「小満」の恒例行事は夏服への衣替え。生活全般を夏仕様に見直しましょう。
暦の上では、5月20日から
二十四節気の
「小満(しょうまん)」の
期間にあたります。
しかし、メディアなどで取り立てて
伝えられるほど著名な
歳時記ではありません。
しかし、春から夏へと季節が変わる中、
あふれる太陽の光を受けて
草木が急速に成長して緑があふれる季節。
「小満」の頃は、
春先の肌寒さが和らぎ、
ぽかぽかとした暖かい日差しが心地よく、
1年でもっとも過ごしやすい
気候ともいえます。
「小満」の期間を
七十二候に置き換えた場合、
初候は“蚕起食桑
(かいこおきてくわをはむ)”で、
蚕が桑の葉を盛んに食べだす頃を
表現しています。
次侯は“紅花栄(べにばなさかう)”。
オレンジ色の紅花が咲き誇る頃です。
そして、末侯の
“麦秋至(むぎのときいたる)”。
冬に種を蒔いた麦が収穫期を迎えます。
秋に稲穂が黄金色に
染まる様子になぞらえて、
麦の穂が黄金色に色づくこの時期を
“麦秋(ばくしゅう)”、
小麦色の麦畑に吹く風を
“麦の秋風”と呼びます。
“秋”の漢字を使うのは
やや不思議な感じもしますが、
初夏の季語としてよく使われる
言葉のひとつです。
ちなみに、沖縄では
「小満」から次の
「芒種(ぼうしゅ)」辺りに
梅雨入りしていることが多いため、
ふたつの節気を重ねて
“小満芒種(すーまんぼーすー)”
と呼び、広く
“梅雨”の意味で使っているようです。
「小満」の期間に訪れる恒例行事が、
夏服への衣替えです。
衣替えは平安時代に中国から
伝わったもので宮中行事として
行われていました。
江戸時代になると気候に合わせて
年に4回衣替えをしたという記録が
残されています。
現在のように夏冬年2回が
定着したのは明治以降。
洋服が日本に伝わり、
暦が新暦になったことが
大きく関係しています。
ジメジメとした湿気の多い梅雨前の
晴れた日が多い時期なので、
衣服を入れ替える前に
洗濯やクリーニングに出して
汚れを落とすとともに、
しまう衣類には必ず防虫剤を
入れておくことが大切です。
また、この時期特有の数日天気が
ぐずつくことがあります。
本格的な梅雨入り前の“走り梅雨”と
呼ばれる気象現象で、梅雨のような
長雨にならないのが特徴です。
できれば衣替えと同時に、
夏を涼しく過ごすために部屋を
夏仕様にしつらえたいもの。
昔は夏になると襖(ふすま)を外して、
細い竹をはめ込んだ“簾戸(すど)”や
葦(あし)をはめ込んだ“葦戸”と
交換して日の光を遮断して
風の通りをよくしていました。
先人の知恵のひとつです。
現在はマンション暮らしが増える中、
網戸が常設され、エアコン普及率も
高いため、昔ながらの“簾戸”に
取り換えるなどの風情のある
夏の風物詩はあまり
見る機会が少なくなりました。
猛暑や酷暑に見舞われる8月に
エアコンは必須ですが、
7月半ば辺りまでは、ソファーや
調度品の置き位置を変えて
風の通り道を良くしたり、
ベランダに簾(すだれ)を吊るして
外からの照り返しを防ぐなど、
涼しさを感じる部屋に
模様替えをするのも、
梅雨が訪れる前の
このタイミングでしょう。
まずは過ごしやすい穏やかな気候の
「小満」を
楽しむことから始めましょうか。