「菊正宗 2020年冬季限定 可惜夜(あたらよ)」発売

360本の数量限定発売商品
「2020年冬季限定 可惜夜」を、
今年も冬季限定分として
11月12日に発売

商品名の「可惜夜(あたらよ)」とは
明けるのが惜しいほど素晴らしい夜
という意味です。

商品ラベルには、大正3年に
大阪画壇の美人画の名手とも呼ばれる
北野恒富により描かれた
菊正宗所蔵のポスター原画を
デザインに取り入れ、
美人画の女性に心奪われるような
魅力的な商品にという
思いを込めました。

上品な口当たりで、
味わいはすっきりとしながらも
ほのかにフルーティー。

冷やして飲むことを
お勧めいたします。

一口飲み、
味わいの余韻に浸りながら
少しずつ…。

後を引く美味しさに心を奪われる。

心のままに、
無垢なる味わいを妨げぬよう、
造りの詳細は非公開と致しました。

菊正宗が361年培ってきた
技術を礎とし、
研鑽を重ねた最先端が、
「2020年冬季限定 可惜夜」
です。

伝統的な醸造技術を
受け継ぎながらも、
そこに甘んじることなく
旨い酒づくりに精進する
心意気を詰め込んだ商品

 

柿の甘さは、渋柿にあり。ブランド品種の多さが、その需要を物語る。

柿の人気ブランドは甘柿の“富有”ですが、それに続くのは渋柿ブランド柿。

柿の年間の国内収穫量は
約22万5000トン
(出荷量約18万6000トン)、
輸入は
ニュージーランドの約7.5トンと
アメリカの約6.9トンだけなので、
ほぼ100%に近い国内自給率を誇る
果物のひとつに挙げられます。

ちなみに、主要生産国トップは中国で
、年間生産量約393万トン、
世界全体に占める年間生産量の割合は
約73%にものぼり、
日本とは桁違いの生産量に
驚きを隠せません。

柿の食べ頃ですが、一般的に、
柿の旬は10月から11月頃がピーク。

早生種なら9月半ば、
晩生品種は12月末頃まで
店頭に並びます。

人気品種ともなると、
収穫後に冷蔵保存され、
翌年2月頃まで
店頭に並ぶこともあるようです。

ただし、これは甘柿の場合で、
渋柿はそれより1ヵ月ほど前の
タイミングとなります。

柿は、甘柿と渋柿に大きく
分かれますが、詳しくは、
“完全甘柿”“完全渋柿”のほか、
種子が多くできると甘くなる
“不完全甘柿”、
種子の周りだけ甘く全体的に渋い
“不完全甘柿”と大きく4つに分類。

その4つの分類がさらに、
種の有無や早生晩生などの
特徴を持つブランド品種へと
細分化されます。

もっとも多くつくられているのが
“富有(ふゆう/甘柿)”で
柿全体の約25%を占めている
有名なブランド柿で
西日本を中心に栽培されています。

2位が“平核無(ひらたねなし/渋柿)”
で約17%。

“庄内柿”“紀の川柿”“おけさ柿”などと
地方によって呼び名が変わり、
炭酸ガスなどによって
柿渋を抜いて出荷されます。

3位は“刀根早生(とねわせ/渋柿)”で
約15%。

4位が甲州百目
(こうしゅうひゃくめ/不完全渋柿)
で生産量はグンと下がって約6%。

“蜂屋柿”“富士柿”“代白柿”“江戸柿”など、

その土地土地で名前が付けられています。

釣り鐘状のカタチをしているのが特徴です。

5位は“松本早生富有
(まつもとわせふゆう/甘柿)”。

名前の通り“富有”よりも
1〜2週間ほど成熟の早い甘柿。

渋みが非常に強いため
ほとんどが干し柿にされる
“市田(いちだ/渋柿)”、
“富有”と甘柿の双璧を成す
“早生系次郎(わせけいじろう/甘柿)”
“次郎(じろう/甘柿)”と続きます。

“富有はあごで食べ、
次郎は歯で食べ、
たねなしは舌で食べる”
といわれることがあります。

これは、“富有柿”は果肉が軟らかく、
“次郎柿”はやや硬めの果肉、
“平核無”はねっとりとした食感
をしている特徴を表した表現。

また、よく耳にする“あんぽ柿”は、
“蜂屋柿”“平核無”などの渋柿を
硫黄で燻蒸して乾燥させる
独特の方法でつくられた
福島県発祥の“干し柿”です。

 

