日本酒のラベルを読み解く。

ワインと同じように、ラベルコレクターがいます。

いつもの菊正宗を買って帰り、
その日の肴に合わせて
“ひや”か“燗”で悩みつつ、
晩酌にご満悦のひとときを楽しむ。

酒瓶が空になったら瓶を洗って、
ゴミ袋に投入。

一般的な晩酌の光景ですが、
ちょっとお待ちを。

なにげなく捨てている酒瓶には、
さっきまで飲んでいたお酒の
プロフィールや情報が、ラベルに
ぎっしりと記載されています。

日本酒に限らずアルコール飲料は、
酒税法などによって、
その記載内容が厳格に定義され、
所轄官庁である国税局の指導の元、
どういうお酒なのかを表示する
ことが義務づけられています。

とくに酒税がからむので、
一般商品の製品表示より格段に
厳格なものとなっています。

日本酒の各情報は、
お酒の名称が大きく書かれた
「胴ラベル(表ラベル)」
と細かい記載の「裏ラベル」
に記載されます。

とくにこの胴ラベル、
ワインと同じように熱狂的な
コレクターが存在しており、
レアな商品ほどマニア垂涎、
人気が高いようです。

もちろん、ラベルのレア度は
味のレア度の証といえます。

菊正宗でもこの年末に向けて
人気の限定商品の発売を行うので、
要チェックです。

おすすめなのは昨年発売を
開始した「可惜夜(あたらよ)」。

今年の販売開始は11月22日。

醸造の詳細は非公開という
遊び心のある商品ですが、
菊正宗の創業から約360年培った
技術の粋を結集した無垢な味わいを
楽しめる逸品に仕上がっています。

明治から大正時代にかけて活躍した
北野恒富の美人画を用いたラベルは、
ネット通販限定200本
ということもありレア度満点。

昨年と同様に、発売早々に
売り切れることも予測されるので、
お早めにお求めください。

菊正宗 純米大吟醸 治郎右衞門 1.8L 木箱入り

このほか
限定醸造200本の「治郎右衞門」や
限定醸造1500本の「嘉宝」は
希少な予約限定商品。

菊正宗 純米大吟醸 嘉宝 1.8L 化粧箱入り

予約数に限りがあるので、売り切れ
次第、予約受付終了となります。

風格あるラベルと味は、
菊正宗を代表する自信作といえます。

予約の締め切りは10月30日なので、
ご興味のある方は、
ぜひお早めにお問い合わせください。

日本酒のラベルは、お酒の履歴書。

酒造法上、胴ラベル、裏ラベルに
記載が義務づけられている項目は
次の項目です。

必ず表記しなければなりません。

【酒類の種類(分類)】
●「清酒」または「日本酒」表記
※ 酒税法における課税上の必要性
から、酒類をその製法等により、
「発泡性酒類」「醸造酒類」
「蒸留酒類」「混成酒類」
の4種類に分類。

醸造酒のうち、米・米麹・水を
醗酵して漉した、アルコール分
が22%未満のもの。

【特定名称】
次の条件に当てはまる場合は
名称を表示します。

● 吟醸酒
(原材料/米、米麹、醸造アルコール
精米歩合/60%以下 麹米割合/15%以上)
● 大吟醸
(原材料/米、米麹、醸造アルコール
精米歩合/50%以下 麹米割合/15%以上)
● 純米酒
(原材料/米、米麹 麹米割合/15%以上)
● 純米吟醸酒
(原材料/米、米麹
精米歩合/60%以下 麹米割合/15%以上)
● 純米大吟醸酒
(原材料/米、米麹
精米歩合/50%以下 麹米割合/15%以上)
● 本醸造
(原材料/米、米麹、醸造アルコール
精米歩合/70%以下 麹米割合/15%以上)
● 特別本醸造
(原材料/米、米麹、醸造アルコール
精米歩合/60%以下または特別な醸造方法
麹米割合/15%以上)
※特定名称の規定から外れたものは、
一般的に「普通酒」に分類。

