18回目を数える蔵開きですが、そのルーツは江戸時代に遡ります。
日本酒ファン待望の季節が
やってきました。
2月8日(土)には、
18回目を迎える「蔵開き」が
菊正宗嘉宝蔵と
菊正宗酒造記念館で開催されます。
菊正宗は1659年
(万治2年)創業という
長い歴史を持ちますが、
蔵開き自体は意外にも18回目。
初めて行われたのは
2004年(平成16年)のことで、
来場者に酒造りの魅力や日本酒文化を
直接感じていただくことを
目的としてスタート。
菊正宗に限らず、
日本の酒蔵で「蔵開き」が
行われるようになったのは
比較的最近です。
酒造りにおいて
酒蔵は現在でも神聖な場所とされ、
かつては、より厳格に
一般人の立ち入りが
制限されていました。
また、微生物による
発酵を行う酒造りの現場に
外部からの雑菌が持ち込まれることを
防ぐ意味もあります。
現代では科学的根拠による
衛生管理技術も整い、
地域社会との交流を深める目的で
蔵開きを開催しています。
蔵開きの最大の目玉は、
今シーズンに寒造りで仕込んだ
「しぼりたて新酒」のお披露目です。
無料で振る舞われる新酒は
最初に搾られるお酒で、
その年の酒造りの成果を確認できる
重要な役割があります。
それ以上に、
「しぼりたて新酒」は、
そのフレッシュで
爽やかな味わいが最大の魅力です。
フルーティーな香りと
荒々しい力強さ、
生酛造りならではの
豊かな旨味と深いコクが
詰まっています。
この特別な新酒を味わえるのは、
蔵開きならではの醍醐味です。
毎年、新酒の登場を
楽しみにしている日本酒通も
少なくはありません。
恒例の地域限定で販売されている
「百黙」などの有料試飲、
生本まぐろのお寿司や粕汁、
湯豆腐の屋台コーナーも人気です。
ここで注目したいのは、
ステージで披露される
杜氏による酒造り唄。
代々、酒造りの現場で
歌われていたもので、
時計がなかった時代の名残です。
米を蒸す工程や麹を仕込む工程など、
歌う長さで正確な時間を
調整していました。
また、この歌は、
蔵人たちの士気を高め、
一体感を生み出す役割を
担ったといいます。
昔ながらのリズムを体感できる
年に一度の機会です。
実は、蔵開きの文化を紐解くと、
江戸時代に遡ります。
当時は、灘五郷や伏見などの
主要な酒造地で、
新酒を市場に送り出すための
重要なイベントとして
行われていました。
寒冷期に仕込まれた新酒が完成し、
品質が安定する春先に、
新酒を披露し感謝を示す場として
開かれていました。
その年、初めての
灘から樽廻船で届く新酒は、
江戸の居酒屋や料亭での話題となり、
新しい年の始まりを祝う
象徴的な出来事となっていたことが、
「東都歳時記」や
「本朝食鑑」などの
当時の文献に散見します。
現代の蔵開きは、
こうした歴史的背景を踏まえつつ、
さらに多くの人々が
日本酒文化を楽しむ場として
受け継がれているといえましょう。
冬の澄んだ空気の中で味わう
新酒の一杯は、心も身体も
じんわりと温めてくれるはずです。
この特別な体験を通じて、
日本酒の奥深さや魅力を改めて
感じてみてはいかがでしょうか。