雑節「半夏生」の大きな目的は、疲れた身体を癒すこと。

農家にとっては大切な雑節「半夏生」。

今年の「半夏生(はんげしょう)」は
、7月1日(水)もしくは、
7月1日から5日までの5日間、
夏至から数えて11日目にあたります。

「半夏生」は、節分や彼岸、
土用などと並ぶ雑節のひとつで、
中国から伝わった二十四節気の
夏至の終侯“半夏生ズ”から
派生した日本独自の歳時。

大陸気候の中国と異なる
島国日本の四季に適応した歳時が、
この雑節です。

とくに「半夏生」は、
農家に代々受け継がれてきた、
とても大切な節目とされています。

農業人口が減った現在、
節分や彼岸とくらべると、
やや地味な歳時で、
都会に暮らす人々が意識する機会は
そう多くありません。

古来、農業中心だった日本において、
「半夏生」は“畑仕事を終える”
“水稲の田植えを終える”
目安となる日とされていました。

どんなに気候が不順な年であっても、
「半夏生」以降は田植えをしない
という戒めを込めた言い伝えが
数多く残されています。

その背景には、田植えで疲れ切った
身体を癒すために、
強制的に休む日を設けるという、
昔の生活の知恵だと
考える説もあるようです。

「半夏生」の日は、
昔から“物忌み(ものいみ)”の日
ともされていました。

“物忌み”とは、
神聖なものを祀るために、
ある期間中、食事や行動を慎み、
不浄を避け、家内に籠ることで、
神聖な存在に穢れ(けがれ)を
移さないことを意味します。

その土地ごとに
伝聞や習慣は異なります。

天から毒気が降るので
井戸に蓋をして井戸水を飲まない、
酒肉を食べない、
この日に採った野菜を食べない、
地荒神(ちこうじん/畑の神)を祀り、
お神酒・麦団子を供える、なかには、
この日から5日間、農作業を休むなど、
「半夏生」を迎えるスタイルは、
地域によってさまざまです。

関西では、「半夏生」にタコを食べる文化があります

「半夏生」のとらえ方は、
大きく二つに分かれます。

ひとつめは、「半夏生」の期間に
仕事をしたり、出歩くことを
禁じる“戒め”が込められており、
疲れた身体を癒すことです。

三重県熊野・志摩地方では
“ハンゲという妖怪が徘徊する”、
青森県では
“半夏生の日の後に田植えをすると、
1日に1粒ずつ収穫が減る”、
群馬県では
“ネギ畑に入ることは禁忌”、
埼玉県では
“竹の花が咲いたり消えたりする時期。
それを見ると死ぬので、
竹林に入ることは禁忌”など、
家で静かにしていること
を説いています。

もうひとつが、
食餌による身体の栄養補給
や胃を優しく休めること。

香川県の
“その年に収穫された麦で
うどんを打ち、農作業を
手伝ってくれた方々に振る舞う風習”、
福井県大野市では、
“江戸時代に藩主が、
「半夏生」の時期に農民に焼き鯖を
振る舞ったという逸話を元に、
現在も「半夏生」に焼き鯖を食べる”
ということなど。

うどんは消化吸収にすぐれ、
即効性のあるエネルギー源が確保でき、
鯖に含まれる栄養素は
疲労回復や細胞の再生に効果
があるとされています。

関西の一部のエリアでは、
「半夏生」にタコを食べる習慣が
伝わっています。

一説では、田植えを終えた稲の根が、
タコの八本の足のように
四方八方にしっかりと根付くことを
願ったり、秋の収穫時期に、
タコの吸盤のように実ることを
願った習慣といわれています。

また、タコにはタウリンが
多く含まれており、
疲労回復や肝機能の強化、
高血圧の改善など、
さまざまな効能が認められています。

田植えで疲れた身体を癒すのに、
利に叶った食べ物といえるでしょう。

2017年には、大阪に本部を置く
日本コナモン協会が
“蛸半夏生キャンペーン”を設け、
「半夏生」にタコを食べることを
広めています。

もともとは
タコ焼きからの派生ですが、
兵庫・明石の名産がタコ
ということもあり、
関西の食文化の推奨に
取り組んでいるということです。

農業に限らず、
疲れの出るこの時期、
身体を休めて
疲労回復に努めるのは、
好ましい習慣です。

キリッと冷やした冷酒の肴に、
タコの酢の物など、
さっぱりとした食で
癒すことをオススメ。

夏本番は間近です。