普通酒の表記は不要。

【原材料名】
使用した原材料を
使用量の多い順に記載。

特定名称を表示する清酒については、
原材料名の表示に近接して
精米歩合を表示。

【製造時期】
「製造年月平成30年10月」
「製造年月30.10」
「製造年月2018.10」
「製造年月18.10」
のいずれかの方法で記載。

※容量300㎖以下の場合は、
「年月」の文字表記の省略が可能。

【保存または飲用上の注意事項】
生酒のように、醸造後に一切加熱処理
をせずに出荷する清酒は、保存もしく
は飲用上の注意事項を記載。

【原産国名】
輸入品の場合は記載。

【外国産清酒を使用したものの表示】
国内において、国内産清酒と
外国産清酒をブレンドして製造した
清酒は、その外国産清酒の原産国
および使用割合を10%単位で記載。

【製造者名称および
製造所在地(所在地の記号表記可)】

【容量(単位/㎖またはℓ)】

【アルコール分(単位/度または%)】

【発泡性を有するものは、
その旨を表記】

【未成年者の飲酒防止に関する事項】
「お酒は20歳になってから」
「未成年者の飲酒は法律で
禁止されています」など

次の項目は、該当する場合などに表記
できる任意記載事項です。

【原料米の品種名】
原料米の使用割合が50%を超えている
場合に、使用割合と併記できます
(例/山田錦100%)

【日本酒の産地名】
100%その産地で醸造されている
場合に表示可。

他産地のものをブレンドした
場合は不可。

【貯蔵年数】
1年以上貯蔵した日本酒に表示可。

表示は年単位。

【原酒】
醸造後、水を加えてアルコール分を
調整しない日本酒に対して表示可。

【生酒】
醸造後、一切加熱処理
をしない日本酒に表示可。

【生貯蔵】
醸造後、加熱をせずに貯蔵し、出荷時
に加熱処理をした日本酒に表示可。

【生一本】
単一の製造場だけで醸造した
純米酒にだけ表示可。

【樽酒】
木製の樽で貯蔵し、木香のついた
日本酒に表示可。

【妊産婦への啓発項目】
「妊娠中や授乳時の飲酒は、
胎児・乳児の発育に悪影響を
与えるおそれがあります」など

※2018年10月現在の
「清酒の製法品質表示基準」
から抜粋・要約

以上の項目について、胴ラベル、
裏ラベルのいずれかに
表記されています。

また、これら以外にも蔵元の歴史や
商品特性など、読み込めば、もっと
商品のことが理解でき、自分にあった
お酒と出会えるチャンスが
隠されているとも考えられます。

一般的に、胴ラベルにはお客様に
もっともお伝えしたいこと、
裏ラベルには、より詳しく商品を
理解していただきたいこと
が記載されています。

“生き様が顔に表れる”などと
いいますが、日本酒の場合、
裏ラベルだけに、“背中で語る”
といったところでしょうか。

秋の味覚と日本酒…とても美味しい季節。

昭和の家電

旬の食材は、美味しく高い栄養価があります。

2005年に「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画が公開されました。

この映画は、高度成長期にあった
1958年(昭和33年)の東京が舞台。

建設中の東京タワーが見える町に
暮らす人々の生き生きとした姿が
描かれた作品です。

この映画の時代背景は、
好調な神武景気を受け、
「三種の神器」といわれた
白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が
豊かさの象徴として
一般家庭に普及しはじめた頃。

映画のシーンに、氷を入れて
冷やす木製冷蔵庫を電気冷蔵庫に
買い替える印象的な場面が
登場します。

この辺りの時代を境に家事の負担
が軽くなり、生活を楽しむ余裕が
一般庶民にも広がった、
近代化に一歩近づいた時代です。

食材の冷蔵貯蔵ができるように
なったおかげで、
食材のまとめ買いをするようになり、
その後の冷凍庫や電子レンジの普及が
家庭の食卓を劇的に変えました。

多くの食材に旬はありますが、
常備菜などは旬でなくても1年中
美味しい料理を家庭で楽しめる、
今では当たり前の光景。

その後、貯蔵や冷凍、養殖、栽培、
輸送など、さまざまな分野での
めまぐるしい技術発展により、
今では季節を気にすることなく、
いつでも美味しいものが
食べられるようになりました。

とはいうものの季節に
うるさい日本人。

やはり旬の味覚には敏感です。

旬の食材の効能は、
その美味しさと栄養価にあります。

一般的に、野菜の場合は、
“旬にピークがくるように育てられ、
もっとも成熟した状態”、
魚の場合は、
“産卵前で身体に栄養や脂肪分が
たっぷり蓄えている状態”
を旬といいます。