渋抜きをした渋柿の糖度は、驚きの50度前後で甘柿の糖度を軽くしのぐ。

生産量トップこそ
甘柿の“富有”ですが、生つまり、
渋柿の需要が高いようです。

多くの渋柿は、
渋柿のエグい渋みを取ってから
の出荷となり、手間がかかりますが、
それを上回る美味さが
渋柿の魅力ということになります。

渋柿の渋みは、
どの柿にも含まれている
柿タンニンによるもので、
含まれる柿タンニンの量は
甘柿とあまり変わりません。

甘柿にも
柿タンニンは含まれますが、
熟成によって柿タンニンが
水に溶けなくなり、
渋みを感じることはありません。

一方、渋柿は熟成をしても
柿タンニンが水に溶け出し、
渋みが残ります。

渋柿は、その品種に適した方法で
渋抜きを行うことによって、
甘くなります。

代表的なものは乾燥させることで
渋を抜く“干し柿”が有名。

このほか、アルコールに漬けたり、
湯に浸けたり、
炭酸ガスで脱渋を行う方法、
なかにはりんごと
一緒の容器に入れて1週間ほど置く
渋抜き方法もあります。

また、意外な話ですが、
渋柿を天日干しにした
“干し柿”の糖度は50度前後
というから驚きです。

甘柿の糖度は16度前後で、
渋柿の渋みに
隠れている糖度は20度前後と、
もともとの糖度は渋柿の方が高く、
これを干すことで
水分と一緒に渋みが抜けて
糖度が50度にもなるのです。

甘柿を干しても
渋柿ほどの糖度は得られない
というから不思議です。

素人考えで、
渋柿より甘柿の方が甘い
と思っていましたが、
事実は異なったようです。

そして何より、
科学的な根拠もないなかで、
渋柿の渋みに果敢に挑んで
その渋さを克服し、
その先にある甘味を発見した
先人たちの努力は
計り知れない偉業といえます。

私たちの文化は、
こうした名もない方々の
努力の積み重ねで成り立っている
ような気がします。

次も柿に関するコラムを紹介します。

新型コロナに有効な検証結果を得た「柿渋」。期待は高まります。

「柿渋タンニン」が、新型コロナウイルス研究への新しい扉を開く。

“柿渋が新型コロナに有効”
というニュースが、
全国に流れたのは
9月半ばのことでした。

発表したのは
奈良県立医科大学の
研究グループで、
“新型コロナウイルスと唾液”と
“新型コロナウイルスと
唾液に柿渋を加えたもの”の
比較実験を行った結果、
柿から抽出した
高純度の柿タンニンによって
新型コロナウイルスを
1万分の1に不活性化(無害化)
できる検証結果が
得られたというものです。

奈良県立医科大学では、
長年にわたって
柿渋の主成分である
ポリフェノール“柿タンニン”の
抗菌作用、抗炎症作用についての
研究を行っており、
インフルエンザやノロウイルス
に対して抗ウイルス効果がある
という実証結果を得ていました。

そして、新型コロナウイルス
に対しても効果が得られる
との仮説をたて、
まさにそれが今回、
ハッキリと実証された
といえるでしょう。

ただし、今回の結果は、
あくまで第一段階の基礎研究で、
人を対象とした臨床研究とは
性質が異なります。

次のステップとして
飴やラムネ等に混ぜるなどして、
適切な柿渋濃度や
口内での摂取時間を考慮した
人対象の臨床研究が必要とのこと。

また、ただ単に
柿渋が入っていれば良い、
柿を食べれば効果が得られるという
新型コロナウイルスに対する
特効薬的なもの
という訳ではありません。

まだ研究段階とはいえ、柿タンニンが
新型コロナウイルスに対抗する
新しい手がかりとなるのは、
まぎれもない事実。

感染予防という観点で、
柿渋と他の技術との
複合的な組み合わせなどによる、
新たな発見に期待したいものです。

 

