賢い“衣替え”のススメ。事前準備と、整理ついでの“断捨離。

“衣替え”の歴史は古く、厄祓いの神事の意味もあった平安時代に遡ります。

夏の“衣替え”は、もうお済みですか。

夏は6月1日、冬は10月1日が
一般的な“衣替え”として
暦に載っています。

“衣替え”が暦の行事として
取り上げられるようになったのは、
明治時代になってからのことで、
軍人や警察官、役人の制服が
洋服と定められたことから、
夏服と冬服の衣替えの時期も
一緒に制度化したことが発端です。

同じように“衣替え”は
学生服にも適用され、
やがて一般庶民にも
この習慣が広まったとされ、
“衣替えの日”として
暦に載るようになりました。

しかし、
“衣替え”そのものの歴史は
もっと古く
中国の習慣が平安時代に
日本に伝わり、宮中行事の
“更衣(こうい)”として定着。

4月1日に冬から夏装束、
10月1日に夏から冬装束に替える、
最初の“衣替え”が行われました。

季節に応じて装束を替える以外に、
“穢れ(けがれ)”を祓う
という目的もあったようです。

厄災を招き入れる“穢れ”は
時間とともに身体や家に
溜まっていくものと考えられ、
“更衣”は宮中から厄を祓う
重要な神事のひとつとされていました。

また、“更衣”という言葉は
天皇のお召替えを行う女官の
役職名として使われていたため、
“衣替え”という呼び名に
変化したともいわれています。

鎌倉時代になると、
衣装だけでなく調度品の
“衣替え”が行われるようになり、
江戸時代には、5月5日、9月9日が
加わって、“衣替え”は、
年4回の行事となりました。

“衣替え”は暦の上のことで、
あくまで目安です。

日本列島は細長く、
地域によって寒暖差があるため、
北に位置する寒い地域では、
夏が6月15日、冬が9月15日と
夏服の期間がひと月短く、
逆に南に位置する暖かい地域では、
夏が5月1日、冬が11月1日と
夏服の期間が2カ月長くなるなど、
その地域の気候に応じたタイミングで
“衣替え”が行われています。

さらに、天候が不順ともいえる
昨今の気象状況に加え、
同じ市域であっても地形により
微妙に異なることもあり、
“衣替え”のタイミングは、
“蒸し暑さ”や“肌寒さ”など、
自分の体感による判断が大切です。

その際、ひとつの判断基準として、
自宅周辺の最高気温が、
“25℃以上が続くようなら
薄手の夏物、
20℃前後は春秋の合い物、
15℃以下なら冬物”というのを
参考にしてみるのも、
いいかもしれません。

“衣替え”時の洗濯は、鉄則。
次の“衣替え”のときに、差が出ます

さて、
“衣替え”をスムーズに行うために、
いくつかのポイントがあります。

まずは、
汚れたまま収納しない
ということです。

食べこぼしの汚れや汗は
時間とともにシミとなり、
虫食いの原因ともなるので、
収納する前に、
必ず洗濯やクリーニングでキレイに。

これを怠ると、
落とし切れていない汚れが
数カ月放置したままとなり、
首回りや袖口などが黄色く変色、
次の“衣替え”の際に
結局捨てる羽目に、なんてことも
よく聞くお話です。

