“松葉ガニ”“越前ガニ”などは、「ズワイガニ」別の呼び名。
今年の「ズワイガニ漁」の
解禁日は11月6日。
過去のデータを見ると、
毎年、暦の上での冬の始まりとされる
“立冬”前後に解禁されることが
多いようで、今年の“立冬”は、
解禁日の翌日の11月7日でした。
ちょうど肌寒さを感じ始める
秋真っ只中のこの季節に、
日本海沿岸各地で「ズワイガニ」の
底引き網漁がスタートし、
来年の5月31日までの9カ月にわたって
「ズワイガニ」が水揚げされます。
冬の味覚の代表格ともいえる
「ズワイガニ」は、
水揚げされる地域やブランド名、
オスメスによって
さまざまな名前を持っています。
京都から島根県にかけて水揚げされる
オス全般を“松葉ガニ”、
メスを“セコガニ”と呼び、
福井県で水揚げされる
オスは“越前ガニ”、
メスは“背子(せいこ)ガニ”、
最近よく耳にする石川県で
水揚げされるオスを“加能ガニ”、
メスを“香箱ガニ”などと
呼ぶのが有名なところ。
とくに、
“松葉ガニ”“越前ガニ”などは、
昔から知名度が高く、
別の種類のカニと思われがちですが、
同じ種類なので、
お間違えのないように。
さらに、例えば、
“松葉ガニ”の生息エリアであっても
京都丹後の間人漁港の
“間人(たいざ)ガニ”や
兵庫香美の柴山漁港の“柴山ガニ”、
兵庫県豊岡の津居山漁港の
“津居山ガニ”など、
漁港の名前や漁獲漁船の名前の
タグをつけてブランド化されたものが
市場に広く出回るなど、
「ズワイガニ」の品質管理を徹底する
ことで、その価値を高めています。
季節の旬のモノの初セリ値は
ご祝儀相場といわれ、破格ともいえる
高値をつけることが一般的です。
今年の初セリですが、
鳥取県の鳥取港では、
“松葉ガニ”一杯(一匹)、
最高値の90万円で落札されました。
2019年の初セリでは
一杯500万円の値がつき、
“競りで落札された最も高額なカニ”
としてギネス世界記録に
認定されているとのこと。
さて、
今年の初セリ価格を並べてみると、
“間人ガニ”は5杯で111万円、
“越前ガニ”が一杯80万円、
“柴山ガニ”は一杯約223万円
にもなり、“加能ガニ”は
ギネス記録と並ぶ一杯500万円もの
驚くような値がつきました。
あくまでも初セリ値なので、
市場に出回る「ズワイガニ」は
ここまで高額ではありませんが、
それでも、市場に並ぶ価格を見ると、
やや“高嶺の花”感はあります。
さて、
「ズワイガニ」の甲羅についている
黒いブツブツが気になったこと
はありませんか。
これは寄生虫“カニビルの卵”です。
見た目は気持ち悪いものの、
甲羅に付着して成長するだけで
可食部に影響はなく、
一説では、甲羅がキレイなカニより
黒いブツブツがついたカニの方が、
身がビッシリと詰まっている
といわれています。
これには、
カニが脱皮することによって
ひと回り以上も大きく成長するという
生態に深く関わっているのです。
脱皮直後は、それまで付いていた
“カニビルの卵”も一緒に脱ぎ捨て、
また脱皮前の身しか入っていないので
甲羅の中はスカスカの状態。
“カニビルの卵”が
たくさん付着しているのは、
脱皮してから時間が経っていると
想像することができ、
身が詰まっている可能性が高いと
判断されるのです。
「ズワイガニ」だけでなく、この時期は旬の魚が盛りだくさん。
「ズワイガニ」と同じ時期、
山口島根沖のアンコウ、
兵庫山陰沖のハタハタ、鳥取から福井
にかけて漁れるアカガレイ、
駿河湾の桜エビ、山口下関のトラフグ
日本海側を南下する寒ブリ、
丸々と太って太平洋を南下する
戻りガツオ、三重、千葉、和歌山で
漁獲半数を占める伊勢エビ、
三陸沖のマダコ、広島の真牡蠣、
北海道、東北のエゾアワビ、
北海道のホタテなど、この季節に
食べたい旬の味覚は盛りだくさん。
実は、魚介類の旬とされる
タイミングは2種類あります。
“水揚げの旬”と“味覚の旬”です。
産卵場所に集まってくる
魚群を捕獲する“水揚げの旬”は、
大量に収穫できるので
手頃な価格で市場に出回る時期です。
この時期の
卵巣(真子)や精巣(白子)は
とても美味しいのですが、
体の栄養分などを卵巣や精巣に
蓄えるため、身は痩せ細って、
正直、身の味は落ちます。
一方、“味覚の旬”は、
産卵前に体内に脂肪を蓄え出した
“脂が乗った”状態で、産卵を終えて
再び栄養を蓄え始める時期や水温が
下がって身を守ろうとする時期も、
この“味覚の旬”にあたります。
体に蓄えた栄養分によって、
深い旨みとともに、
風味のある甘みが増した状態が、
“味覚の旬”ということです。
食べ頃を迎えるタイミングは、
魚介類の種類によって
さまざまですが、
「ズワイガニ漁」が解禁される時期に
旬を迎える魚介類は多く、
絶品揃いなので、
まさに“食欲の秋”を
彩ってくれるに違いありません。
「ズワイガニ」を食べるのなら、
やはりお腹いっぱいに堪能できる
“かにすき”。
昆布ベースのやや薄めの白出汁に
カニの旨みが溶け出して香り高い
濃厚な出汁に変わっていきます。
これに合わせる日本酒なら、
出汁の濃厚さに負けない、
濃醇で雅やかな味わいの
「菊正宗 嘉宝蔵 雅」や
余韻のある旨みに吉野杉の香りを
まとった「菊正宗 純米樽酒」が
オススメです。
お好みで冷や、もしくは熱燗、
どちらでも楽しめます。