アワビと瓜二つのトコブシ。意外とアワビに近い旨さを味わえます。
あまり知られていませんが、
アワビの旬は、夏のこの時期。
暖かい海で育つアワビは、
海水温が20℃前後になる晩秋から
冬にかけて産卵期を迎えます。
産卵に備えて
身にたっぷりの栄養を蓄える
7月〜9月が旬とされているのです。
日本近海には4種類が生息しており、
黒アワビは浅い海域、
エゾアワビは主に北海道、
メガイアワビは西日本、
マダカアワビは千葉の房総半島より
南の海域に生息しています。
アワビの種類や大きさによって
価格は異なります。
2023年(令和5年)7月、
旬真っ只中のアワビ1kgの
東京市場卸値は
約9500円前後で取引され、
年間だと1kg7000〜8000円が
ここ近年の相場のようです。
ただし、
最高級の国産黒アワビだと、
大きさによっては1個30000円を
軽く超えるものも多く、
高級料亭などに直接卸されるので、
一般の流通ではほとんど
目にする機会はないようです。
一方、中国や韓国産の
小ぶりなアワビならば、
1000円前後で販売されていることも
少なくはありませんが、
味は淡白で独特のコクが
希薄なのは否めません。
アワビが高額で取引される理由は、
漁獲量の減少にあります。
1970年(昭和45年)頃の
6000tをピークに漁獲量は減り続け、
2000年頃は約2000t、
2020年(令和2年)には
約669tにまで落ち込んでいます。
これはアワビの成長が遅く、
一度減ると増えるのに時間がかかる
というのが大きな要因です。
収穫されるのは、
早いものでも5年を経過した
11cm前後あたりから。
その後は7年で13cm、
10年で15cm、12年で17cmくらいに
成長するといわれています。
アワビを取り扱っている漁協では、
小さなアワビは海にそのまま戻す、
一度に獲る数を制限するなど、
乱獲を防いで資源を枯渇させない
対策が講じられています。
とくに、房総や伊豆半島、
伊勢志摩、輪島などの
ブランドアワビの産地として
名高い地域では、かなり厳格な
ルールが設けられているようです。
貝は、大きく
二枚貝と巻き貝の
2種類に分類されます。
アワビは、
平べったい貝のように見えますが、
実は巻貝で、貝の口に当たる部分が
大きく広がって扁平な形に
変化していきます。
巻き貝の中で
平べったい貝殻を一枚貝といい、
アワビはその代表的な貝のひとつです。
この一枚貝に分類されるアワビに
よく似た貝に、トコブシがあります。
同じミミガイ科に属する別の貝で、
見た目はそっくりです。
見分けるポイントは、
貝殻にあるエラ呼吸や排泄、
卵や精子などを放出するために
使われる“孔(呼水口)”の数。
アワビは2〜6個で平均4個、
トコブシは6〜9個で平均8個なので
簡単に見分けられます。
またトコブシは大きく成長しても
12cm辺りまでなので、
15cmを超えるものは間違いなく
アワビと判断できます。
味に関しては、
甘みが強いとされるアワビですが、
個体差もあり判断は難しいところ。
それよりもアワビの身は
やや硬くコリコリ食感に対して
トコブシは柔らかいのが
特徴的な違いといえます。
最近はトコブシの価格も
上がってきていますが、
それでもアワビの半分以下の価格帯。
懐事情が寂しいようであれば、
トコブシで
アワビを堪能した気分になる…
そんな楽しみ方があってもいいのでは。
深い押し味の余韻とキレ味。「菊正宗 極上720mL」がおススメです。