また、洗濯後は
十分に乾燥させることも
大事なポイント。

湿気が残ったまま収納してしまうと、
カビが繁殖する原因になるからです。

そういう意味で、“衣替え”は
天気の良い日に行うのが
一般的とされています。

とくに、“衣替え”など、
一度にまとめて行う衣類の収納に
効果を発揮するのが、
透明な引き出しタイプの収納ケースです。

透明なので中に何が入っているか
一目瞭然。

同じサイズのものを
押し入れの下段に並べて置けば、
引き出しを入れ替えるだけで、
大まかな“衣替え”は完了。

しまっておく服の上に、
必ず防虫剤を置くことを忘れないように。

ここでひと手間となりますが、
これから着る服も一度、
天日干しすることで、
収納時の嫌な臭いが消え、
素材の風合いが元に戻るので
オススメです。

さらに、気をつけたいのが、
それぞれの衣類に合った
方法での収納です。

ジャケット類などは畳むと
肩周りの立体感が損なわれるので
ハンガーに掛けて収納ダンスの奥へ。

逆にニット系は、
ハンガーに吊るすと編み目が伸びて
シルエットが崩れるため
畳んで収納を行います。

シワがよる生地なども
吊るして収納してください。

“衣替え”と同時に行いたいのが
“断捨離”。

着なくなったものを取り除いて
スペースを空けておけば、
新しい服を置く場所が確保できます。

ただし、
“断捨離”の際に気をつけたいのは、
覚悟を決めてしまうと、
次から次へと捨てることに
夢中になることです。

あくまで“衣替え”なので、
たとえ着なくても、
思い出深い衣類などは、
キレイに保存しておけば良いでしょう。

まだ“衣替え”がお済みでない方は、
入れ替えるだけの“衣替え”から
一歩踏み込んだ“衣替え”に
挑戦してみてください。

ちょっと賢い整理整頓で、
気持ちの良い生活を実現してみましょう。

睡眠不足を溜め込んだ“睡眠負債”の解消に、短い“昼寝”が効果的。

睡眠不足が慢性化した“睡眠負債”。
働き過ぎの日本人にとって、大きな課題。

“最近徹夜続きで、
ちゃんと寝てないから、
休みの日に寝溜めをする”
などという徹夜自慢の話を、
よく耳にします。

ちょっと無理をした程度の
睡眠不足というのであれば、
それほど気にかけることは
ありません。

しかし、慢性的な睡眠不足は、
“睡眠負債”として、
身体や精神に影響を及ぼします。

“睡眠負債”とは、眠らないことで、
その負担が徐々に
身体へと蓄積している状態。

休日に寝溜めをしても、
長く蓄積された“睡眠負債”は
一気に解消せず、
そのまま生活改善をしないと、
やがて、自律神経の
バランスが崩れることで
イライラがつのり、
疲労感や倦怠感として現れ始めます。

また、自律神経のバランスの崩れは
高血圧や不整脈を誘発し、
肥満による生活習慣病を引き起こす
リスクが高いともいわれます。

フランスのヘルスケア企業が
2年前におこなった
世界主要国14カ国の
平均睡眠時間の調査データによると、
14カ国の平均睡眠時間は7時間8分。

なかでも、日本人の平均睡眠時間は、
6時間22分と世界最短で、
その調査対象の約3割が
6時間を下回った
ショートスリーパー率が高いとの
不名誉な結果に。

日本に続く中国は6時間32分と
日本に近い数値ですが、
3位のイタリアは
30分も多い7時間2分、
14位(最下位)の
ベルギーに至っては7時間34分と、
日本との差は1時間以上もあります。

これまで“日本人は働き過ぎ”と、
ずっと揶揄されてきたことからも、
睡眠と仕事は密接な関係にある
といえるようです。

昔と比べると、祝日法の改正や
ハッピーマンデー制度の導入で、
休日がかなり増えている
にも関わらず休日出勤で働き、
働き方改革が叫ばれると、
定時退社が義務付けられる中、
自宅に仕事を持ち帰って、
家で仕事をする人も
少なくありません。

もともと日本人は、
働くことを美徳とする考え方が
根底にあるため、休むのが苦手。

身体を壊してまで働く、
日本人特有のワーカホリック
(仕事中毒)の気質を
本気で考え直す時期に
きているのかもしれません。

ところが、
世界の平均寿命ランキングを見ると、
日本は世界一の長寿国で、
医療水準も先進国の中では
ダントツの一位。

歴代の長寿世界一記録
(その時の世界最高齢者)を
多数輩出しているなど、
ずっと働きづくめで、
その影響により、確実に
“睡眠負債”を抱えている人が
多い日本にとって、
ちょっと皮肉なお話ともいえます。

