旧暦、新暦ともに、「正月事始め」は12月13日。
今ではあまり聞かれなくなった
「正月事始め」は、年の瀬も
押し迫ったこの季節の
伝統行事のひとつとされています。
その語感からは、
年明け早々に行われる“初〇〇”と
イメージされがちですが、
実際に「事始め」を行うのは、
年の暮れです。
“事”である正月祭事に向けた
準備を“始める”という意味からきており、
“煤払い(すすはらい)”“松迎え”を
中心としたさまざまな習慣を指しています。
もともとは“事八日(ことようか)”
という古い風習に基づく
旧暦12月8日が「事始め」の日でした。
しかし、江戸時代になり、
12月20日が「正月事始め」の日と
改められ、この日には、江戸城の
大掃除が行われました。
その後、三代将軍・家光が
12月20日に亡くなったことで、
その命日を避ける意味で、
婚礼以外は吉相の“鬼宿日”である
12月13日に改定。
新暦になっても「正月事始め」は
12月13日のまま受け継がれ、
古いしきたりのある業界では
年納めの挨拶回りをする
大切な日とされます。
また、全国の多くの寺社仏閣でも、
この日に“煤払い”が行われています。
しかし、京都の
西本願寺、東本願寺などは、
その長い伝統を受け継ぐ意味から、
建立当時の12月20日の
“煤払い”伝統を頑なに守っています。
現代では煤が溜まることはめったに
ありませんが、昔は薪を使った
炊事をはじめ、ろうそく、行灯による
照明が一般的で、冬には囲炉裏で
暖をとる庶民の暮らしにおいて
煤が溜まるのは必然のこと。
神社仏閣などでも本堂で
毎日線香を焚き、ろうそくに
火を灯すので、天井や壁の隅は
煤で汚れていました。
この煤が埃と一緒になって
煤汚れとなってこびりつくため、
それを防ぐために、年末に掃除を
するのが“煤払い”です。
単に掃除をするだけでなく、
新年にお越しになる“年神様”を
お迎えするために、1年の穢れを落として
家の中を清める意味を持っています。
“煤払い”を怠ることへの戒めとして、
埃の塊を長年放置すると、
悪い精霊に取り憑かれて
付喪神(つくもがみ)の“煤わたり”に
なるという言い伝えが…
その背景にあるのは、すべてのものに
神が宿るという“八百万信仰(やおよ
ろずしんこう)”です。
すべてのものに感謝して、大切に扱う
日本独特の考え方といえます。
ちなみにジブリ作品に登場する
“まっくろくろすけ”は、この“煤わたり”を
コミカルにキャラクター化したものです。
また、“松迎え”は、“年神様”を
お迎えするための門松にする松、
おせち料理やお雑煮をつくるために
使う薪(たきぎ)を「正月事始め」の
日に山に刈りに行く習慣です。
今では、電気やガス、水道が各家庭に
敷かれ、手軽な便利さを手に入れた
反面、ものに対する感謝の気持ちや
丁寧に扱うことがどんどん
剥がれ落ちていったのかも知れません。
「正月事始め」の日以降、
新年に向けた準備が始まります。
今年こそ、いつもより早い
「正月事始め」の日をきっかけに家の
隅々まできれいに磨き上げて、
新しい年を迎えたいものです。