“春告魚”メバルが釣れ始めました。味と香りで感じる季節の便り。

江戸の俳句にも登場する“春告魚”メバルの魅力。

春の訪れとともにメバルの季節がやってきました。メバルは“春告魚”と呼ばれますが、これはニシンやサヨリ、カタクチイワシなどにも用いられ、俳句など文学的な場面で春を象徴する言葉としてよく使われる言葉です。漢字一文字では“鮴”と書きますが、これは本来、ヨシノボリやカジカなどのハゼ科の川魚に使われることが多い表記。メバルを漢字で書くとしたら、目が張り出した特徴をとらえた“目張”がもっとも一般的とされています。

そんなメバルは、冬から初春にかけて産卵期を迎える魚です。卵ではなく、稚魚を産む“卵胎生”という珍しい魚で、個体によっては1000尾以上の稚魚を産むこともあります。稚魚を放出する際、体力を大きく消耗するので、産卵後はやせ細ります。実は産卵前の寒い時期こそ脂がのって絶品の美味しさを楽しめる季節です。産卵後、やがて身の締まりは戻り、煮付けや唐揚げなど、ほくほくとした食感を楽しむ料理として重宝します。しかし、メバルはとても繊細な白身魚で、身がやわらかく鮮度が落ちやすいため、大量流通には向きません。都市部のスーパーではほとんど見かけず、漁港近くや地方の鮮魚店でようやく出会える程度です。私たちが“春の味覚”としてメバルに出会う機会は少ないかもしれません。

それでも、料亭や和食店では“春の煮付け”として大切に扱われ、春を象徴する食材のひとつとして根強い人気があります。

“春告魚”と呼ばれるのは、メバルが昔から春一番に沿岸に現れる魚として親しまれてきたからです。漁師や釣り人にとって、メバルは春の訪れを知らせる魚として、特別な存在なのです。冬の海は荒れやすく、水温も低くなるため、メバルは深場に移動し、釣るにはある程度のテクニックが必要。しかし春になり、水温が上がるとメバルは浅場へと移動。初心者でも簡単に釣果を期待できるようになっていくのです。

食べ方の王道は、やはり煮付け。骨の旨味が甘辛い煮汁に染み込み、まさに絶品の一皿へと仕上がります。塩をふって香ばしく焼き上げた塩焼きや、鮮度の良いものを使った刺身、日本酒と塩でじっくり蒸し上げる酒蒸し、さらにはトマトとオリーブオイルで仕上げるアクアパッツァなど、和洋どちらの料理でも楽しめる万能食材ともいえるでしょう。甘辛く煮付けたメバルには、キレのある辛口本醸造。後味を爽やかに整えてくれます。

塩焼きには燗酒がぴったりで、焼き魚の香ばしさと酒のまろやかな香りがじっくりと沁みわたります。刺身には米の旨味を感じられる純米酒が最適で、とくに昆布締めと合わせれば、旨味の相乗効果が味わえます。

酒母米、麹米に酒造好適米を使用し、キクマサ酵母で醸しだされるキリッとした味と芳醇な香りの「灘の生一本」。

春の訪れを、言葉と味覚で伝えてくれる魚がメバルです。店頭でその姿を見つけたら、それはきっと春が来た貴重な体験。季節の節目を、メバルと一緒に感じてみてください。

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