暑い盛りの農作業を、
理にかなった“昼寝”によって、
効果的な体力温存。

戦後の復興期を経て
高度成長期の頃は、
国民全体が昼夜を問わず働き、
日本を世界トップクラスの経済大国の
位置にまで押し上げたのですから、
その働き方には
想像を絶するものがあります。

古来、
農業を中心に発展してきた日本は、
各種農作業機械が導入される
わずか数十年前まで、
農作業のほとんどが手仕事で、
朝から晩まで、休む暇などなく、
睡眠時間も、かなり短いものでした。

とくに、毎年5〜6月頃、
その村落全体の共同作業として
田植えが始まると
そこから約ひと月は
厳しい農作業が続きます。

丁度、夏に切り替わり
暑くなり始める時期。

そこに梅雨の蒸し暑い湿気が加わり、
農作業にかかるはずの
体力を奪っていきます。

そうしたことへの対策として、
江戸初期頃、主に関西の
田植えの時期に許されたのが
“昼寝”の風習です。

もっとも暑い時間帯の“昼寝”は、
暑気払いと体力維持という、
とても理にかなった
考え方といえるでしょう。

“昼寝”の開始は、
“八十八夜”
“半夏生(はんげしょう)”など、
その村落の制度によって
異なりますが、
“昼寝”の終わりは、
必ず「八朔(はっさく)」
と決まっていました。

「八朔」とは、
“八月の朔日(旧暦8月1日)”
のことで、
現在の8月末から9月辺りの
季節の感覚。

稲穂が実り始める時期で、
農家にとってその秋の豊作祈願の
行事が行われる節目の日です。

田の実りを祈願する意味から
“田の実の節句”とも呼ばれ、
“田の実”が“頼み”に通じ、
お世話になっている親族など、
普段、頼みごとをする人に
“初穂”を贈る風習も
あったようです。

併せて、徳川家康の江戸城入城が
1590年(天保18年)8月1日
であったことから
「八朔」は祝日となり、
正月に次ぐ重要な日として
毎年祝うようになりました。

農村では、「八朔」の日に
秋の豊穣を願ってつく餅を
食べる風習がありますが、
“八朔のニガモチ”
“昼寝のトリアゲモチ”
などと陰では呼ばれ、
この日で“昼寝”が終わることを
嘆く声の方が多かったようです。

この昔ながらの“昼寝”の習慣、
最近ビジネスの現場でも
見直されているそうです。

昼食後の30分程度の短い仮眠は、
寝覚めも良く睡眠不足の解消にも
つながるとのこと。

まずは「良い睡眠」の条件である
“良い寝つき”“ぐっすり眠る”
“スッキリとした寝起き”
の対策を講じ、足りない場合は、
昼休みの仮眠でカバーというのが、
意外と効果的なようです。

今年の梅雨はちょっと早めの予想。梅雨と深い関係にある田植えの時期は?

天気予報がなかった江戸時代。
歳時記と肌感覚が頼りの農作業を行っていました。

春の陽気に包まれた
ゴールデンウイークも終わり、
ひと月後には全国的に梅雨入り
というのが一般的な季節の流れです。

しかし、昨年は九州、中四国は
観測史上最早となった
約ひと月早い梅雨が訪れ、
近畿以北は逆に1週間遅れという
天候不順な状態でした。

今年は梅雨前線が早めに
日本列島を北上すると予想され、
梅雨入りと梅雨明けが
早い可能性がありそうな気配が。

しかし、
この時期の気象予想は信頼性が低く、
地域によってバラツキが出やすい
不安定なものなので、
最新のお天気情報を確認する
必要はありそうです。

日本の天気予報の歴史は、
1884年(明治17年)にまで遡ります。

この年に、日本で最初となる
毎日3回の天気予報が
発表されるようになりました。

約1カ月の長期予報が実施されたのは、
58年後の1942年(昭和17年)
になってからのこと。

それ以降もずっと
“天気予報と宝くじほど
当たらないものはない”と
いわれ続けてきましたが、
近年は、気象衛星“ひまわり”や
国内約1300カ所の気象観測施設
“アメダス”、精度の高い
観測データ統計などのおかげで、
観測精度も格段に向上しています。

