肌寒い季節に鮮やかに咲き誇るシクラメン。あの昭和の名曲が甦ります。

小椋佳作詞作曲の「シクラメンのかほり」は、布施明により大ヒットを記録。

“このまま冬は来ないんじゃないか”
と思えるほど続いた残暑でしたが、
11月になった途端、
一気に晩秋のような気候となりました。

春のチューリップ、
夏のひまわりなど、
季節を代表する花と同じように、
ちょうど寒さが増すこの時期辺りから、
シクラメンは見頃を迎え、
赤やピンク、白、紫などの
多彩な花の色が私たちの目を
楽しませてくれます。

シクラメンの特徴のひとつは、
1枚の葉に対して
1つの花が咲くことです。

また、葉はハート形で、
柔らかな曲線がどこか愛らしく、
冬の風景を彩るのに
ふさわしい花のひとつです。

原種のシクラメンは
カビのような臭いがする
との噂もありましたが、
品種改良によって
匂いはほとんどなく、時には
かすかにバラのような香りが
漂うものもあります。

そうしたほのかな香りに気づいたとき、
冬の空気が少しだけ
華やかになるような気がします。

シクラメンといえば、
昭和の名曲「シクラメンのかほり」を
思い出す方も多いでしょう。

布施明が歌って
レコード大賞に輝いた大ヒット曲で、
それほどメジャーでなかった
シクラメンの花を
より多くの人々に印象付けました。

この曲の作詞作曲を手がけたのは
シンガーソングライターの小椋佳で、
彼は顔を見せずに歌う
覆面歌手として活動していました。

昼間は銀行員、夜はアーティスト
という二足のわらじを履きながら、
自身の音楽活動を続けていたのです。

彼は、
テレビやレコード会社が全面に出る
商業的な音楽シーンとは一線を画し、
いわゆるオルタナティブな
活動スタイルをとっていました。

そのため、
一部の音楽愛好家には
強く支持されていたものの、
一般にはあまり
知られていなかったのです。

しかし、
「シクラメンのかほり」の
ヒットをきっかけに、
一気に世間にその名が
知れ渡ることになりました。

小椋佳の曲の魅力は、
日常にある些細な感情や
心の動きを繊細な歌詞で描き上げ、
その情緒をメロディーで
最大限に表現することで、
聴く人の心を打ちます。

彼の作品の中でも
「シクラメンのかほり」は
その代表作のひとつで、
恋愛の機微をシクラメンの
花の色になぞらえて歌ったこの曲は、
多くの人々の記憶に
深く刻まれているのです。

歌詞に登場する
シクラメンの花の色には、
かつての“君”の面影に寄せた
想いが込められています。

実際のシクラメンは、
よく嗅がないと
香りが感じられないほど
無臭に近いほのかな香り。

その上で、
二人で紡いだ歴史を
「かほり」と表現するその感性は、
聴く人の心に深い感動を与えます。

今ではこの曲に限らず、
YouTubeなどを通じて、
若い世代も昭和を彩った
さまざまな曲に触れる機会が増え、
昭和歌謡やフォーク、
ニューミュージックなどの人気が
じわじわと再燃しています。

ノスタルジックな曲調や
心のひだを歌詞に綴った
さまざまな楽曲は、
若い世代にあらためて新鮮に響き、
歴史は繰り返すかのように、
新しい感動として
受け入れられているようです。