌の謎を解明するために、
2001年に麹菌の
全ゲノム解読プロジェクトが発足。

2005年には、麹菌が約3800万塩基対
からなる8本の染色体を持ち、微生物
では最大の約1万2000個の遺伝子が
存在することが判明しました。

この成果に基づいて、
麹菌196株に対して、
カビ毒「アフラトキシン」を発生
させる遺伝子の解析を実施。

半数近くの麹菌で遺伝子群が不安定、
残りの半数についても、
カビ毒「アフラトキシン」の遺伝子を
有しているものの、その機能を失って
いるという結果にたどり着きました。

科学的な解析により、
その安全性が証明された黄麹菌。

今後、科学の“目”は、
日本酒の旨さをさまざまな角度から
ひも解くことになるでしょう。

その高水準の学術的な研究に
驚くのはもちろんですが、
科学のない時代に生まれた
微生物の活用方法に、
拍手を贈りたいものです。