昨年は思いも寄らない静かな正月でしたが、今年は賑やかな正月が戻ってきました。
地域によって多少異なるものの、
昭和の時代が終わる頃あたりまでは、
繁華街や神社近く以外のお店の多くは
正月休みを取っていました。
そのため、正月ともなると、
年末商戦の喧騒がなかったかのように
街はとても静かで、
初詣や映画に出かける以外は、穏やかに
家でテレビを観ながら過ごす機会が
多かったようにも思います。
そんな緩やかな昭和から
平成へと変わり、
時代は大きく動き始めました。
24時間空いている
コンビニが全国各地に増え、
大型商業施設も1月2日から正月の
初売り商戦に突入するなど、
出かける機会の多い、
より便利で賑やかな正月へと
変わっていきました。
それと同時に、
学校や会社の冬の長期休暇としての
印象が強くなり、正月らしい特別感が
年々薄れていくような時代の流れに。
それが、昨年の正月は一変。
新型コロナ禍第3波ピークで
不要不急の自宅待機を
余儀なくされたこともあり、
思いもよらない静かに家で過ごす
久しぶりのお正月
だったのかもしれません。
しかし、今年の正月は、
未だ世界的な新型コロナ禍
ではあるものの、
日本ではある程度の封じ込めが
上手くいっていることもあってか、
初詣の参拝客で賑わう神社境内や、
福袋を抱えた正月セールに賑わう
百貨店などがテレビに
映し出されているのを観ると、
何事もない、いつもの正月に
戻ったようにすら感じるから
不思議です。
さて、
正月休みも終わった辺りから、
注連縄や鏡餅などの正月飾りを
下ろして片付けるタイミングが
気になるところです。
一般的には、
“松の内”と呼ばれる期間を過ぎると
正月飾りを片付け始めます。
以前にここで紹介しましたが、
“松の内”は、関東では1月7日、
関西は1月15日までとされ、
それに伴って、鏡餅を片付ける
“鏡開き”も、関東は1月11日、
関西はもともとの1月20日に行うのが
一般的です。
本来の正月行事は、新年の三が日や
“松の内”期間だけではありません。
前の年の暮れから
正月の準備は始まり、
それから数えて正月納めの日である
“二十日正月”までの約1カ月間が、
本来の正月なのです。
本来の、行事としての日本古来の“正月”は「二十日正月」で締めくくります。
行事としての“正月”は、
「正月事始め」からスタートします。
かつては旧暦12月13日、
現在は新暦の12月13日に、
家のスス払いをして1年の汚れを落とし
年神様を迎える準備をはじめる日です。
昔は、どの家にもあった
囲炉裏から出る一年間のススの汚れを
拭い去る“清めの儀式”を
スス払いと呼び、現在も、
寺院などの年末の大掃除に
その名前は残っています。
大掃除が終わると、
神聖な場所としての印である
注連縄や注連飾りをします。
注意したいのは、
12月29日は“二重苦”に通じ、
葬儀と同じ“一夜飾り”と
なってしまう大晦日の12月31日を避け、
末広がりの“八”が入っている
12月28日、
キリの良い12月30日に飾るのが
良いとされています。
そして、
旧い年と新しい年を繋ぐ“除夜の鐘”
正月3が日の初詣、
“松の内”“鏡開き”、
途中、1月7日の“七草”を経て、
1月15日に“小正月”を迎えます。
この日は旧暦で新年最初の
満月を祝った日で、
正月期間に忙しく働いた女性が
ひと息つけるため“女正月”
とも呼ばれています。
また、“小正月”には、
左義長(さぎちょう)、どんど焼きと
呼ばれる火祭りが全国各地で行われ、
注連縄や門松、書き初めなどを
火にくべて、餅を焼いて食べたり、
その灰を持ち帰って
家の周囲に撒くなど、
無病息災を願うお祭りも行われます。
こうしたさまざまな正月行事を
締めくくるのが「二十日正月」です。
西日本では“正月納めの日”、
東日本では“仕事始めの日”とされ、
正月の祝い納めの日に
位置付けられています。
「二十日正月」は別名が多く、
京阪神地方では、正月に食べた
ブリの骨や頭を酒粕や野菜、大豆と
一緒に煮て食べる「かす汁」が有名で
“骨正月”“頭正月”
とも呼ばれるほか、
“乞食正月(石川県)”
“棚探し(群馬県)”
“フセ正月(岐阜県)”など、
正月の料理や餅を食べ尽くす風習が
伝わっています。
とくに、「かす汁」には、
魚や野菜などの具材の栄養素に加え、
酒かすに含まれている
ビタミン類や炭水化物、
アミノ酸が豊富に含まれており、
身体を中から温める効果は
もちろんのこと、
正月の暴飲暴食で疲れた胃を
休めさせてくれる滋養強壮の効果も
期待できる、理にかなった料理なので
この時期にぜひ食べたいもの
のひとつに数えられるでしょう。
その家々に伝わるしきたり、
地域の習わしや慣習など、
ご紹介した内容と
異なる場合もあるので、
まずは良く調べてから。
過ぎてしまった正月行事はともかく
小正月や二十日正月に、
正しく祝い納めをしては
いかがでしょうか。