農業立国として
歴史を重ねてきた日本にとって、
梅雨と田植えは、
かなり密接な関係にあります。

田植え後の苗の成長を促すのが、
梅雨の“恵みの雨”なのです。

だからこそ、天気の長期予報は
とても重要な情報のひとつ。

天気予報がなかった江戸以前の時代、
空の色や雲の形、風向き、
肌に感じる湿気、さらに
生き物の様子などを元に
天気を予測し、
“朝焼けは雨、夕焼けは晴れ”
“山に笠雲がかかると雨が降る”
“遠くの音が聞こえやすくなると雨”
“ツバメが低く飛ぶと雨”
“カエルが鳴くと雨”などの
天気にまつわることわざで
語り継がれてきました。

また、歳時記も天気を知る
大きな手段のひとつです。

例えば、雑節の“八十八夜”。

茶摘みの目安の日として有名ですが、
稲の種蒔きの準備をする
時期でもあります。

立春(2月4日)から数えて
88日目の5月2日。

また、二十四節気の
“芒種(ぼうしゅ)”は
稲や麦などの穀物の種を蒔く時期で
今年は6月6日。

旧暦から新暦に切り替わる際に
約ひと月前倒しとなっているので、
現在に置き換えると、
“八十八夜”は4月上旬、
“芒種”は5月上旬あたりの
季節感覚です。

つまり、“八十八夜”で
種もみを発芽させ、
“芒種”に種を蒔き、
そこから約2〜3週間後、
10センチくらいに育った苗の
田植え作業を行います。

また、二十四節気をさらに
三分割した七十二候では、
その時期の自然の様子を
うかがい知ることができます。

こちらも約ひと月前が、
おおよその季節感覚です。

  • 芒種初候(6月5〜9日)
    /“蟷螂生(かまきりしょうず)”
    …かまきりが卵から孵る頃
  • 芒種次候(6月10〜15日)
    /“腐草為蛍
    (くされたるくさほたるとなる)”
    …草の中から蛍が舞い、
    明りを灯しながら飛び交う頃
  • 芒種末候(6月16〜20日)
    /“梅子黄 (うめのみきばむ)
    …青々と大きく実った梅の実が、
    黄色く色付き始める頃

自然の生き物や植物の様子から、
その季節特有の時期を
判断する目安としては、
かなり分かりやすいものです。

とくに“芒種末候”の梅の実が
熟し始める頃というのに
起因して梅雨と呼ばれるように
なったといわれています。

 

全国の地域ごとに異なる田植えシーズン。
品種や生育環境でも微妙なズレがあります。

そんな昔の田植えとは異なり、
現在の田植え事情は、
種もみの品種改良や
農協から育苗を購入、
田植え機による田植えなど、
かなりの省力化が行われています。

とくに、
品種改良された種もみの苗は、
害虫や病害、不純な天候への
強い耐性があるのが特徴です。

一般的な田植えシーズンは
次の時期に分類されています。

  • 北海道/5月下旬
  • 東北/5月中旬〜下旬
  • 関東(千葉/4月下旬、
    茨城・栃木/5月上旬、
    神奈川・群馬・東京
    /6月上旬〜中旬)
  • 北陸/5月上旬〜中旬
  • 中部/5月中旬〜下旬
  • 近畿
    (三重・滋賀
    /4月下旬〜5月上旬、
    京都/5月下旬、
    大阪・兵庫・奈良・和歌山
    /6月上旬)
  • 中国/5月中旬〜6月上旬
  • 四国/5月下旬〜6月中旬
  • 九州/6月中旬〜下旬
  • 沖縄8/月上旬〜中旬