「柿渋」は、昔から日本酒醸造に欠かせない素材。

柿は、秋から冬にかけて
旬を迎えます。

新鮮な果物として、
もしくは干し柿にして食べる
というのが、一般的な認識です。

それゆえ、
“新型コロナウイルスに効果がある”
といわれても、
いまいちピンと来ないのは
不思議なことではありません。

“果物として食べるのなら
甘い柿の品種だけで良い。
わざわざ渋柿を収穫する
意味はないのでは?”というのも、
私たちが抱く疑問のひとつ。

そんな考えを一気に払拭したのが、
今回の
“新型コロナウイルスに柿渋が効く”
という発表で、
柿に対する印象を大きく変えた
キッカケといえます。

実は、柿渋の利用は古く、
縄文や弥生時代の遺跡として
発掘されているほど、
時代をさかのぼります。

また平安時代には
即身仏の腐敗を防ぐために塗布したり
、漆器の下塗りに使ったり、
下級武士の衣装の染色などに
使われていたなどという記録が
当時の文献に残存。

それ以降も鎌倉、室町、安土桃山、
江戸と、時を重ねるごとに
柿渋の用途は大きく広がり、
とくに江戸時代には
柿渋を取り扱う店が軒を並べ、
りっぱな流通商品として、
その存在を確立していました。

ところが、近代日本の幕開け
となった明治を迎え、
欧米からの科学的な学術研究と一緒に
化学合成品などが一気に流入。

日本でも独自の研究が
盛んに行われるようになり、
新しい技術や素材の開発によって、
柿渋の需要が減っています。

残念ながら現在、
柿渋を取り扱う業者は
数えるほどしか残っていません。

さて、歴史の中で、社会文化や生活を
陰ながら支えてきた柿渋は、
日本酒醸造においても、
かなり重要な役割を担っていました。

江戸時代の日本酒の醸造工程で、
柿渋で染めた木綿や麻の袋が
醪(もろみ)を搾る際に
使用されていました。

また、毎年、杜氏の仕事始めは
酒袋を柿渋で染めることから
スタートし、この作業を
繰り返し行っていたため、
酒袋は茶褐色の風合いが
増して行ったといいます。

この濃い茶褐色になった酒袋は、
現在、菊正宗酒造記念館の
各コーナー展示のタイトル表示として
使われているので、
ご来館の機会があれば、
一度ご覧ください。

現在の酒造りは機械化が進み、
酒袋を使う機会はありませんが、
自然由来の清澄剤(せいちょうざい)
として日本酒の澱(おり)を
取り除く際に使われています。

計り知れない柿や柿渋の効能は、
私たちの文化発展に
多大な貢献を与えてくれたようです。

次回コラムでは、
引き続き万能果実である柿について、
詳しくひも解いていきます。

どこでも見かける街路樹「イチョウ」の、希有な秘密。

もっとも多い街路樹「イチョウ」が、絶滅危惧種という不思議。

秋の足音とともに、
ケヤキ、イチョウ、ポプラなどの
街路樹が黄や赤に
色づきはじめました。

必ずではありませんが、
街路樹として植栽されている
その多くが、落葉樹なのです。

秋から冬にかけての
落ち葉掃除の手間などを考えると、
常緑樹の方が好ましいと思いますが、
落葉樹を植栽するのには、
それなりの理由があるようです。

夏は、青々と生い茂った葉が
木陰をつくり、
夏の直射日光を遮るとともに、
樹木が持つ余分な水分を
葉の裏側の気孔から
蒸散する働きにより、
涼感を肌に感じることができるのは、
街路樹全般にいえることです。

冬になると、落葉樹の葉は枯れ落ち、
冬のやわらかい陽射しを遮ることなく
届けてくれます。

そして何より季節感を感じる
景観演出が、
落葉樹の大きな魅力です。

春を感じさせる新緑は
夏の暑さでより濃い緑へと変わり、
秋の訪れとともに黄赤に色づき落葉、
そして冬の寒空へと伸びる枝は、
春の訪れを告げるかのように
芽吹きはじめる…
繰り返し四季折々の景色を
風情豊かに感じさせてくれます。

街路樹や公園に植栽されている
樹木の植栽数ランキングは、
イチョウが断トツ1位。

続いて桜が2位、
ケヤキが3位、
ハナミズキが4位、
トウカエデが5位
と続きます。

日本の風景にもっとも
融け込んでいるイチョウですが、
意外なことに
IUCN(国際自然保護連合)の
レッドリストに
“野生絶滅危惧種”として
登録されています。

これは、
世界中のすべてのイチョウが、
人の手を介した栽培種で、
野生種は中国の山脈で確認された
わずかな数のみということです。

恐竜が闊歩した
約1億5000万年前のジュラ紀は、
地球上に多種の植物が
繁茂した時期で、
その時代の植物でイチョウだけが
氷河期を生き延びて現存し、
それ以外はすべて化石で発見。