旬を待ちきれずに食べる
「走りの食材」、
ちょうど美味しい時期の
「旬の食材」、
過ぎ行く旬を惜しんで食べる
「名残の食材」
…季節ごとに旬は移り変わり、
1年を通して飽きることなく、
次々と訪れる旬の食材に
舌鼓を打つのです。

 

さんまと日本酒

秋の旬。引き立てる日本酒で、味が変わる。

秋が旬の代表格の魚といえば
「サンマ」。

近年は海水温度が上がって日本に回遊
する数が減ったのに加え、諸外国が
日本に回遊する前に捕獲するため、
日本の漁獲量は減少傾向でした。

しかし、今年は海水温も低く、
豊漁の兆し。

昨年よりサイズが大きく脂がのった
サンマは、いつものように大根おろし
と一緒に、素材そのものの美味しさを
楽しむのがベスト。

サンマの美味しさをひと際引き立てる
「菊正宗 上撰 きもと樽酒
900mlパック」と一緒にどうぞ。

また、サンマだけでなく、川を遡上
する秋鮭や秋サバ(マサバ)、
戻りガツオなど…秋が旬の魚は、
しっかりと脂がのった
濃厚な味わいが魅力。

この時期ならではの美味しさを
味わっておきたいものです。

秋の野菜は、夏の厳しい暑さを
乗り切って栄養を蓄えたキノコ類や
イモ類、根菜類が旬を迎えます。

松茸と日本酒

秋の味覚で欠かせないのは、
やはり「松茸」。

土瓶蒸しや焼き松茸、天ぷら。

松茸ご飯など、いろいろな料理が
楽しめるのが松茸の醍醐味です。

少し値は張りますが、年に一度の贅沢
と割り切って、楽しみましょう。

松茸の香りに合ったおすすめの
お酒は、「菊正宗 嘉宝蔵
灘の生一本・生酛純米」
の燗酒です。

菊正宗 嘉宝蔵 灘の生一本・生もと純米 720ml

昔から“香り松茸 味しめじ”と
いわれるように、秋の本しめじは味、
食感ともに絶品。

マイタケや椎茸もこの時期に旬を
迎える食材で、シンプルな素焼きから
和洋中どのジャンルの料理にも合う
万能野菜といえます。

食物繊維が豊富なキノコ類の多くは
秋が食べ頃です。

そばと日本酒

忘れてはならないのが秋の「新そば」。

江戸時代は、日本酒とそばの
組み合わせが好まれていました。

辛口の日本酒は、
そばの旨さや香りを引き立てます。

ぜひ「菊正宗 純米樽酒」を飲みなが
ら、そばの味わいをご堪能ください。

菊正宗 純米樽酒 720ml

季節ごとに美味しい旬はありますが、
食欲の秋というだけあって、
秋は味覚の宝庫。

食材に合わせて飲むお酒を
変えるだけで、今まで気づかなかった
味との出会いが待っています。

地域特性が色濃い「亥の子祭り」。

亥の子祭りは、西日本の一部地域で伝承。

 

台風直撃が重なり、
お天気は荒れ模様ですが、
朝晩の涼しさに
秋の気配を感じる今日この頃。

菊正宗上撰本醸造とお刺身

そろそろ熱燗が美味しい季節です。

熱燗といえば徳利と猪口(ちょこ)が
つきものです。

まずは徳利。

注ぐ時の“とくり”という音から
その名がついたというのが通説です。

なんとも風流なお話といえます。

では熱燗を頼む時に使う
“お銚子一本!”のお銚子はというと、
本来のカタチは雛人形の
三人官女のひとりが持っている
“長い柄のついた急須”のようなもの
が銚子、別名ではそのカタチから
長柄とも呼ばれます。

 

では猪口(ちょこ)はというと、
いくつかの説があります。

「ちょく(猪口)」が転じた語で、
チョットしたものを表す“ちょく”や
飾り気がないことを表す
“ちょく(直)”がその由来と
考えられているようです。

徳利も猪口の漢字表記は、
その音を当てはめた当て字で、
大陸からの言語に由来するとの見解が
一般的とされています。

 

さて、猪口に使われている「猪」と
同じ意味で使われる「亥」の漢字を
使った風習が、秋の深まった
この時期にあります。

「亥の子祭り」と呼ばれるもので、
旧暦の10月(亥の月)はじめの
亥の日、亥の刻(午後9〜11時頃)
に、秋の五穀豊穣をお祝い、
新米でついた亥の子餅を食べて
無病息災を願うお祭りです。

