新年を彩る日本の伝統「おせち料理」には、粋な洒落っ気がいっぱい。

日本に根付く縁起物や験担ぎの意味が込められた言葉遊びの文化。

日本の正月に欠かせない「おせち料理」は
平安時代から続く文化です。

元々“おせち”とは、
季節の節目を祝う
五節の節供(せちぐ)をさし、
神様への感謝と無病息災を祈る
儀式に供えられた料理が起源です。

やがて正月が特別視されるようになり、
「おせち」という言葉が正月料理
そのものを意味するようになりました。

「おせち料理」の重箱は、
縁起を担ぐ意味を込めて構成されています。

一番上の一の重には祝い肴や甘い口取り
(黒豆、紅白かまぼこ、栗きんとんなど)が
詰められ、新年の祝福を表します。

二の重には焼き物(鯛やエビ)を詰め、
豪華さを演出。

三の重は野菜中心の煮物で
家庭の結束や円満を願います。

四段目は“死”を連想するため
“与(よ)の重”と呼び、
酢の物や肉料理などを詰めます。

五段重の場合は、五の重は
“神様からの贈り物”を象徴する
空の重とされることが伝統的です。

しかし、現代では正月から営業する
飲食店やコンビニも増え、
「おせち料理」の伝統的な役割は
薄れつつあります。

その一方で、洋風、中華風、
さらにはスイーツを盛り込んだ
「おせち料理」が登場するなど、
多様化するライフスタイルにも対応。

この柔軟性が、「おせち料理」を
新年の象徴として存続させている
理由ともいえるでしょう。

さて、昔ながらの「おせち料理」を
彩る食材の多くには験担ぎの意味が
込められています。

たとえば、“黒豆”にはまめに働くとの
願いが込められているのをはじめ、
子孫繁栄を願って食べる“数の子”
イワシを肥料にしたところ
豊作になったことから五穀豊穣の
象徴とされる“田作り”など、
語呂合わせや謎かけ的な
言葉遊びが中心です。

こうした縁起物や験担ぎに言葉遊びや
謎かけの言葉が流行したのは
江戸時代のこと。

日本には俳句や川柳などの
短い言葉で表現する文化を背景に、
遊び心や機知を言葉に込める
風潮が広まりました。

縁起を担ぐことで繁栄を願う
日本文化に根付いています。

言葉の語呂合わせや洒落は、
その願いをわかりやすく伝え、
覚えやすくするために役立ちました。

江戸では洒落の効いた
軽妙なフレーズが好まれ、
それを粋に感じました。

「恐れ入谷の鬼子母神」や
「知らぬが仏、浅草観音」など、
言葉尻に気っ風の良い言葉を
つけるのが特徴です。

一方、商売の地、上方(大阪)では、
皮肉やユーモアを
交えた表現が流行しました。

「あの客は夏の蛤」。

“身腐って(見くさって)、
貝腐らん(買いくさらん)”のように、
含みのある一癖のある間接的な表現です。

「うどん屋の釜」は
“湯ばかり(言うばかりの口先だけ)”をさし
「無地の羽織」は“紋なし(一文なし)”
「妹の嫁入り」は“ねえ(姉)と
相談/値に相談/値段次第”というように
言葉巧みに使われました。

こうした言葉遊びの背景には、
当時の庶民の暮らしや価値観が
垣間見えます。

これらの表現は、ただ笑いを誘うだけでなく
言葉を通じて日本文化の奥深さを
感じさせてくれます。

「おせち料理」とは、新年を祝う象徴であり
祈りや願いを込めた料理ですが、
その中に洒落や遊び心が
散りばめられているのもまた魅力です。

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