そのため、ダーウィンは、
イチョウを“生きた化石”
と呼んでいました。

一般的に私たちが知っている
植物の概念は、ひとつの株に
雄と雌の機能を併せ持つ
“雌雄同株”で、
植物全体の約70%を
占めています。

一方、イチョウは、
雄の木、雌の木が明確に別れた
“雌雄異株”という
珍しい特徴があり、
同じ“性”の特徴を持つものに
アオキ、キウイ、ヤマモモ
などがあります。

驚くことに、植物の研究では
原始種のイチョウの特徴である
“雌雄異株”が、
これから植物が進む
“進化の方向”
とされているということ。

植物の進化は複雑で、
なんとも不思議なお話です。

 

秋の味覚「銀杏」を拾いに、街に繰り出そう。

冬間近の晩秋になると
イチョウの木の下には
白い粉を吹いたオレンジ色の実が、
落ち葉と一緒に道に散乱します。

この実の中にある種が「銀杏」です。

ただ、この「銀杏」を包みこむ果肉、
ご存知の方も多いと思いますが、
強烈な異臭を放つため、
住民から苦情も多いようで、
植栽管理者による
植え替えも少なくないとのこと。

ならば、実がなる雌株を植えなければ
いいのではと思いがちですが、
これまではある程度成長しないと
雄雌の区別がつかないという
難点がありました
(現在、遺伝子解析によって、
早期の雌雄判定は可能です)。

せっかくの秋の食材「銀杏」が
気軽に手に入るこの時期、
秋の行楽のひとつとして
“銀杏拾い”はいかがですか。

「銀杏」のまわりの
果肉の悪臭もさることながら、
素手で触れるとかぶれや炎症を
起こすこともあるので、
注意が必要。

“銀杏拾い”に、
ゴム手袋は必須アイテムです。

さて、拾ってきた実は、臭いがキツく
家の中での作業には不向きなので、
屋外で水に浸します。

軟らかい実は簡単にほぐれますが、
硬い実はしばらく水に浸けた後、
袋などにまとめて
軽く踏み潰すのが簡単です。

この作業のポイントは、
「銀杏」の周りに着いた果肉を
丁寧に取り除き、
何度も水洗いをして、
臭いを流すこと。

キレイになった「銀杏」は
数日天日干しをして、
カビがこないように
風通しの良いところで
保存してください。

大量に拾った時は、秋のお便りとして
ご近所に配られてはいかがでしょうか。

「銀杏」を手軽に食べるなら、
紙袋に入れて塩を振り掛け、
シャカシャカ振って、
電子レンジで2〜3分加熱するだけで、
美味しくいただけます。

「銀杏」は、ビタミンCをはじめ、
カリウム、マグネシウム、鉄、
ミネラルなどを多く含む
栄養価の高い食材ですが、
メチルビリドキシンという
中毒物質が含まれているため、
食べ過ぎには注意を。