猪の多産にあやかって
子孫繁栄を願う意味も
込められています。

 

今年の亥の子祭りは
11月3日の初亥の日。

主に西日本に多く分布する行事
のひとつですが、祝日になっている
行事や、七夕、中秋など全国に
名を知られている歳時とは異なり、
地域ごとに特色があります。

大きなものは広島市内の各所で
行われている「大イノコ祭り」
が有名で、広島県の他地域をはじめ、
愛媛県、山口県、滋賀県、大分県、
三重県、奈良県、京都府などの
一部限定で代々伝わっている
行事です。

東日本エリアには、
この亥の子祭りの風習はなく、
北関東を中心に甲信越から
東北地方南部にかけて
旧暦10月10日に行われる
「十日夜(とおかんや)」
という同様の行事があります。

稲穂

祭りのスタイルは千差万別。

もともとの起源は古代中国の
「亥子祝(いのこのいわい)」
とされ、毎年、
亥の月、亥の日、亥の刻に
穀物を混ぜた餅を食べると
病気にならないという
無病息災を願う儀式が、
平安時代に日本に伝わり、
宮中行事に取り入れられたのが発端。

それが江戸時代になって
秋の収穫時期のお祭りとして
庶民の間に広まったとされています。

つまり、多産の神はすなわち
豊作の神に通じるところから、
次第に農村にも稲の刈り上げの行事
として広まり、また、
商人も多産を商売繁盛につなげて
祝うようになりました。

初亥の日は武士、
第二の亥の日は農民、
第三は商人というように
分かれて祝ったとされ、
商人中心の大坂では商人が
第二の亥の日を祝ったといいます。

 

亥の子祭りは、それぞれの
土地土地の風習として語り継がれ、
独自の祭りとしてとり行われている
ため、地域によって行事内容も
多種多様です。

よく行われている行事としては、
子どもたちが藁を束ねた藁鉄砲か、
何本もの荒縄で縛った亥の子石を
持って、グループになって家々を
訪ね、藁鉄砲や亥の子石で地面を叩く
「亥の子搗き(いのこづき)」
を行います。

これは土地の邪霊を鎮め、
土地の神に力を与えて
豊かな収穫を祈るという
おまじないだといわれています。

地面をたたいたり、練り歩く際に、
唱えごとしたり、亥の子唄という
数え唄を歌うのにも地域特色が
色濃く表れます。

亥の子搗きをしてもらった家は、
子どもたちに、お菓子や餅などが
振る舞われ、子どもにとっては
ご褒美づくしの一大イベント。

流行のハロウィンに似たような
趣です。

そして行事に食べられるのが
「亥の子餅」。

猪の子どものウリボウに似たカタチ
のものや、餅の表面に小豆を
まぶしたもの、紅白の餅など、
これも地域によってさまざま。

亥の子搗きはするけれど亥の子餅は
食べない、またその逆もあるなど、
その地域の特色が表れる
面白い行事のひとつといえます。

昭和40年代に亥の子唄の練習や
準備が忙しくて、子どもたちの
勉強に身が入らないとの理由から
学校が行事そのものを禁止にし、
廃れてしまった地域がある反面、
郷土の伝統行事として保護され、
受け継がれている地域もあります。

いずれにせよ、少子化や過疎化など
の問題でこうした地域特色の濃い
行事がなくなるのは、
少し寂しさを感じます。

こたつ

また猪は炎を司る神である
摩利支天の使いとされ、
この亥の日の日に、
炬燵(こたつ)開きや炉開き
を行うと、火災から免れる
とされてきました。

子どもたちが亥の子唄を歌いながら、
練り歩いている時に、大人たちは
炬燵に足を放り込み、今年初めての
鍋と燗酒で楽しむひとときかも。

大人たちにとっても嬉しい日に
間違いありません。

菊正宗 𤏐酒

秋ならではの醍醐味「きもとひやおろし」。

きもとひやおろし本醸造

 

待ちに待った
“ひやおろし”の季節到来。

日本酒ファンの密かな楽しみ
のひとつとされているのが、
秋に発売される「ひやおろし」です。

“秋あがり”“秋晴れ”と称されることも
ある“ひやおろし”は、冬から春に
かけて仕込んだ酒を搾って火入れ
(約60〜65℃に加熱殺菌)を行い、
夏の暑い時期に、ひんやりとした
涼しい酒蔵でゆっくりと熟成。

