消費税を含んだ「総額表示」が、2021年4月1日から義務化されます。

義務化される「総合表示」は、「消費税転嫁対策特別措置法」の中のひとつの措置。

4月1日から、店頭の商品価格表示
(掲載価格、値札、棚札など)、
チラシ、カタログ、広告、
ECサイトに記載している
価格表記に対して、
税込価格の表示である
「総額表示」が義務化されます。

税抜価格の表示だと、買い物客は
自分自身で計算しない限りは、
会計時にならないと本来支払う
正確な金額がつかめません。

また、税抜表示をしている事業者と
税込表示をしている事業者が
混在しているため、
価格を比較しにくく、判りにくい
などデメリットもあります。

それが、「総額表示」を
義務化することで、消費者が
商品やサービスの購入などを
検討する際、すべての価格が
税込表示されている状態となり、
値札やチラシを見ただけで、
本来支払うべき価格が
簡単に判るようになります。

つまり、商品比較や、
商品購入時の判断が
しやすくなるということです。

消費税が8%に引き上げられた
2014年(平成25年)に
「総額表示」が義務化されていれば、
こうした混乱が防げたのですが、
同時に「消費税転嫁対策特別措置法」
という時限立法を設けたことで、
消費税が10%となった現在まで
先延ばしとなりました。

「消費税転嫁対策特別措置法」は、
取引上、弱い立場にある事業者を
守る法律です。

具体的に、
「消費税転嫁対策特別措置法」は、
次の4つの措置で構成されています。

【1.消費税の転嫁の拒否の禁止】
価格交渉において
弱い立場にある中小企業が
大企業などと取引する際に、
消費税の転嫁を拒否されないように
するためのものです。

消費税に関わる“減額”“買いたたき”
“商品購入,役務利用
又は利益提供の要請”
“本体価格での取引の拒否”
“報復行為”を禁止するというもので、
この特別措置法のキモといえます。

【2.消費税転嫁の阻害の禁止】
消費税に関連するような形での
広告や宣伝が禁止されるというもので、
“消費税は当店が負担”
“消費税増税分を値引き”
“消費税相当分をポイント還元”など、
消費税の転嫁の阻害を
助長するものとして禁止されています。

しかし“感謝祭5%offセール”のように、
消費税との関連が分からなければ、
実態はどうであれ認められています。

【3.価格表示の特例】
表示価格が税込価格であると
誤認されないための
措置を講じていれば、
税込価格を表示しなくてもよい
とする特例です。

チラシや広告、
店内の価格表示などにおいて、
税抜価格を表示して良い
ことになります。

また、税抜価格を大きな文字で強調し、
その下などに()などをつけて
税込価格を小さめに表示するといった、
税抜価格の強調表示も認められます。

【4.一部カルテルの容認】
カルテルとは、事業者などが
商品の価格などを共同で取り決め、
競争を制限する行為のことで、
一般的にカルテルは
独占禁止法によって禁止されています。

しかし、特例により、
“転嫁カルテル(消費税の転嫁に
関する共同の取り決め)”と
“表示カルテル(増税後の
価格表示に関する共同の取り決め)”
が認められています。

4月1日からの「総額表示」の義務化
ばかりが報道されていますが、
時限立法である
「消費税転嫁対策特別措置法」
そのものの効力が3月31日で
失効するということなのです。

特別措置が失効したとはいえ、
取引上の優越した地位にある事業者が、
その地位を利用して下請業者等に
圧力をかけるなどの行為は、
独占禁止法や下請法などで
厳しく守られ、
公正取引委員会等の
指導対象となっています。

 

「総合表示」の義務化により、買い物しやすく変わります。

さて、この
「消費税転嫁対策特別措置法」
の措置のひとつ
“価格表示の特例”の解除に伴って、
義務化されるのが
「総額表示」ということです。

●1,000円(税抜)
●1,000円(税別)
●1,000円(税抜価格)
●1,000円(税別価格)
●1,000円(本体価格)
●1,000円+税
●1,000円+消費税
●※表示価格は税抜です
●※価格はすべて税別価格です

これまでOKとされてきた
上記表示は認められず、
下記の表示に改めなくてはなりません。

●1,100円
●1,100円(税込)
●1,100円(税抜価格1,000円)
●1,100円(うち消費税額等100円)
●1,000円(税込1,100円)
つまり、消費者が支払う価格の
総額が表示されていれば、
ほかに“税抜価格”“消費税額”が
表示されていても問題ありません。

また“1,000円(税込1,100円)”
という表示も、総額がしっかりと
記載されているため、
「総額表示義務」を
果たしていることになります。

一方で、“100円均一ショップ”
など店の名称(屋号)は
対象とはなりませんが、
店内における価格表示は、
消費税額を含んだ総額を
表示する必要があります。

また、“1,000円均一セール”
といった販売促進イベントなどの
名称についても同じく対象外です。

消費者にとって「総合表示」は、
利便性の高い価格表示です。

視覚的に価格把握ができるのは
もちろんのこと、
複数店のチラシ比較も
容易になります。

4月以降、意外と消費行動が
高まるかも知れません。