「こどもの日」と「端午の節句」。厳密には、その意味が異なります。
ゴールデンウイークの
最後を飾る祝日は
「こどもの日」です。
これから長期休暇が
スタートする4月29日の
“昭和の日”とくらべると、
明日から“仕事”や“学校”となる
少し寂しさを感じる日なのですが、
今年は自宅待機期間も長く、
翌5月6日が振替休日なので、
いつも感じる寂しさは、
幾分緩んでいます。
さて、「こどもの日」と
「端午の節句」は、
しばしば同じ意味として語られる
ことが多いのですが、
厳密には異なります。
江戸時代、
「端午の節句」は男の子の節句で、
女の子の節句は3月3日の
「上巳(じょうし)の節句」
とされていました。
一方、「こどもの日」は、
1948年(昭和23年)に、
国民の休日として
「国民の祝日に関する法律」
によって制定されたもので、
“こどもの人格を重んじ、
こどもの幸福をはかるとともに、
母に感謝する”
と定義づけられています。
つまり、子どもの成長を願う
とともに、母親に感謝する日
ということです。
現在、子どもの初節句を行うのは、
「こどもの日」ではなく、
男の子は5月5日、女の子は3月3日
にそれぞれ行います。
ただし、家風や地域によって
異なるようです。
子どもたちの健やかな成長を願った
「こどもの日」は、
世界のさまざまな国で
制定されていますが、
その国が歩んできた歴史の中で、
ふさわしい出来事を元に
「こどもの日」を制定しているので、
世界共通の日という訳では
ありません。
1925年(大正14年)に、
スイス・ジュネーブで開催された
子どもの福祉世界会議で 、
6月1日を“国際こどもの日”
として制定。
また、1949年(昭和24年)にも、
ソビエト連邦・モスクワで開かれた
国際民主婦人同盟の会議で、
同じく6月1日を“国際こどもの日”
という提案があったことを受けて、
旧社会主義国(中国、モンゴル、
ベトナム、ロシア、ポーランド、
ルーマニア、キューバなど)、
世界の約40カ国が6月1日を
「こどもの日」としています。
また、1954年(昭和29年)に、
国連が11月20日を
“世界こどもの日”と宣言し、
国際デーのひとつに制定
されていますが、この日を
「こどもの日」としている国は、
カナダ、エジプト、
バングラディシュ、パキスタンの
わずか4カ国に過ぎません。
「端午の節句」は別名“菖蒲の節句”。尚武に通じる男児の節句です。
「端午の節句」は、
奈良・平安時代に中国から伝わった
“端午”の行事に由来します。
宮中の貴族の行事を綴った文献に
“菖蒲の髪飾りを付けた人々が
武徳殿に集まって、天皇から薬玉
(くすだま/薬草を丸く固めた
飾り付け)を賜った”
という記述が残されています。
もともとの“端午”という行事は
菖蒲やヨモギなどの
強い香りの草による
中国の魔除けの行事が
日本に伝わったもので、
「端午の節句」は
“菖蒲の節句/あやめの節句”
とも呼ばれ、
「上巳の節句」が
“桃の節句”と呼ばれていることと
“対”を成しています。
江戸時代に、この“菖蒲”の読み方が
“尚武(武を尊ぶ)”
に通ずるということで、
男の子の節句となりました。
また、鎌倉時代には、すでに
「端午の節句」が男の子の節句として
定着していたという説もあります。
「端午の節句」に、
鯉のぼりを立てるのは、
日本独自の風習です。
もともと武家屋敷の玄関に、
立身出世、武運長久を祈願して
のぼりや旗指物を飾ったのを真似て、
江戸中期頃に商人が行うように
なった風習です。
中国の故事“登竜門
(竜門という滝を多くの魚が
登ろうとしたところ、
鯉だけが登り切って竜になった
という立身出世を象徴する逸話)”
にヒントを得て鯉ののぼりを掲げた
ところ、それが次第に庶民に広がり、
「端午の節句」に大きな鯉のぼりを
立てるようになりました。
東洋の多くの国では
“竜/龍”は神を司る存在とされ、
崇められています。
中国には神獣や霊獣の伝説が多く、
皇帝のシンボルとされています。
日本では、古来より水の神として
民間信仰の対象とされ、
祀られる神社には龍神池や龍神沼など
、霊験あらたかなパワースポットが
存在することが多いようです。
また中国から伝来した信仰と
結びついた“青龍”は、
東方を守る四神のひとつ。
京都市街は四神により守られている
という伝説があります。
一方、西洋では、ドラゴンと訳され、
蛇の怪物として恐怖の象徴です。
この時期だけの日本酒の楽しみ方に、
“菖蒲酒”があります。
フラワーショップやホームセンター、
ネット販売等で出回っている
サトイモ科の菖蒲の根を
薄めにスライスして
冷酒に入れて待つこと30分。
香気が強くすがすがしい
初夏の一杯が楽しめます。
残念ながら、
アヤメ科の花菖蒲は香気が弱いので、
必ずサトイモ科の菖蒲を
使ってください。
庭やプランターに植えて繁殖させれば
、来年も楽しめます。