夏の暑さが和らぎ、外気と蔵の
温度が同じになった頃合いの
秋に出荷されるお酒といえます。

灘酒は“男酒”ともいわれ、春先の新酒
に感じるダイナミックな荒々しい
味わいや華やかな香りが特徴のひとつ
ですが、ひと夏を越え、約半年間の
熟成によって香味が整い、味わいが
丸くなり、酒質が格段に向上したもの
が“ひやおろし”として出荷されます。

日本酒は通常、品質を変化させる
酵母や酵素の働きを止め、
酒質劣化の原因となる火落ち菌を
死滅させるため、搾った直後と
出荷前に2回の火入れという
加熱処理を行います。

火入れをすることで、お酒の
味や香りが落ち着き安定します。

“ひやおろし”は、出荷前の2度目の
火入れを行わない「生詰め酒」。

火入れを1回しか行っていないため、
ゆるやかな熟成が魅力のお酒
といえます。

手前味噌となりますが、
菊正宗の“ひやおろし”の魅力は、
繊細に広がる味と香り。

昔ながらの手間ひまをかけて
手塩にかけて育てた旨味が冴える
「生酛(きもと)」が成せる技。

生酛ならではの繊細で深い味わいが
熟成によってさらに旨味を増し、
食べ物が美味しくなる
これからの季節の食材との相性も
抜群の円熟味を醸し出します。

この味わいに
菊正宗“ひやおろし”ファンは
酔いしれ、この時期のみの限定出荷
という希少性も相まって、
毎年この時期を心待ちされている
との声を耳にします。

ちなみに、“ひやおろし”は、
漢字で“冷卸し”と書き、
“冷や(常温)”で貯蔵し、
秋に卸すため、この名が
つけられたといわれています。

 

きもとひやおろし大吟醸

“ひやおろし”と火入れの関係。

“ひやおろし”に大きく関わっている
のは火入れの工程です。

2回目となる出荷前の火入れを
行わないため、ゆるやかな瓶内熟成
による微妙な酒質の変化を楽しめる
のも「生詰め酒」ならでは
の醍醐味です。

“ひやおろし”ファンなかには、
発売と同時にまとめ買いをされ、
数ヶ月をかけて、
味の変化を楽しまれる
“ひやおろし通”の方もちらほら。

酒質を左右する火入れについては、
奈良・興福寺の僧侶が遺した
「多聞院日記」の記述に
残されています。

多聞院日記は1478年の戦国時代から
1618年の江戸初期までの140年間
にわたって記されたもので、1560年に
「酒を煮させて樽に入れ了(おわ)る、
初どなり」という記述から
醸造工程において火入れが
行われていた当時の様子が伺えます。

「多聞院日記」から
約300年の時を経た明治初期。

東京帝国大学(現・東京大学)に
招かれた英国人化学者
ロバート・ウィリアム・アトキンソン
が「日本醸酒編」という著書で
“300年前にいったん酒液を熱して
幾と耐うべからざるに至らしめ、
もってこれを予防するの法を発見”
と、驚きとともに記しています。

これは、彼が来日していた明治当時、
ヨーロッパにおいてフランスの
細菌学者パスツールが、低温殺菌法
というワインの腐食防止技術を
発表したばかり頃。

それと同じ理論の火入れが
約300年前から日本酒醸造の技法
として取り入れられていた
のだから驚くのは当たり前。

日本酒は、長い経験による知恵の中で、
貯蔵・熟成の高度な技術を確立
していった世界に誇る類い稀な飲み物
といっても過言ではありません。

ボジョレー・ヌーヴォーほど
厳格なものではありませんが、
“ひやおろし”の解禁日は、
毎年9月9日の重陽の節句。

解禁日から約1ヶ月を過ぎた現在、
残りもわずかとなりました。

 

きもとひやおろし飲み比べセット

 

菊正宗では、“ひやおろし”ファンの
ご要望にお応えするため、
「“ひやおろし”の大吟醸と本醸造の
飲みくらべセット」や、
「“ひやおろし”と選りすぐりの
酒の肴セット」、「“ひやおろし”と
2回の火入れを行った飲みくらべ
セット」など、いろいろ楽しめる
セットを多数ご用意しております。

