ひと夏の熟成で磨かれた日本酒「ひやおろし」。

お待ちかねの「ひやおろし」は、9月9日が解禁日です。

夏から秋への季節の移り変わり
ともなると、日没時間が早くなり、
夜半には虫の音が聞こえ、
そしてなにより、
時折心地よい涼しい風が吹くなど、
自然の“表情”から、
秋の気配を実感する
機会が多くなりました。

そんな、秋を肌で感じはじめる
ころのお楽しみのひとつが、
「ひやおろし」の解禁です。

「ひやおろし」の解禁日は、
重陽の節句にあたる、
毎年9月9日。

重陽の節句は、
古来より伝承される五節句のひとつで
、“菊の節句”とも呼ばれ、
身体に溜った邪気を払い、
長寿を願って菊を飾ったり、
菊の花びらを浮かべた酒を
酌み交わすなどの風習が行われた、
大切な季節の節目のひとつ
とされてきました。

「ひやおろし」は、
その日を解禁日とする、まさに
秋を告げる日本酒といえます。

一般的な日本酒は、
火入れと呼ばれる加熱処理を、
出荷する前に2回行うのが基本。

火入れをするタイミングは、
醪(もろみ)を搾って
日本酒を貯蔵する前と、
日本酒を瓶に詰めて出荷する前で、
この火入れによって酵母を殺し、
酵素を失活させることで、
酒質を劣化させる雑菌の繁殖を防ぎ、
酒質を安定させます。

それにくらべると、
「ひやおろし」は、冬から春の期間に
、醪を搾り、火入れ(低温加熱殺菌)
をした“しぼりたて(新酒)”を
ひんやりとした蔵の中で
ひと夏かけて熟成。

出荷時に火入れをせずに
瓶に詰めるお酒です。

約半年間の熟成によって香りが整い、
味わいも角がとれて丸くなり、
酒質が格段に向上した
“生詰め酒”です。

この“生”を冠した日本酒には
いくつかの種類があり、
いずれのお酒にも
火入れが関わります。

● 生酒…
火入れ一度もしない酒で、
しぼりたてのみずみずしい
爽やかさを楽しむ酒。
火入れをしていない、
とてもデリケートなお酒。

● 生貯蔵酒…
貯蔵前の火入れを行わず、
出荷する前に一度だけ
火入れを行うお酒です。
生酒に近いお酒で、
特有の風味を持った
新鮮な香りや味わいを楽しみます。

● 生詰め酒…
「ひやおろし」が生詰め酒の代表格。
ひと夏を越えて熟成させるため、
丸みや深みの増した
香りや味わいが特長です。

きもとひやおろし体感セット

菊正宗では、
華やかな香りを纏った「大吟醸」
と、旨みが冴えわたる「本醸造」
の2種類をご用意しています。

火入れにより酒質を安定させた
「生酛本醸造」と「生酛大吟醸」
と一緒に、ぜひ飲みくらべ、
味の違いを体感するのも、
この時期だけの醍醐味。

また、秋口だけの季節限定商品
なので、早めに売り切れる
ことが予想されます。

見かけたら、
早めにお求めいただくことを
おすすめします。

松茸と日本酒

江戸時代、「ひやおろし」は酒蔵の近くでしか飲めない貴重なお酒。

「ひやおろし」を漢字で書くと、
“冷や卸し”。

江戸の昔、冬に搾った新酒が
劣化しないように春先に
火入れをして大きな桶に貯蔵。

夏の盛りを過ぎて
秋風が吹きはじめる
外気と貯蔵蔵の中の温度が
同じくらいになったころに、
“冷や”のまま、大きな桶から樽に
“卸(おろ)し”て、
火入れをせずに出荷したことから
「ひやおろし」と呼ばれました。

当時は、保存上の問題で広く流通
できなかったため、酒蔵の近くに
住む人しか飲めない貴重品で、
“秋の酒”として
重宝されたといいます。

新酒の荒々しさが消え、
味に丸みがでて、
ほどよく熟成した「ひやおろし」は、
酒のもっとも飲みごろ
とされていたようです。

厳密にいうと、
「ひやおろし」は製法、
別名の「秋あがり」は
酒の質を表す言葉です。

火入れ後に貯蔵し、
出荷時に火入れをしないお酒は、
秋の出荷に限らず「ひやおろし」
ということになります。

一方、「秋あがり」は、
新酒の荒々しさが消え、
味に丸みがでて、ほどよい熟成による
飲み頃の酒をいいます。

酒質が良くない場合には
“秋落ち”と表現されることも。

ということならば、“秋あがり”、
“秋落ち”の「ひやおろし」
があることになります。

そうしたこともあるようで、
全国的には「ひやおろし」という表現
が多く使われているようです。

きもとひやおろし大吟醸

「ひやおろし」が出揃うころは、
秋に旬を迎える食材も目白押しの時期。

脂ののったサンマや秋鮭などの魚介類、
松茸をはじめとするキノコ類、
サツマイモなどのイモ類、
まさに“食欲の秋”がはじまる時期です。

旨い「ひやおろし」を準備して、
味覚の秋を、存分にお楽しみください。

さんまと日本酒