かつて日本には「専売制」がありました。

プロ野球開幕。今年も、選手の「専売特許」ともいえる職人技に期待。

3月26日(金)、
プロ野球公式戦が開幕しました。

昨年は、新型コロナウイルスの
感染拡大による自粛続きで
大きくずれ込み、開幕は
約3カ月遅れの6月19日(金)、
120試合を消化した
セパの優勝チームが雌雄を決する
日本シリーズが終わったのは
11月25日(水)のことでした。

今年はソーシャルディスタンスを
意識した上で、観客数を制限して
試合が行われますが、やはり、
しばらくは自宅での
テレビ観戦が好ましいようです。

熱戦を伝える試合実況で
“0対0で迎えた最終回、
ノーアウト1塁。

ここは得点圏に
ランナーを進めたいところ。

“おーっとベンチが動きました。
代打A選手の登場です。”

“A選手といえば犠打の名手、
なかでも犠牲バントは
彼の「専売特許」。
ここは間違いなく
バントでランナーを送る
作戦のようです”

…などという解説が
テレビから聴こえることがあります。

ここでいう「専売特許」とは、
その人が有する
特殊技能のようなもので、
いわゆる“おはこ”“十八番”
といった意味合いで
引用される言葉です。

実際の「専売特許」は
物の発明や方法を独
占することができる権利です。

“著作権”という
似た意味を持つ言葉もありますが、
こちらは音楽や漫画、映画などの
文芸や美術、エンターテイメントの
“表現”の分野で独占できる権利
を表しています。

また「専売」に限ると、
国や特定の人、団体が
独占して販売する
という意味を持ちます。

これと似た意味を持つ“独占”は、
販売に限らず独り占めにする
という意味があり、
「専売」とは少し意味が
異なってきます。

普段何気なく使っている言葉ですが、
微妙なニュアンスが異なる
ということを改めて実感します。

戦後すぐ、「専売制」により生産流通管理を徹底しました。

さて、タイトルにも掲載したように、
かつて日本にも
「専売制」がありました。

江戸時代、米や紙、石炭、漆、
特産の衣料材料、茶、タバコなど、
さまざまなものが
藩の財政を潤すための専売品に。

しかし、多くの場合、
領民への圧政となり、
各地で農民一揆が多発しました。

明治維新以降の近代国家となり、
財政確保という目的以外に、
品質保証、安全管理、公衆衛生上
の意味合いを含めて
1949年(明治24年)に
タバコ、塩、樟脳、あへん、
アルコールの専売制を実施。

戦後になり、
タバコ、塩、樟脳を取り扱う
日本専売公社がつくられました。

タバコは1985年(昭和60年)に
日本たばこ産業の発足と同時に廃止、
塩も1997年(平成9年)に
専売制が廃止され、
2002年(平成14年)に完全自由化。

樟脳は、
合成樟脳が出回ったこともあり、
もっと早くの1962年(昭和37年)に
廃止されていました。

現在、専売制が執られているのは
アヘンのみ。

国際的な禁止薬物であるがゆえ、
徹底した管理の元、
鎮痛薬や研究に利用されています。

アルコール専売法が開始されたのは、
1937年(昭和12年)のこと。

アルコールというと
酒類アルコールを思いがちですが、
ここでは“酒精”と呼ばれる
エチルアルコール(エタノール)
のことです。

エチルアルコールは、各種溶剤として
塗料や医薬品、セルロイドなどに
用いられるほか、
エーテルや火薬の原料
ともなるため、
合成化学品の原料として
重要な意味を持っています。

また、“酒精”の成分は
醸造用のエチルアルコール
と同じ構造で、
こちらも“酒精”と呼ばれ、
食品添加物に指定。

こちらの“酒精”は、
糖蜜やサトウキビなどの糖質と、
とうもこし、さつまいも、
じゃがいもなどのデンプンを原料に、
それらを糖化、発酵後、
蒸留してつくられ、
日本酒の醸造工程において、
醸造用アルコールとして
利用されています。

このアルコール専売法は、
2001年(平成13年)に
廃止されると同時に、
アルコール事業法へと移行しました。

この法律において、酒類は、
“アルコールの酒類の原料への
不正な使用の防止に配慮しつつ、
アルコールの製造、
輸入及び販売の事業の運営等を
適正なものとする”
と定められています。

時代に応じて変わっていった
「専売制」。

現在は、デジタル化が進み
流通管理も大きく変貌するなか、
セキュリティを軸とした
新しいビジネスモデルが生まれる
節目を迎えています。