しかし、
早生種、晩生種などの品種ごと、
同じ地方でも寒暖差、
二毛作・二期作など、
田植え時期が異なることも
多いようです。

苗の高さが12〜15センチ、
本葉が3〜5枚、
気温が15℃以上というのが、
ひとつの判断基準となっています。

ちなみに、酒米(酒造好適米)の
「山田錦」の田植えは、
全国シェアの26%を誇る兵庫県下で
6月上旬に行われています。

美味しい食米、旨い酒米ともに、
昔ながらのつくり方を踏襲しつつ、
より生育に適した環境のもと、
これから夏にかけて
スクスクと育っていきます。

「桜鯛」と「サクラダイ」。実は、別の魚です

「桜鯛」を楽しむなら、ぜひ挑戦したい“松皮造り”。

年に一度巡ってくる
春を告げる桜の季節は、
桜の蕾がほころぶ頃から散るまで、
わずか10日ほどですが、
名所でなくても、
桜並木の間を車で走り抜ける時など、
“春だな”と、
つい口を衝いて出るほど
王道の春の風物詩です。

最近、ソメイヨシノの色が
薄くなったのではという噂があります。

学術的な解明とまでは
いっていませんが、
どうやら昨今の気候不順も
少なからず関係しているようです。

花びらに含まれる
アントシアンという赤い色素は、
寒いと分解されずに
花びらの中にとどまるのですが、
暖かいと分解されて樹木に吸収。

また、寒い時に咲くほど
アントシアンが逃げないとのこと。

地球が少し暖かくなったなど、
気候が以前とは
異なっているようですが、
あの儚げな薄ピンクの花の色、
願わくば春の象徴として
今後も楽しみたいものです。

そんな春の象徴の桜を
名前に冠した「桜鯛」は、
桜が咲く3月から6月にかけて
水揚げされる“真鯛”の、
この時期だけの呼び名です。

これから初夏にかけて産卵期を迎え、
「桜鯛」は、オスメス共に、
色鮮やかな繁殖色になります。

とくにこの時期の「桜鯛」のオスは、
顔のピンク色がさらに鮮やかに発色し、
桜の花びらを散らしたような
白い斑点が現れます。

産卵に備えて身体に栄養を蓄え、
オスの白子やメスの卵巣も大きく育ち、
まさに“旬”ならではの
美味しさを堪能できるのが、
この時期。

スーパーの店頭にも
“旬”の食材として
当たり前のように並びます。

「桜鯛」を美味しく楽しむなら、
やはり“お刺身”が一番。

ポカポカと暖かくなり始めるこの季節、
合わせるのはキリッと冷えた
冷酒がオススメです。

天然の「桜鯛」が
一尾丸ごと手に入ったのなら、
ぜひ挑戦したいのが
“松皮造り(焼き霜造り)”。

鱗や内臓を丁寧に取り除いた後、
三枚におろすのは、
一般的な切り身と同じです。

刺身の場合は皮を剥がしますが、
“松皮造り”は脂ののった
皮目をいただくのがポイントなので、
皮の面を下に焼き網に乗せて、
全体に焼き色がつくまで
遠火で炙りましょう。

