調味料としての日本酒。

日本料理

“グルメ”という言葉がもたらした、食文化の拡大。

ひと昔前、“食”をテーマにした
漫画で、食通や美食家という
意味で“グルメ”という言葉が
取り上げられたあたりから
一気に広まり、いまでは
“B級グルメ”“格安グルメ”
“OL○○子のグルメレポート”
など、使われ始めた頃の
“高級感”や“素材にこだわった
究極の…”という意味合い
ではなく、広い意味での
「美味しい」を表現する言葉
へと変わっています。

もともと、このグルメは
フランス語の「gourmet」
に由来する言葉で、
“ワイン鑑定士の召使い”
から“ワインに精通した人”
に派生し、“食通”の意味
を持つようになりました。

いずれにしても、
日本での今の使われ方とは、
大きく異なります。

訪日観光の欧米人には、日本での
ニュアンスは伝わり辛そうです。

日本の食文化は時代とともに
変わって来ています。

“外食”が贅沢とされていた
時代から、普通に外食に
出かける時代になった
のは随分と昔のこと。

昨今では、デパ地下などで
総菜を買って帰って家で
食べる“中食(なかしょく)”、
コンビニや複合ショッピング施設
で食べる“イートイン”など、
消費増税の話題とともに
バラエティ豊かな食のスタイルが
テレビで紹介される
機会が増えています。

こうした中、ご家庭での料理シーン
が、やや熱を帯びています。

昔ながらの家でつくって食べる
“内食(うちしょく)”なのですが、
ここ数年のスマホやタブレット利用
の拡大に伴って、動画や画像で
節約や時短レシピ、調理テクニック
などを紹介するレシピサイトの
影響が大きいといえます。

料理レパートリーが広がり、
料理をつくる方たちの視線は、より
美味しくつくるための「調味料」
に注がれるようになりました。

調味料

調味料としての「酒」にもこだわりたいもの。

調味料へのこだわりも、手軽に
調達できるネットショッピング
のおかげでしょうか。

とくに有名シェフが使っていたり、
食通を売りにする著名な芸能人が
すすめると、立ち所に話題に上り、
売り切れになる商品も
少なくありません。

ブランド化された外国産の塩や岩塩、
黒砂糖や三温糖、和三盆、醤油、
味噌、エゴマオイル、エシレバター
…広い意味での調味料を
数えはじめると、枚挙にいとまは
ありません。

こうした中、調味料としての
「酒」も、やはり基本となる
こだわりの調味料のひとつに
位置づけられます。

調味料に使う酒に求められるのは
ブランドというより、その酒質。

お米を多く削り綺麗で端麗な飲み口
となっている大吟醸よりは、
アミノ酸や甘みなどの旨み成分
を多く含む純米酒の方が、
より好ましい選択といえそうです。

調味料としての酒の役割は、
肉や魚などの生臭さを消すとともに、
食材を柔らかくし味を
しみ込みやすくします。

さらにコクと旨みによって
風味を豊かにするだけでなく、
美味しさを料理に閉じ込める
働きがあります。

それでは、市販されている料理酒と
日本酒の違いをご存知でしょうか。

その大きな違いは食塩の有無です。

料理酒は、塩を添加して飲用できない
ようにすることで、酒税の対象外の
“醸造調味料”という位置づけに。

酒税がかからないため安価に購入
できるとともに、酒類販売免許を
持たない店舗での販売ができる
という経緯がありました。

一方、日本酒を調味料にする魅力は、
使う際のシンプルさにあります。

原材料が米と米麹、それ以外には
醸造用アルコールがあるかどうかだけ
(低価格な日本酒の中には、
酸味料、糖類、アミノ酸塩等を
添加したものもあります)。

食塩や他の添加物による味ヘの
影響がないというのが最大の魅力で、
一概には言えませんが、名だたる
和食の名店とされるお店では、
やはり日本酒を使っていることが
多いようです。

料理の基本とされる
「さ(砂糖)・し(塩)・す(酢)
・せ(せうゆ/醤油)・そ(味噌)」
は、調味料を入れる順番です。

お酒を入れるタイミングは、
“最初にお酒”。

とくに、食材をもみ込んだり、お酒に
つけ込むなどの下ごしらえに用いて、
その後の加熱調理の段階で
アルコールと一緒に嫌な臭いを
飛ばすことが目的です。

「冷凍されたエビやイカを解凍して
水分を拭き取り、日本酒でもみ込む」
「肉類に酒をふりかけ、日本酒で
もむ」「魚類を焼く前に、日本酒を
ひと掛け」…ひと手間加えることで、
香りや風味、照りだけでなく、
味が引き締まり、
旨みやコクが格段に変わります。

まだご経験がないのであれば、
ご主人の晩酌用の日本酒を
少し拝借してお試しくださいませ。