日本酒の神様を奉る京都・松尾大社。

11月7日は、醸造祈願の「上卯祭」。

日本では、古来より
「八百万(やおよろず)の神」
という考え方が
生活の中に融け込んでいます。

これは自然界すべてに
神が宿っているという
古くからの教えが基本です。

この考え方は、
仏教やキリスト教などの特定の
宗教を信仰されている方にも、
日々の生活の中で意識する
ことなく受け継がれています。

つまり山の神や海の神、
台所の神、便所の神、
普段何気なく食べているお米にも
神様が宿っていると考えられて
いるということです。

最近では、やや希薄になった感も
ありますが、茶碗に米粒を残して
“ごちそうさま”をすると、母親
から「ごはん粒が残っている!
神様の罰が当たるよ」
と叱られたもの。

お正月の初詣をはじめ、プロ野球
球団が開幕前に優勝祈願を行うのも、
受験の時にお守りを持つことも、
玄関にイワシの頭を飾ることさえも、
宗教の敬虔な儀式というよりは、
漠然とした神様に対する参詣や
祈願が、生活習慣に組み込まれて
いるといったところでしょう。

もちろん、お酒にも神様がいます。

ローマ神話のバッカスは有名ですが、
日本にも酒神が存在しています。

京都最古の神社とされる「松尾大社(
まつのおたいしゃ)」に祀られている
「大山咋神(おおやまくいのかみ)」
が酒神として有名です。

松尾大社は、701年(大宝元年)に
文武天皇の勅命により秦氏(はたうじ)
が現在の場所に造営、松尾山の磐座
(いわくら)に祀られていた神霊を
社殿に移して祀ったとされます。

秦氏一族に酒造りに長けた技能者が
多かったことから、室町時代末期
には“酒造第一租神”として崇拝
されるようになりました。

ここ松尾大社では、
「上卯祭(じょううさい)」
「中酉祭(ちゅうゆうさい)」
というお酒にまつわる大きな
神事が毎年行われています。

醸造祈願祭である上卯祭は、
中世から近世にかけて、とくに
江戸時代に全国の醸造家が
「太々神楽(だいだいかぐら)」
を奉納し醸造安全の祈願をした
のが起源とされています。

全国各所の酒神を祀る神社でも
上卯祭を行っているところがあり
ますが、松尾大社では、とくに
蔵元関係者や多くの杜氏が参集する
大きな行事となっています。

毎年、11月上卯の日
(その月の最初の卯の日)
に行われます。

本殿で祝詞奏上などの神事が行われ、
その後、大蔵流茂山社中による
狂言・福の神を奉納することで
醸造安全を祈願し、守札として
大木札(だいもくさつ)
を授かります。

持ち帰ったお札を蔵に奉斎し、
その年の酒造りを開始するのが
通年の慣わしです。

年が明けて酒造りが終盤を迎える
4月中酉の日
(その月の二番目の酉の日)に
醸造完了を感謝する神事の
中酉祭では、山吹の花を携えた
巫女による神楽・倭琴の舞
(やまとごとのまい)が奉納され、
そのシーズンの酒造りを終える
ことになります。

 

松尾大社はパワースポットの宝庫。

松尾大社はパワースポットしても人気
の観光景勝地です。

本殿の参拝とともに、
ぜひ訪れたいものです。

本殿横に位置する「亀の井」は、
湧き水で、“大山咋神がこの水を
汲み置いていたら、一夜にして酒
となり、その酒を諸国の神々に
振る舞った”という伝説が
残されています。

境内から入山できる松尾山には
「霊亀の滝」というパワースポット。

清流が流れ落ちる滝には、
甲羅に文字が刻まれた多くの霊亀が
表れたとされます。

その霊亀を守るようなカタチの
天狗岩も鳥居のすぐ近くに鎮座。

松尾山の山頂近くには、
元々の磐座が残されており、
神秘的な凛とした空気感が漂い、
訪れた人の心を浄化するとか。

観光客で賑わう嵐山・渡月橋から、
南へ徒歩約1kmのところに
松尾大社は位置しています。

のどかな桂川沿いを散策しながら、
ぜひ訪れてみたいものです。