後は刺身のように切り分けて
美味しくいただくだけ。

焼いた皮の香ばしさと
身のプリプリ感に、
この上ない贅沢なひと時を
感じさせてくれます。

また、「桜鯛」は
白子や卵巣を持っていることが多く、
白子や卵巣があったら、
余分な部分を取り除いて
丁寧に水洗いし、
数分茹でて全体に熱処理をします。

その後は冷水で洗って、
ポン酢で食べたり、焼いたり、
甘辛く煮たり、
天ぷらなども美味しくいただけます。

必ず熱を加えて
寄生虫対策を取るのをお忘れなく。

「桜鯛」と「サクラダイ」に、「麦わら鯛」も加わって、どれを食べましょうか。

「桜鯛」は、「サクラダイ」と
カタカナ表記される場合も
ありますが、本来は
別の種類の魚の名前です。

「サクラダイ」は
ハタ科の15センチほどの小さな魚で、
産まれた時は全てがメス、
成長するとオスに性転換する
ミステリアスな魚。

その名の通り、鮮やかな赤い身体に
桜の花びらのような模様が
クッキリと現れるのが特徴です。

面白いのが、
「真鯛」と「サクラダイ」は
同じ水深を好み、食性も近いため、
釣りの際に一緒に釣れること。

春の釣りで、
「桜鯛」は釣果を競われ、
「サクラダイ」は外道魚
(狙っている魚ではなく、
釣れてしまう魚)
という悲しい扱いに。

一部に、“繁殖期の「桜鯛」は
全エネルギーを産卵に使うので、
栄養がそちらに取られ
肉は痩せ細る”という「桜鯛」に
厳しいコメントがある一方、
“「サクラダイ」は、白身魚で
皮目に脂がのって煮付けが美味しい”
というグルメコメントもあります。

産卵期を迎える多くの魚が
“旬”とされるという意味では
筋違いで、「サクラダイ」は
美味しく食べられる魚ということの
紹介と捉えたいところです。

残念ながら「サクラダイ」は
あまり店頭で見かけることはなく、
ほとんどか釣りの時に出会う魚で、
釣れたら逃す魚。

持ち帰って煮付けに挑戦する
価値はありそうです。

サクラダイ

産卵を終えた「桜鯛」は、
途端に色の鮮やかさを失い、
全体的に地味な茶色系に
落ち着きます。

これを「麦わら鯛」や
「落ち鯛」と呼び、
産卵後の味落ちは否めません。

しかし、お手頃価格で買えるので、
意外と重宝するのが「麦わら鯛」。

風味そのものは、
「桜鯛」と比べると、
やや劣りますが、
塩焼きにすれば身が締まり、
煮付けにしても身が柔らかく
味の染みも文句なしの美味しさを
味わえるはずです。

贅沢に“旬”をいただく「桜鯛」。

霜降りの牛ステーキと比較すれば、
意外と手頃なのかも知れません。

季節を愛でる気持ちで、
冷酒と一緒に「桜鯛」、
さあ、いただきましょう。

春が“旬”の「鰆(サワラ)」。さっぱりとした淡白な味わいが魅力です。

「鰆(サワラ)」の“旬”に敏感なのは、釣り人たち。

テレビのクイズ番組や
漢字検定の影響もあって、
ここ数年続いている
難読漢字への興味は、
まだまだ続きそうな気配です。

難読漢字といえば、
“魚へん”の漢字が書かれた湯飲みを
寿司屋や自宅の食器棚、
田舎のおばあちゃんの家…
どこかで見たような
昔の記憶が蘇ります。

「鯛(タイ)」
「鮭(サケ)」
「鰻(ウナギ)」
「鰯(イワシ)」など、
よく目にする漢字なら
即答できるものの、
「魳(カマス)」
「鰈(カレイ)」
「鰒(フグ)」などは、
途端に記憶が怪しくなります。

魚につきものの“旬”を意識して、
“魚へん”に春夏秋冬の
それぞれの漢字を当てた時の読みは、
意外と難読です。

「鰆」はサワラ、
「鰍」はカジカ、
「鮗」はコノシロ。

残念ながら、“魚へん”に
夏を組み合わせた漢字はなく、
「魚夏」という熟語でワカシと呼び、
出世魚ブリの40センチ以下のサイズの
呼び名です。

これは関東圏だけの呼び名らしく、
それ以外で地域では
“魬(ハマチ)”のことを指します。

“魚へん”に四季が
組み合わせられているということは、
当然、その魚の旬は当てはめられた
季節と予測できますが、
スーパーの店頭で、賑やかに季節を
告げるほどのメジャーな魚
という訳でもないようです。