数量限定出荷の商品なので、
売り切れる前に、ぜひご自身の口で
お確かめください。

きもとひやおろし体感セット

こだわりのお米のお話。

揺るぎない酒米ブランド「山田錦」。

ひと昔前、お米といえば、
「コシヒカリ」、「ササニシキ」の
二大ブランドが席巻していた米市場。

近年になり、“魚沼産コシヒカリ”など
米の産地がブランドとして認知され、
さらには品種改良によって
“あきたこまち” “ゆめぴりか”
“ひとめぼれ” “森のくまさん”など、
全国各地で特A銘柄に指定される
品質の高い米が生産されるように
なりました。

その背景には、ネット通販などの
流通環境の進化により、
全国津々浦々で購入できるように
なったことも大きな要因の
ひとつです。

日本人のDNAには、
米へのこだわりが組み込まれて
いるような気がします。

日本酒にとっても、
仕込みに使う“水”とともに、
その原材料となる“米”は
とても大切なもの。

日本酒に適した米といって、
日本酒好きが真っ先にあげるのは
「山田錦」です。

その歴史は古く
1923年(大正12年)に、
兵庫県立農事試験場(現在の兵庫県立
農林水産技術総合センター)
で産声をあげ、1936年(昭和11年)
に兵庫県の奨励品種
「山田錦」として登場。

それ以降、約80年以上
にもわたって酒米(酒造好適米)
として不動の地位を
確立してきました。

現在、全国の生産量の約8割を
兵庫県産が占め、
とくに三木市や加東市の一部は
特A地区に指定されています。

全国の新酒鑑評会では山田錦を
原材料にした出品酒の金賞受賞率
が高いのも特長のひとつです。

このほか、北陸を中心に
普及している「五百万石」や
長野「美山錦」、新潟「越淡麗」、
広島「千本錦」などが酒米として
名を連ねています。

そして、山田錦の遺伝子を受け継ぐ
「兵庫恋錦」は、次世代の日本酒を
担う酒米として期待されるところ。

ご飯として食べる白米と
醸造用の酒米を比較した場合、
長い歴史を持つ山田錦がいまだ
トップの座を譲らないことを
考えると、酒米の品種改良は
かなり繊細で難しいことが
うかがえます。

良い酒米の条件

酒米とご飯として美味しい
白米とでは、その構造に
大きな違いがあります。

酒造りに適した米とは、
一般的に以下のような特徴を持つ
米を指します。

●大粒、軟質である
(精米時に表面を大きく削るので、
大粒の方が削りやすい)
●水に浸した際の吸水性がよい
(蒸米にした時に、
均一の水分量を保つ)
●蒸米が
“外硬内軟(がいこうないなん)”で、
手触りに弾力がある
●麹菌の破精(はぜ)込みがよい
(麹菌の菌糸が米の中心に
入り込みやすい)
●酒母や醪中で溶解性、糖化性がよい
(アルコールの生成が早い)
●タンパク質や脂質が少ない
(タンパク質や脂質は
日本酒になったときの雑味の要因)
●酒質が良い
(日本酒の味や香りに
キレが生まれる)

つまり、醸造時に麹菌が
活躍しやすい構造になっている
ということです。

米の澱粉を糖化しながら、
酵母が糖をアルコールに替えることで
日本酒が生まれますが、
この麹菌がうまく働かないと
美味しい日本酒は生まれません。

そのため澱粉が詰まった
水晶のように透明な一般の白米
ではなく、削りやすい大粒で、
雑味や苦みの原因となる
タンパク質含有量が低く、
中心に「心白」という
白い部分がある品種が
酒米として最適とされています。

心白の白い部分は、スキマができて
光の屈折により曇って見える
状態です。

このスキマから中心に向かって
麹菌の菌糸が入り込みやすいことを
“破精(はぜ)込みが良くなる”
といいます。

米の表層部に多く含まれる
タンパク質や脂質を取り除くために、
酒米の表面を30〜50%も削り落とす
と、球体のようになります。

そこから香り高いお酒になるために
複雑な工程へと進んでいくのです。

 

食卓に並ぶ白米へのこだわり
もさることながら、
日本酒醸造の原料米への
こだわりも妥協を許しません。

日本はつくづく米文化の国
であることを実感します。