中毒症状は、体調や体質による
個体差が大きいので
一概にはいえませんが、
大人が食べる目安は、
1日約30個前後。

とくに子どもに与える場合の目安は
年の数より少なめに。


栗と日本酒の共通点…ご存知ですか。

秋を代表する、旬の味覚「栗」。

今年の8月、
は1946年(昭和21年)の
統計開始以降、
歴史的な猛暑を記録したばかりか、
降水量ももっとも少雨を記録。

さらに9月を迎えても
厳しい残暑が続き、
10月になってようやく
暑さが癒えて涼しくなり、
秋らしい気配を
感じるようになってきました。

スーパーの店頭には、
旬を迎えた山の幸、海の幸が
所狭しと並び、ついつい
“食欲の秋”を意識せざるを得ません。

そんな秋の味覚の
代表格のひとつに栗があります。

店頭では、ほかの野菜と同じように
“○○産”などと産地表示されて
いますが、大きな分類としては、
原産国によって4つに区分できます。

一般的に店頭に並んでいるものの
多くは“日本栗”で、
“和栗”とも呼ばれます。

日本原産の野生の芝栗を
品種改良したもので、
実が大きく風味が良好。

上品な甘さで、和食の味付けに
合った味わいといえます。

また“日本栗”の表層の鬼皮は硬く、
さらに中の実は剥きにくい
渋皮に包まれています。

次に天津甘栗で有名な“中国栗”。

甘くて渋皮も剥きやすいのですが、
実が小さく、栗の害虫クリタマバチの
被害を受けやすく、
日本では栽培されていません。

続いて、マロングラッセなどに
使われている“ヨーロッパ栗”。

小振りで渋皮が剥きやすいのが特徴。

この品種も害虫被害に
見舞われやすいため
日本での栽培はありません。

そして最後に “アメリカ栗”。

この品種は20世紀初頭に発生した
栗胴枯れ病の被害でほぼ壊滅。

現在、アメリカの一部の地域で
栽培されていますが、病害に弱く、
日本での栽培はできません。

また、スーパーの店頭で見かける
韓国産の多くは、
栗剥き作業の拠点を韓国に移す際に
“日本栗”の苗木が韓国に移植され、
それが広まったもの。

現在、韓国産 “日本栗”の出荷量は、
日本の約3倍ともいわれています。

“日本栗”の歴史はかなり古く、
約5000年前の縄文時代の遺跡
“三内丸山遺跡(青森)”から出土。

平安初期には
京都丹波地方で栽培されはじめ、
やがて栽培地域は全国へと
拡大していきました。

安定栽培されていた“日本栗”ですが、
1941年(昭和16年)前後に
中国から持ち込まれた
栗の害虫クリタマバチによる被害で
大きな打撃を受けることに。

それを元に、クリタマバチに対する
抵抗性の高い品種改良が進み、
いくつかの交配品種が生まれました。

有名な品種は“銀寄(ぎんよせ)”で、
有名ブランド「丹波栗」がその代表格。

兵庫県・大阪府を中心に
栽培されており、
ちょうど10月が旬です。

このほか、もっとも広範囲で
栽培されている“筑波”、
夏の終わり頃から
出回りはじめる早生種“丹沢”、
逆にこれから
出回りはじめる晩生種“石鎚”、
“日本栗”と“中国栗”の
良い特長を併せ持つ
一代交配種“利平”…
そして最近は、
渋皮が簡単に剥けると話題の
“ぽろたん”など、
数多くの交配品種が生まれています。

さて、タイトルの
“栗と日本酒の共通点”ですが、
それは“香り”です。

“日本酒って、栗の香りがしたっけ?”
とお思いでしょうが、
“栗の香”は日本酒造りに
欠かせない香りなのです。

 

日本酒の醸造工程に欠かせない「栗香」。

一般的に、
日本酒のラベルの原材料名には、
純米酒には“米”“米麹”と表記され、
吟醸酒や普通酒は、
これに“醸造用アルコール”が
追記されているのみ。

つまり、山田錦などに代表される
酒米(酒造好適米)、
厳格に管理されている米麹、
さらには表記規定のない
酒造りに適した“水”によって、
旨い日本酒は造られています。

一般的な食品に使われる
着色料、甘味料、香料、保存料などは、
一切使用されていません。

だからこそ、
厳格な温度管理や醗酵時間管理が
とても重要です。

もともと、日本酒の原材料となる米には
糖分が含まれていないため、
麹の酵素によって
“糖化
(米のでんぷん質をブドウ糖に変える)”し、
酵母によって
“アルコール発酵
(ブドウ糖をアルコールに変える)”を
行っています。

この2つの反応を微生物の力を借りて、
同時に同じタンク内で行う
“並行複醗酵”という
世界でも類を見ない
高度で複雑な醸造技術こそが
日本酒の真骨頂といえます。

こうした複雑な工程の中で、
蒸米後に、種麹を蒸米に振りかけ
麹菌を繁殖させる米麹をつくる
“製麹(せいぎく)”の際の工程の
進み具合を判断する基準が、
温度であり、“香り”です。

まず、製麹の最初の“蒸米香”が消え、
種麹の“もやし香”に包まれます。

そして、温度管理を行いながら、
1日半ほどかけて揉み込んだり、
ほぐす中、やがて香りはじめるのが
良い麹の証ともいえる「栗香」です。

焼き栗のような香りで、
この香りと麹の状態を判断基準に、
蒸米、米麹、水を加えて
酵母を培養する
次の“酒母づくり”の工程へと
進みます。

「栗香」は日本酒造りに
欠かすことのできない
大切な香りなんです。

急激に訪れた肌寒い秋。

グッと冷え込んだ夜は、
“栗ごぼうの味噌煮”
“鶏肉と栗の煮込み”
“栗の豚肉巻き”など、
旬の味覚を肴に熱燗を一杯。

締めに“キノコたっぷり栗ご飯”で、
秋を味わってみるのは
いかがでしょうか。