さて、今回はこの中から、
ちょうど今の時期、
春が旬の「鰆(サワラ)」を
取り上げます。

「鰆(サワラ)」はサバ科の回遊魚で
北海道南部から沖縄にかけての
広い範囲で、
“旬”の時期以外でも
水揚げされているようです。

とくに最近は温暖化の影響による
海水温の上昇に伴って、
日本海側で多く水揚げされており、
2019年(平成31年/令和元年)の
漁獲量1位は福井県で、
京都府、石川県、福岡県、長崎県と
続きます。

「鰆(サワラ)」が
スーパーなどの店頭に並ぶのは、
もっぱら切り身。

というのも、
体長約60センチ以上が
「鰆(サワラ)」の標準サイズで、
大きいものでは
1メートルを超えるものもいるため、
捕獲されたままの姿で
店頭に並ぶ機会は稀のようです。

ちなみに、60センチ以下のものは
“サゴシ”と呼ばれる出世魚。

そんな「鰆(サワラ)」に
一喜一憂するのは全国の釣り人たち。

「鰆(サワラ)」の
釣りシーズンともなると
餌となるカタクチイワシの
群れを追って、
日本の沿岸近くまで回遊してくる魚を
狙います。

突堤や防波堤から釣れるのは
60センチ未満の
「鰆(サワラ)」に成長する前の
“サゴシ”サイズが多く、
「鰆(サワラ)」を釣るのなら、
船からのルアー釣りが基本のようです。

肉食大型魚で性格は獰猛そのもので、
ルアーにかかってからの
魚の引きの強さは
釣り人たちにとって醍醐味のようで、
シーズンともなると、
より大きな「鰆(サワラ)」を狙って
数多くの釣り人たちは
海のスポットへと向かいます。

釣り上げた「鰆(サワラ)」の
歯は鋭く、
その名前の由来となった
“狭腹(さはら)”にもあるように、
細く平たい体型が特徴的な魚です。

 

「鰆(サワラ)」の“旬”は、年2回。味わいも異なります。

いきなり前言撤回となりますが、
実際に「鰆(サワラ)」の“旬”は、
春と秋の年2回。

まずは、春の“旬”。

関西を中心とした海域では、
5月〜6月頃、
産卵を控えた「鰆(サワラ)」が
瀬戸内海へと回遊して来ます。

この時期の「鰆(サワラ)」は、
さっぱりとした味わいで淡白、
身は柔らかく、
煮付けよりは味噌を使った西京焼きや
竜田揚げで食べられています。

関西では、
真子(卵巣)や白子(精巣)も、
一緒に食べられるのも特徴です。

そして、11月〜翌年2月の
秋冬の“旬”は関東の海域。

この時期に
産卵を控えた「鰆(サワラ)」は、
雑食気味でイワシやサンマを食べて、
産卵のための栄養を蓄えます。

そのため脂がのった
濃厚なこってりとした味わいが
“寒鰆(カンサワラ)”の特徴です。

これは、
太平洋から瀬戸内にかけて
回遊するものと
東シナ海から日本海を回遊するものの
生息域が異なるため。

同じ種類の
「鰆(サワラ)」なのですが、
関東圏以外は春、
関東圏は秋から冬が“旬”
とされています。

また、「鰆(サワラ)」の身は白く、
白身魚のようですが、
成分的には赤身魚に分類されています。

「鰆(サワラ)」は、日常的に
食卓に上がる魚ではありませんが、
この時期の店頭には必ず並ぶ
季節を告げる魚のひとつです。

まずは春が“旬”のさっぱりとした
味わいを楽しんでみましょう。

そして、その味わいを
記憶の端にとどめておいて、
秋から冬に出回る濃厚な味の
“寒鰆(カンサワラ)”を食べて、
その違いを試してみませんか。

春の「鰆(サワラ)」には、
すっきりとした冷酒、
秋冬の“寒鰆(カンサワラ)”には
燗酒がおすすめです。