“穀雨”の時期に、“八十八夜”を迎えます。

農業にとって“穀雨”は大切な期間。春雨の潤いが、植物を一斉に芽吹かせます。

現在、二十四節気の
“穀雨”の時期に
差し掛かっています。

二十四節気は、
1年を春夏秋冬の4つに区切り、
さらに6つに分割した、
約15日間の季節を表す呼び方です。

最初の日だけを
指すことが多いのですが、
本来はそこから15日間を表します。

今年の“穀雨”は4月19日に始まり、
5月4日まで続く春季最後の節気で、
夏季最初の“立夏”への
移り変わりを告げます。

七十二候に当てはめると、
“穀雨”は、初候“葭始生
(あしはじめてしょうず/
水辺の葭が芽吹き始め、山や野の
植物が緑一色に輝き始める頃)”
次候“霜止出苗
(しもやんでなえいずる/
暖かくなって霜も降りなくなり、
苗がすくすくと育つ
田植え準備が始まる頃)”、
末候の“牡丹華(ぼたんはなさく/
大輪の花を咲かす牡丹が
開花し始める頃)”となります。

地味な“穀雨”ですが、
植物が一斉に芽吹いて
新しい生命を育む季節を
象徴しているのです。

“穀雨”の語源は、
“百穀春雨(ひゃっこくはるさめ)”
といわれ、気温の上昇とともに、
春の雨が多く降り、穀物を潤す
恵みの雨を指しています。

雨量が多い訳ではありませんが、
潤った田畑は種蒔きなどの
農作業に適しているため、
昔は農作業の目安となる
大切な日のひとつでした。

また、この期を境に
雨量が徐々に増して
梅雨の季節を迎えます。

“夏も近づく八十八夜”
で始まる茶摘み歌を
ご存知の方も多いと思います。

この歌詞にある
“八十八夜”は雑節のひとつで、
立春から数えて八十八夜目、
今年は5月1日です。

昔は、歌にもあるように
お茶の新芽が出揃い、
茶摘みが始まる時期とされていました。

この時期に摘まれたお茶は
“新茶”“一番茶”と呼ばれ、
カテキンをはじめ、
ビタミンなどの栄養価が高く、
旨味、香りが高いのが特徴です。

現在は品種改良による早摘み茶や
採れる産地などによって、
新茶の茶摘み時期は
必ずしも“八十八夜”に限りません。

しかし、
“新茶を飲むと長生きをする”
などの縁起の良い言い伝えが
残っていることもあり、
お茶の産地では
縁起イベントのひとつとして
“八十八夜”に茶摘みを
行うところが多くあります。

その光景が季節の風物詩として
ニュースで紹介されることも、
毎年の恒例行事なのです。

“八十八夜”は茶摘みだけでなく、
米づくりにおいても、
とても大切な時期です。

八十八を組み合わせると
“米”という漢字になります。

昔は“八十八夜”に種蒔きをすると、
秋に美味しいお米が収穫できる
大切な日とされていました。

農業にまつわる言葉に
“八十八夜の別れ霜”
という言い伝えがあり、
“八十八夜”の頃に降りる
霜のことを指しています。

農業にとって霜は大敵で、
気を配る戒めの言葉のひとつです。

“八十八夜”は、今年の場合、
旧暦の3月23日に当たり、
最後の遅霜への注意が
必要な日だったのです。

しかし、この日を境に
天候が安定していきます。

農作業を本格的に開始する
目安となっていました。

また、地味な“穀雨”という
歳時記は、日本酒造りにおいても、
とても大切な日なのです。